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ドラマ『二月の勝者』、金で「不可能を可能にする」のは受験だけではない【最強最悪の中学受験塾講師!痛快人生攻略ドラマが始まる!】

 中学受験をリアルに描く連続ドラマ『二月の勝者-絶対合格の教室-』(日本テレビ系/土曜午後10時~)の放送が10月16日にスタートした。原作は、2017年12月から「週刊ビックコミックスピリッツ」(小学館)で大ヒット連載中の同名漫画。

あらすじ

 第1話(サブタイトル「最強最悪の中学受験塾講師!痛快人生攻略ドラマが始まる!」)では、中堅中学受験塾「桜花ゼミナール吉祥寺校」の新校長に、スーパー塾講師の黒木蔵人(柳楽優弥)が赴任する。黒木は大手中学受験塾「ルトワック」から、合格実績の振るわない桜花を立て直すべく迎えられたのだ。

 保護者や新6年生の生徒たちに「全員を第一志望校に合格させる」と高らかに宣言する黒木。その一方で、桜花の塾講師たちには「合格のために最も必要なものは、父親の経済力と母親の狂気」であり、生徒の親は「スポンサー」「金脈」「金のなる木」「ATM」、塾は教育者ではなく「サービス業」「子どもの将来を売る場所」と言い切る。

 6年生からの入塾を考えるサッカー少年の三浦佑星(佐野祐徠)は、学校の成績はクラスで一番だが、桜花のオープンテストの結果は偏差値40の最下位。というのも、「中学受験模試の偏差値」は、首都圏の6年生の約2割にあたる中学受験生のみで算出される。

 その多くが4年生から塾に通い、5年生までに6年間のカリキュラムを終えた成績上位者。そういった子たちに混ざって受けたテストで偏差値40(一般の偏差値60に相当)が取れた佑星は、むしろ6年生全体の中では優秀なほうなのだ。

 とはいえ、中学受験とサッカーの両立は厳しい。サッカークラブのコーチを務める佑星の父は、小6の伸び盛りでサッカーを中断するのはもったいない、偏差値40ならサッカーを続けたほうが可能性があると中学受験に反対する。

 そんな父親に対して、佑星のサッカーの実力を「平凡」と評し、「凡人こそ中学受験すべき」と力説する黒木。サッカー人口から考えてプロになれる確率は0.1%もないが、中学受験で名門私立に入れる確率は10%。勉強はスポーツや芸術よりも努力のリターンが得られやすく、中学受験で受かれば15歳の「伸び盛り」にサッカーを中断しなくてよい、大学付属なら18歳での中断もなし、と説く。

 結果、佑星の父は「サッカーも勉強もやるのは本人」と考えを改め、佑星は正式に入塾した。実際にやるのは子ども。けれどお金を出すのは親。それも、多くは父親。そのことを見据え、黒木は佑星の父、つまり「ATM」を揺さぶったのだ。

 実は黒木は、オープンテストを受けた佑星に「解こうと粘ったのがよくわかる答案です。スポーツか何か長い期間取り組んできたものがあるでしょう。粘って頑張った経験のある人は受験でも強いですよ」と激励していた。

 佑星にかけた言葉も、黒木にとっては「新規顧客」を獲得し、父親という「ATM」から金を引き出す手段のようだ。それでも、期待をかけてくる父親の顔色をうかがいながら長らくサッカーに打ち込んできた、11歳の子どもである佑星にとって、自分個人に向けられた「自分のこれまで」を明確に肯定する言葉はうれしく、背中を押してくれるものとなった。

 黒木は桜花の生徒たちに「不可能を可能にする。それが中学受験です」とも語っていた。「中学受験」のドラマと聞くと、都会の一部の子どもたちの話と思いそうだが、親が経済力を使って子どもの「不可能」を「可能」にする場所は受験塾だけではない。

 たとえば、我が子をスイミングスクールに通わせる親は珍しくない。私もその1人だ。小学校の水泳の授業だけで泳ぎを習得するのは「不可能」かもしれないから、あえてお金を払い「可能」にしようとしている。

 スイミングは比較的親の負担が軽いほうだ。サッカー、ピアノ、バレエなどは、親のエゴであろうが子どもの意思であろうが、子どもがある程度の技術を習得するには、親も熱心にならざるを得ないだろう。

 スケジュール調整、送迎、係や役員の負担、関係者とのコミュニケーション、食事管理。自宅練習が必要なら子どもに促す。レッスンについていけているのか、適切な指導を受けられているのか、気を配る。「経済力」以外にも求められることがあるのだ。

 塾にしろ習い事にしろ、親がある意味自分自身の時間を犠牲にし、我が子をサポートする行為は、「教育熱心」を通り越して「狂気」に駆り立てるリスクが確かにあると思う。そして子どもは基本的に弱者で、親の価値観や状況次第で、自分の不可能を可能にする機会を得られるかどうかも左右される。

 我が子に少なからず期待を持ちながら子育てをしている親の立場からすると、黒木の過激な言動は、一言でいうと「だよね」というような共感を持って刺さるのではないか。「子どものやりたいことをやらせたほうが」「そこまでしなくても」とか、きれいごとを言われるよりずっと。

 『二月の勝者』は、現代の子育てで生じがちなジレンマをリアルに映し出していく。超現実主義の黒木はいかにして中学受験に挑む親子の「狂気」と対峙し、「勝者」へと導いていくのだろうか。

 次回の第2話は、退塾を希望する生徒とその家族の悩みを描く。