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性教育は日常会話から! 幼少期から思春期まで使える「命育」性教育本の活用方法を聞いた

ByAdmin

Sep 16, 2021

「子どもに性教育が必要」そういった社会の意識は高まりつつあり、メディアで性教育について取り上げられるようになったり、性教育の本も選択肢が増えた。

 とはいえ、実際我が子に教えるとなると、ハードルが高く感じたり、「赤ちゃんはどうやって生まれるの?」と聞かれ、上手く答えられなかった経験がある人も少なくないだろう。

 性教育に特化した保護者向けサイト「命育(めいいく)」の代表を務める宮原由紀さんも「かつては性教育の必要性を感じつつも、どこから情報を得たらいいか・どう伝えたらいいかわかりませんでした」と話す。

 今年7月、宮原さんは『子どもと性の話、はじめませんか? からだ・性・防犯・ネットリテラシーの「伝え方」』(CCCメディアハウス)を上梓。インターネット上での発信を行っている中で改めて本を執筆した経緯や、書籍のこだわりポイントについて伺った。

宮原由紀(みやはら・ゆき)
性教育サイト「命育」代表。大学卒業後、リクルート、アマゾンなどメディアやインターネット企業を約15年経験し、現職。子どもへの性教育に課題意識を持つクリエイターたちと、医師専門家協力のもと、命育を立ち上げる。サイト運営のほか、園や学校、PTA、地域などと連携して、多方面から家庭での性教育をサポートする活動に取り組む。3児の母。

●命育:https://meiiku.com/

日常会話を通じて子どもに性の知識を届ける

『子どもと性の話、はじめませんか? からだ・性・防犯・ネットリテラシーの「伝え方」』より
 『子どもと性の話、はじめませんか? からだ・性・防犯・ネットリテラシーの「伝え方」』では、大人も性教育を学ぶことをプッシュしている。その理由について宮原さんは次のように答えた。

 子どもとの接し方やしつけ、離乳食やトイレトレーニングなど、子育てに関する知識を詳しく得る機会はあるのに、子どもにどう性について教えればいいのか学ぶ機会がないことに疑問を持っていました。自分が子どもの頃を振り返っても、教わる機会も大人とそういう話をする機会もありません。そんな中で、あるとき子どもの性の問題に直面することがあり、知識も伝え方もわからず、非常に慌ててしまったんです。

 また、命育を運営するなかで『性的同意』など、私たちが若い頃には知らなかった言葉を知り、「子どものためと思って命育を見ていたのに、性の知識を知ったことで、自分自身が救われた」といった声をいただくこともありました。

 今の大人は性教育を受ける機会がなかった人がほとんどです。そのため、大人も知らない知識がたくさんあるので、「子どもに伝える前に、大人自身に知ってほしい」という思いを込めています。(宮原さん)

 「命育」では、体の仕組み、生理や射精、妊娠や出産、性感染症など基本的な知識から、ネットリテラシーやジェンダー、コミュニケーションなど性にまつわるトピックを幅広く扱っている。サイト上でも十分な情報を得られるが、改めて書籍を作った背景について聞いた。

 ネットの特性上、興味のある人や実際に困った人は命育にアクセスしてくれますが、漠然とした興味や悩みにとどまる人は、検索をしないため、命育に辿り着かないと思っています。

 ここ1、2年で、性教育の絵本や本が多数出版されてきたことで、「性教育=まずは本が情報源になる」という認識が浸透してきたと感じています。そのような中で、なんとなく性教育に興味がある人にも、命育でお届けしている「日常会話からはじめられる性教育」を知っていただければと思い、書籍を作ることにしました。(宮原さん)

 本書のイラストは命育メンバーの伊賀弓さんが担当。監修は産婦人科医の高橋幸子先生が行い、ほかテーマによってそれぞれ専門家の協力を得ている。海外NGOの「PPFA(プランド・ぺアレンフッド)」の性教育を踏まえており、国際基準の包括的な内容だ。

