• Wed. Dec 1st, 2021

「年間100万」! 子どもの塾代に悩むママたちが語る、中学受験のリアル「ここまで投資したんだから、諦めるわけにはいかない」

今や日常生活において、かかせないツールとなっているコミュニケーションアプリ「LINE」。かつては子どもの送迎時に、ママたちが立ち話をしているような光景が見かけられたが、時間に追われ忙しく過ごす共働き世帯が増えた今、ママたちのコミュニケーションの場は、LINEのグループチャットになっているという。そんな、ママたちの「グループチャット」から浮き彫りになった、彼女たちの悩みや、苦悩、気になる話題を覗いてみる。

 首都圏では珍しくなくなってきた「中学受験」。東京都のある地域では、私立中学を受験する子どもの割合が、クラスの半数近くにもなるという。この秋から放送されている、中学受験をテーマにした連続ドラマ『二月の勝者-絶対合格の教室-』(日本テレビ系)の影響で、子どもの受験を意識するようになった人もいるのではないだろうか。

 授業料がかからない公立中学に比べ、私立中学は入学金や学費など、多額のお金がかかるものの、子どもに受験をさせるのは、いまや高収入世帯だけとは限らず、さまざまな理由から私立中学への進学を選択する家庭も増えてきたようだ。今回は、「予定外の中学受験に翻弄されている」というママのエピソードを紹介する。

娘が転入先の小学校になじめず、中学受験をさせることに

 都内に住む千穂さん(45歳・仮名)は、夫と小6の娘、小2の息子の4人でJR山手線内の閑静な住宅街で暮らしている。娘は地元の公立中学には進学せずに、私立中学を受験する予定だ。

「息子が小学校に入学するタイミングで、今住んでいる地域に引っ越してきました。区役所で転入の相談をした時も、担当者から『ここら辺は、2、3人に1人は中学受験します』と言われて驚いていたのですが、私立だけではなく、国立や公立の中高一貫校などを含めて、受験する子どもが多いようです」

 千穂さんの娘は、もともとは受験する予定はなかったという。しかし、娘が小学校に思うようになじめず、中学受験を決めたそう。

「転校先の小学校は1学年2クラスしかなく、子どもたちは幼稚園の頃からずっと一緒のメンバーのため、娘はすでにでき上がっているグループの中に入れなかったみたいで……。ママ同士の結束も固く、私も仲良くなりづらかったんです。一方、息子はほかの子と同時の入学だったので、友達づくりもそこまで苦労せず、私も保護者会などに積極的に参加して、ママ友を作っています」

 千穂さんの子どもたちが通っている小学校は、保護者参加が盛んであることも、娘の中学受験を検討した理由のひとつだそうだ。

「娘は“いじめられている”といった深刻な状況ではありませんが、たまに学校に行くのを嫌がったり、特に仲が良い子がいるわけでもなさそうで孤立気味なんです。それに、今の学校では、学校行事で必ず保護者に手伝いを募ったり、休日も地域清掃のボランティアを行ったりと、なにかと親同士の横のつながりが活発なこともあって、『娘がこのまま通学区域の中学に入学すると、同じコミュニティでの付き合いが続くのか』と、私も億劫に感じるようになってしまって……」

 しかし、千穂さんの家庭にとって、中学受験にかかる経済的負担は想像以上だという。

「私は保育士なんですが、時短勤務をしているので思うようには稼げません。息子が低学年のうちは担任を受け持ったり、遅い時間の勤務はしないつもりでいたものの、娘の塾代や受験料などで費用がかさむので、受験が落ち着いたらシフトを増やすつもりでいます。夫は小さな印刷会社に勤務し、土曜勤務も隔週であるほど業務量は多いのに、入社してからほとんど給与が上がっていなくて……。副業は可能なので、週に2回ほど、深夜の警備バイトもしています。私も夫も正社員ではあるのですが、今後、大幅な収入アップは期待ができないので、もしも娘が志望校に合格できても、学費を払い続けられるかと不安ですね」

 そんな千穂さんは、小学校で同じように子どもに中学受験をさせるママたちと出会い、「○○中学は入学後の寄付金はいらない」という情報をLINEで送り合っているそうだ。「10月、11月は学校説明会がピークの時期。人気校だと予約すら取れないこともあるので、こまめに情報交換をしています」と語る。

進学率の高い有名校ではなくても、子どもを私立に入れたい親たち

 中学受験というと、“男子御三家”とされる開成、麻布、武蔵、“女子御三家”とされる桜蔭、女子学院、雙葉などの進学率の高い有名校ばかりが頭に浮かぶが、千穂さんいわく、実際には難関校以外を受験する子どもが大半だという。

「娘はクラスの中でも、普通よりは少し勉強ができるくらいだったので、いわゆる“進学系”の私立中学なんて考えたこともありませんでした。最初から名門校狙いの子は、低学年の頃から塾通いをしているケースがほとんどなので、地頭が良かったり、個人指導の塾に通わせて徹底的に勉強させないと、なかなか太刀打ちできそうにありません。うちの子は、偏差値的にはさほど高くない大学の付属女子校を狙っています。小5の終わりから塾に通わせていますが、それでも年間100万円近くかかっていますね……」

 千穂さんは、「中学受験は自分の両親からの援助が受けられないとつらい」と本音を漏らす。

「ママ友の中には、夫も中高一貫校を出ている人がいて、義実家からの金銭的援助も期待できるそう。うちはサポートを受けられる環境ではなく、何かあった時のことを考えると不安なので、正直、うらやましいです。情報交換用にママ友と少人数のLINEグループを作ってやりとりしているんですが、子どもの塾代については、『ここまで投資したんだから、受験を諦めるわけにはいかないよね』とお互いを励まし合っています」

 千穂さんにとって、中学受験をするママ友は、“戦友”のような存在だという。

「受験って、孤独なんですよ。夫が協力的ではない家庭だと、塾に持たせるお弁当を作ったり、送り迎えをしたり、ママが1人で子どもを支えなくちゃならない分、ストレスも溜まる。いくら自分が頑張っても、実際に試験を受けるのは子どもなので、合格発表の日まではどうなるのかわかりません。焦ったり、不安になった時、ママ友が『○○ちゃんなら絶対に受かるよ』とか、『みんなで合格目指そう』とメッセージをくれるので、落ち込まずに済むんです。もしかしたら、難関校を受験させるママ同士は仲が良くないのかもしれないけれど、私の周りは“ライバル”というよりも、一緒に苦難を乗り越える“戦友”のような意識を持っている人が多いかもしれません(笑)」

 育児を取り巻く環境は、年々と変わっていく。以前は一般的ではなかった中学受験も、これから先、教育方針のひとつとして定番化していくだろう。子どもの受験に不安を抱えるママたちには、千穂さんのように同じ境遇の人と情報交換を行いながら、少しでも自身のストレスを軽減させていってほしいところだ。