• Wed. Jul 6th, 2022

相葉雅紀が読んだ『錦繍』は、嵐のいまと重なる!? 「別れと再会」の物語を味わう

――アイドル好きのブックライター・保田と編集部員・B子が、タレントたちの“愛読書”を片手に、人となりを妄想中!? 「サイジョの本棚」前で、おしゃべりが始まります!

◎ブックライター・保田 アラフォーのライター。「サイジョの本棚」担当で、一度本屋に入ったら数時間は出てこない。海外文学からマンガまで読む雑食派。趣味(アイドルオタク)にも本気。

◎編集部員・B子 猫と暮らすアラサー。芥川賞、直木賞、本屋大賞あたりを一通りチェックしたい、ミーハーな本好き。最近はノンフィクションばかり読んでいる。趣味(ジャニーズオタク)にも本気。

嵐・相葉雅紀が読んだ1冊:『錦繍』

編集・B子 この前、嵐・相葉雅紀がラジオ『嵐・相葉雅紀のレコメン!アラシリミックス』(文化放送)で、『錦繍』(新潮社/著: 宮本輝)を読んだって言ってたの。私は聞いたことない作品だったんだけど、保田さんは読んだことある?

ライター・保田 うわあ、懐かしい作品! 芥川賞受賞作家・宮本輝の人気作品の一つだし、もちろん読了済みだよ。書簡(手紙)形式で進んでいくから読みやすいと思うけど、もう40年も前に発売された本を手に取るなんて、ちょっと不思議。相葉さんって読書家なの?

編集・B子 それが、相葉ちゃんは嵐の活動休止後に小説を読み始めたらしく、読書にハマったのはここ2〜3年の話みたいよ。ちなみに、今までラジオなんかで「読んだ」と明かしていた本は、宮部みゆきの『模倣犯』(小学館)、奥田英朗の『最悪』(講談社)といった、過去の名作が多い。

ライター・保田 「今話題の本」じゃなくて、「読書好きの定番本」から読み始めてるんだね。まずは基礎から固めていくみたいな、相葉さんの真面目さを感じるよ。

編集・B子 相葉ちゃんの冠番組『相葉マナブ』(テレビ朝日系)を見てると、料理やものづくりに一生懸命取り組む姿が印象的で、まさに“真面目な好青年”。本のチョイスにも、性格が表れるもんだね〜。それで、『錦繍』ってどんな話なの?

※以下、『錦繍』の結末についての言及があります。

ライター・保田 とある事件をきっかけに離婚して音信不通だった元夫婦が、偶然の再会をきっかけに手紙をやりとりする話。前夫・有馬の住所を探し当てた女性・亜紀の手紙から始まって、過去に有馬が起こした事件、そこからの唐突な別れ、お互いの心境の変化を手紙につづり合っていくの。

編集・B子 なるほど、「別れと再会」の話なんだ。そういえば、嵐活動休止前の2019年、『24時間テレビ42』(日本テレビ系)の中で相葉ちゃんがメンバーに手紙を朗読するシーンがあったのよ。20年間の活動を振り返りながら、嵐のメンバーを「最愛のパートナーです」と言ってて、すごく感動したんだよね。活休後に『錦繍』を読んだって知ったら、作品のストーリーと嵐を重ねちゃう。

ライター・保田 手紙を出した亜紀は、もう別の男性と結婚しているんだけど、有馬との別れをうまく消化できてないんだよね。最初は「お返事をいただくためにお出しする手紙ではありません」とか書きながら、次にはもう「主人は今月の末から三カ月間の予定でアメリカにまいります」って書いて、さりげなく有馬と会う隙を見せていたり、未練があるのかなって私は解釈した。

編集・B子 おお、なんか急に昼ドラっぽくなった(笑)。で、2人の関係はどうなるの?

ライター・保田 相手の未練や罪悪感をしっかり乗り超えて、それぞれ新たな人生の目的を持ち、お互いの幸せを願いながら別々の道を歩んでいくの。

編集・B子 ウッ、その結末は嵐と重ねたくないぞ……。

ライター・保田 でも、離れていても2人がお互いを思い合っている姿は、いまの嵐メンバーのようじゃない? きっと相葉さんも『錦繍』を読みながら、メンバーを思い出したはずだよ。 