 また、本書では日常会話でできる性教育を多数ピックアップしている。学校で行われる授業型の性教育も大事ではあるものの、自分ごととして受け止められない子どももいるため、家庭の日常会話の中に取り入れることで、子どもは「自分ごと」として捉えられるとのこと。

 学校では小学校4年生時に初潮や精通の話をしますが、そのときは自分ごととして捉えることができず、いざそのときがくるとパニックになったり怖くなってしまったり、生理を親に相談できなかったという子もいます。

 家庭の中で日常的に性の話をしていただくことで、いざとなったときに子どもから助けを求めたり、相談できたりという関係に繋がるのではないでしょうか。一回話すだけではなかなか伝わらないこともあるので、日常の中で話すチャンスを見つけたときに、繰り返し伝えることをオススメしています。

 また、学校と家庭では性教育を行うメリットが異なります。学校では、親の興味関心や家庭環境に関わらず多くの子どもに性の知識を伝えることができますが、限られた時間の中で、学校だけで伝えきるのは難しい。一方、家庭ではお子さん個人の関心や反応に合わせて伝えられます。小学校低学年の頃まででしたら、恥ずかしさなく自然な形で伝えやすいですし、幼児期でも伝えられることはあります。家庭だからこそできる性教育があるんです。

 また、今年からスタートした文部科学省の施策である「生命(いのち)の安全教育」は、国が動いた点では前進だと感じていますが、子どもが性暴力の加害者、被害者、傍観者にならないための知識に焦点が置かれています。学習指導要領からも、学校で教えられる性の知識には限りがあるので、家庭での性教育で補うことが必要だという思いです。(宮原さん)

保護者のプライバシー・プライベートゾーンも尊重してほしい

『子どもと性の話、はじめませんか? からだ・性・防犯・ネットリテラシーの「伝え方」』より
 性教育と言えば出産・妊娠・生理の話というイメージを持っている人もいるだろうが、実は幅広い。『子どもと性の話、はじめませんか? からだ・性・防犯・ネットリテラシーの「伝え方」』では、以下のテーマを取り扱っている。

・男女の身体
・プライベートゾーン
・防犯
・幼児自慰
・ジェンダー(男の子らしさ、女の子らしさ)
・性の多様性
・セルフプレジャー(マスターベーション)
・性的同意
・性犯罪
・ネットリテラシー(自画撮り、アダルトサイトなど)
・妊娠・出産
・性感染症
・避妊
・障害のある子の性

 さらに、幼児期・児童期・思春期とそれぞれの年齢に応じて章が分かれているため、自分の子どもに今、何を伝えるべきかが明確だ。また、命育には障害児の保護者からの問い合わせも多くあることから、本書では「障害のある子どもの困った!」という項目を設けている。

 本書では子どもの対象年齢を絞らず、幼児から思春期のお子さんを持つ方に読んでいただけるよう意識しました。300ページ以上におよぶ読み応えのある本で、内容は網羅できていると思います。一方で、最初から全部読むには大変だなと思う人は、自分のお子さんの時期の章や、目次を見て興味のある項目から読み始めていただければと思います。

 また、子育てはお母さんが中心的に担っているご家庭が多いですが、命育にはお父さんから「父親も関わりたいけれども何をしたらいいかわからない」「自分は生理への無理解やセクハラ発言などで失敗した経験があるので、子どもには女性のことも学んでほしい」といったご意見も届きます。「お父さんでも関わりやすいように」という思いを込めて、命育のサイトでも本書でも、意識してお父さんを登場させています。(宮原さん)

『子どもと性の話、はじめませんか? からだ・性・防犯・ネットリテラシーの「伝え方」』より

 こだわりのポイントを聞く中で、特に宮原さんの熱がこもっていたのが、第1章の「心得④保護者自身のプライバシーを大切に」の部分だ。

 お子さんに性の話をするにあたり、後ろ向きになってしまう理由の一つが「お父さん(お母さん)も、セックスしたことあるの?」と聞かれることだと思います。それに対してどう答えたらいいかわからないので、教えない方を選んでしまいがちです。