編集・B子 今は5人それぞれの目標や、やりたいことに向かってバラバラに歩んでいるけど、ぜひファンの幸せのために、また同じ道を進んでいってほしいなあ。

編集・B子 さて、『錦繍』を読んだ相葉ちゃんにおすすめするなら、どんな本がいいかな? さっき「まずは基礎から固めていくみたいな、相葉さんの真面目さを感じる」チョイスだと言ってたけど、その“基礎”ともいえる作品や作家は、個人的にも気になる。

ライター・保田 『模倣犯』や『最悪』を読んだ相葉さんは、エンタメ系が好きなのかなと想像して、伊坂幸太郎作品を推したい! あまり読書をしない人でも、楽しく読める作家じゃないかな。

編集・B子 伊坂幸太郎は、生田斗真やHey!Say!JUMP・山田涼介が出演した映画『グラスホッパー』(15年)の原作者だよね。最近も、海外の文学賞にノミネートされたってニュースを見たよ。

ライター・保田 そうそう。英・ダガー賞にノミネートされた『マリアビートル』は、『グラスホッパー』(どちらも角川書店)と同じシリーズなの。同作は『ブレット・トレイン』としてブラット・ピット主演で映画化が進んでいて、今年公開予定みたい。ストーリー構成の巧みさは世界レベルのお墨付きっていっていいんじゃないかな。

編集・B子 でもさ、シリーズものって読書初心者にはハードル高くない!? 相葉ちゃんはきっと、「1冊で伊坂幸太郎の面白さがわかる」って作品を読みたいはず!

ライター・保田 ちょっと待って、答えを急ぐな(笑)。私が相葉さんにおすすめしたいのは、伊坂幸太郎の連作短編集『死神の精度』(文藝春秋)。主人公の男性「千葉」は、人の死を判断するためにこの世界に派遣された死神という設定で、この仕事を通して、いろんな人の人生と死に触れていくの。

編集・B子 へえ〜。ちょっとファンタジー要素もありそう。

ライター・保田 千葉は、人間世界に興味は薄いけど、人間の作る「ミュージック」が大好きで、音楽が作品のスパイスのような役割を果たしている。さらに、千葉がこの世界に現れるときは常に「雨」っていうところが、嵐を想起させるかなって。

編集・B子 そういえば、嵐・櫻井翔は「5人で仕事すると雨になる」って言ってた。実際、コンサートの日程に台風が直撃して延期になったり、国立競技場の公演で大雨が降ったり、大きなイベントで嵐を呼びがちなんだと思う(笑)。しかも、相葉ちゃんの出身は「千葉」だし、「ミュージック」が大好き……なんか、共通点が多い気がしてきた。

ライター・保田 人間ではないキャラクターをメインに据えて、人の生死を俯瞰させることで、伊坂作品が持つ「普遍的な優しい視点」がストレートに表れた作品だと思う。まさに、この1冊で伊坂幸太郎の面白さがわかるんじゃないかな。

編集・B子 短編集だったら、忙しい相葉ちゃんでも読みやすそう。『死神の精度』はいろんな面から見て、相葉ちゃんにぴったりの作品だね。

ライター・保田 ほかには、「別離」の物語であるカズオ・イシグロ『わたしを離さないで』(早川書房)や、『錦繍』と同じ書簡形式で進むけど全然内容が違う、森見登美彦『恋文の技術』(ポプラ社)もおすすめ。ちょっと趣向を変えて、本読みのプロ2人が20世紀のベストセラーを読み倒す対談書評集『百年の誤読』(筑摩書房)は、次に読みたい本を探せていいかも。

編集・B子 相葉ちゃんがどんな本を選ぶか、これからも注目してこ〜!

『錦繍』(新潮社/著:宮本輝)

 「前略 蔵王のダリア園から、ドッコ沼へ登るゴンドラ・リフトの中で、まさかあなたと再会するなんて、本当に想像すら出来ないことでした」運命的な事件ゆえ愛し合いながらも離婚した2人が、紅葉に染まる蔵王で10年の歳月をへだてて再会した。そして、女は男に宛てて一通の手紙を書きつづる――。往復書簡が、それぞれの孤独を生きてきた男女の過去を埋め織りなす、愛と再生のロマン。

『死神の精度』(文藝春秋/著:伊坂幸太郎)

 CDショップに入りびたり、苗字が町や市の名前であり、受け答えが微妙にずれていて、素手で他人に触ろうとしない――そんな人物が身近に現れたら、死神かも。1週間の調査ののち、対象者の死に可否の判断をくだし、翌8日目に死は実行される。クールでどこか奇妙な死神・千葉が出会う6つの人生。