 低年齢の子どもほど単純な興味として聞いているので、もし性交の説明が済んでいるのであれば「うん、したことあるよ」とシンプルに答える方法もあります。一方で「今もしてるの?」「いつが初めてだったの?」といった細かい質問には「それはプライベートな話だから答えたくないんだ」と言ってもいい。

 また、お子さんが小学生になっても、スキンシップとしてお母さんのプライベートゾーンを触る習慣が続いており、嫌だと思いつつも「拒否したら良い母親ではないのでは」などと感じ、モヤモヤを抱えたままのお母さんもいます。そういった場合、親子間であっても「お母さんのプライベートゾーンだから触ってほしくないんだ」と伝えてもいいんです。

 保護者自身が「NO」を伝えることで、他人にもプライバシーやプライベートゾーンがあることを学べますし、お子さん自身にも「嫌なことに対して『NO』と言っていいんだよ」と、伝えるきっかけにもなります。(宮原さん)

 第4章の「年齢に応じたスマホのつきあい方についての見直し」も重要な部分だ。思春期以降のトラブルの発覚は、親が子どものスマホを勝手に見て事態が明るみになることが少なくなく、命育への相談にも多いという。

 お子さんのスマホをこっそり見たところ、同性の友人同士で下着姿の写真を送り合っていたり、知らない人に写真を送っているのを発見してしまうことがあります。しかし、親であれど勝手にスマホを見ることは子どものプライバシーの侵害。注意をしたくても「スマホを見たことを子どもに言えない」という相談も受けます。

 本書ではスマホに関する具体的な”わが家ルール”の決め方についても提案しています。ルールを決めておかないとトラブルが起きたときに対応が遅れてしまったり、勝手にスマホを見たことで子どもの信用を裏切り、余計に解決が難しくなってしまうことも。ルールだけでなく、「どのような写真を、なぜ、送ってはいけない、送らせてはいけないのか」といった子どもを加害者・被害者にしないための知識も一緒に伝えてあげてほしいです。(宮原さん)

家庭での性教育は「専門家」でなくてもできる

『子どもと性の話、はじめませんか? からだ・性・防犯・ネットリテラシーの「伝え方」』
 性教育は“教育”とついていることから、「難しそう」「専門家でないと教えられないのでは」と思っている人も少なくない。だが、「性教育は妊娠や出産だけでなく、多様なテーマで成り立っていることを知っていただけるとハードルが下がるようです」と宮原さんは話す。

 日常会話での性教育をプッシュしているように、「専門家じゃなくていいんですよ」とお伝えすると「自分にもできる」と思っていただけるようです。先にお伝えしたように、まずは大人自身にも性の知識を学んでほしいと思っていますが、「しっかり知識を身につけてからでないと」と構えるのではなく、知らないことは、お子さんと一緒に学ぶ気持ちで読んでいただければと思います。(宮原さん)

 最後に、読者へ伝えたい思いを伺った。

 本書は「性教育に興味はあるが何からはじめていいのかわからない」「今さら子どもと性の話なんてできない…」そんな、性教育初心者や性に抵抗感のある人にこそ読んでいただきたいと制作しました。

 色々なケースがあることを想定し、お父さん・お母さんだけでなく、子どもの周りにいるさまざまな大人の方に読んでいただきたいという思いを込めています。ぜひ、肩の力を抜いて、コーヒーでも飲みながら本書をめくっていただき、子どもと性の話をはじめてみませんか?(宮原さん)

★書籍情報
子どもと性の話、はじめませんか? からだ・性・防犯・ネットリテラシーの「伝え方」
宮原由紀 著者/高橋幸子 監修
定価:1,540円(税込)
対象:幼児期、児童期、思春期の子をもつ保護者、子どもに関わる方

★イベント情報
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