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いきすぎた自然派&キラキラスピリチュアルの有名人、この二人に極まれり!

ByAdmin

Jun 29, 2021

 2回にわたりお届けしてきた「あの人は今」シリーズ(いつの間にかシリーズになってる)。ひとまずラストとする第3回目は、前回の「渋谷系」後に登場した、ラスボス感漂う物件です。それは、ミュージシャンのUA&作家の蝶々。まばゆいオシャレ界は消え去り、ディープな異次元へ……。

 UAがメジャーデビューしたのは、渋谷系が終わりに向かいつつある1995年。野性味あるビジュアルにハスキーな歌声。民族音楽テイストも取り入れた楽曲がハマって最高にカッコよく、クールな原始世界を見ているような気持ちになったものです。大ヒットとなった「情熱」リリース当時、その素顔はあまり知られていなかったように思えますが、その後結婚・出産・再婚したことで私生活にも注目が集まると、イメージそのままの……いやいや、想像以上の人物であることが明らかになっていきました。

 UAは現在4児の母ですが、長男(俳優の村上虹郎)以外を自宅出産しています。当連載の前2回でも、吉川ひなのやカヒミ・カリィなど「自然派ママ」は登場していますが、UAのそれは自然派を通りこし、野生みを感じてしまう。長男出産後に再婚したクリエーターの夫の存在も大きく、自宅出産を当然のものとし「お金を払って助産師を呼ぶこと」すら反対したというエピソードが、子育てライフスタイル誌で語られていました。つい先日、吉川ひなのが第3子を自宅出産した旨を報告していましたが、水中出産のためにビニールプールを室内に設置した様子を「自分専用分娩室」とInstagramにアップしていたキラキラ報告すら、薄っぺらく感じられてしまうガチ度です。

家族の命が危ない!?
 出産だけでなく、夫がスズメバチに刺されたエピソードも凄まじいものがあります。過去にも刺されたことがある夫は、再度刺されることの危険を知っていたため、アナフィラキシーを起こすと用意していたエピペン(症状を緩和するために、自己注射する補助治療剤)をUAに手渡したそう。ところが「それを打つのがすっごいイヤ」だからと、自己判断で代わりにレメディ※を与えたうえ、塩・ワカメ・ドクダミ等を入れた風呂につけたそう。レメディはただの砂糖玉ですから医学的にはなんの根拠もなく(あるとすればプラセボがせいぜい)、普通はエピペンを打ったあと、即病院というのが標準医学の一般的な対応なんですが、UAの感性がそれを許さなったということです。幸い症状は治まったとの話ですが、生きててラッキー、つまりは下手すりゃ死んでたこの出来事を鼻高々にインタビューで語るワイルドさよ。

※レメディ=民間医療や伝統医療しかなかった時代、欧米各国で「副作用がない治療法」として広がった「ホメオパシー」で使われる治療薬。植物、動物組織、鉱物などを水で100倍希釈して振盪(しんとう)する作業を10数回から30回程度繰り返して作った水を、砂糖玉に浸み込ませたもので、要はただの砂糖玉。実践者たちには「物質の記憶が残っている」と信じられている。

 UAといえば、2010年に相模原市の自宅が火事で全焼した事件を、覚えている方は多いでしょうか?(原因は薪ストーブ)。これは長男がラジオでそのときのエピソードを語り、ネット記事でも取り上げられていましたが、当連載的には火事の怖さよりも「喘息で体が弱い」のに、「母(UA)が西洋医学を嫌うので、漢方薬を飲もうと夜中に起きた」という点に釘付けとなりました。アナフィラキシーショックを起こした夫にも、喘息の息子にも、野生派ママは西洋医学を徹底して排除。でも漢方はOKとするのも(自然だから?)、自然派あるあるぅ……。

 その後は沖縄移住を経て、現在は一家でカナダの島へ移住。ラジオ番組の出演時で「すごい自然なんでしょう?」とふられると、「でも熊は出ない」と回答するスケールの大きさ。ナウシカの世界で言うなら、「火を捨てた森の人」でしょうか(※火=文明やテクノロジーの比喩)。現在は「ワクチン危険」メッセージも発信しているようで、「接種によって自然免疫を破壊してしまうのではないか」と、某インタビューで語っています。

 こうしたネタを書くと「音楽が好きなだけで、私生活は興味なし!」という意見もあるようですが、影響力のある歌声が思想を広げていくのは、世の定石。UAの歌声が素晴らしいだけに、彼女のトンデモ発信が海より深い悲しみです。

止まらない選民意識
 さてさてさて。大トリとなるラストは、完全に異世界へ転生した作家・蝶々です。2002年、銀座ホステス時代に書いていたブログ「銀座小悪魔日記」を出版し、作家としてデビューした人物です。小悪魔ブームの火付け役と言われ、モテるにはどんなテクニックが有効か? 男心をわしづかみにするには? 俗世界の指南書を世に送り出していましたが、2004年からパワースポットめぐりや神社めぐりを開始。モテの教祖からスピ教祖へとシフトチェンジしていきました。

 モテ教祖時代も大上段からものを言うぶっ飛んだ作風が特徴でしたが、スピ界入りしてからは「私は特別」という選民意識が、狂気かと思えるほどに次元上昇しています。スピリチュアルを文芸で描く大御所・吉本ばなな(以下、ばなな)との対談本『女子の魂!』(マガジンハウス)も強烈でした。同書における、蝶々の主張はこんな感じです。360度「スピしぐさ」そのものですが、ここまで自分アゲしてしまう物件はなかなかお目にかかれません。

※( )内は山田ノジルのツッコミです。

・ばななと蝶々は、古代の巫女仲間。転生によって人間をやり尽くしているので、人間の本質的なことが見える。ふたりは生まれつき特殊で、スピリチュアル・インデックスが多い。(2008年に発行された『小悪魔な女になる方法』では「霊も前世もオーラも見えず、超能力ももちろんゼロ」って書いてあったけどなあ)

・世界中のどこに行っても、自分にはプリンス級の男が寄ってくるが、それは彼らが抱える「家の業」を祓ってもらいたいという本能から。でも、いち男性を祓うために自分の光やエネルギーを使いたくない。(名家や資産家が何かしらのお家騒動を抱えているのは超絶よくある話でしょうし、そしてそういう方々が有名かつ目立つ蝶々と出会うことも、何ら不思議はなさそうなのですが……)

・九州の神社の高位の神官に「あんたは宇宙から来た」と言われはじめる。神職と間違えられることもよくある。(神主も太客にはリップサービスすんのかな~と、ゲスな庶民は思いました)

・自分は清らかすぎて、精進料理とかを食べる生活を送っていると波動が上がりすぎる。酒煙草を意識的にやらないと、この世にいられない。ゴシップ記事を読んだり衝動的にファストフードを食べたりするのは、現世と調和するため。(あらやだ。ホラー映画を観まくる私も、やっぱり清らかすぎるからでしょうか?)

・宇宙や天界から降ろしてきた光を使い、周りの人へお祓い&プロテクトを施している。だから自分と会うと、涙が出た、お腹壊した、吹き出物が出たなどのデトックスの作用が報告される。(不調ですら自分の手柄にする思考回路はすごいぞ)

 ちなみにばななとはイマイチ話がかみあっていないのですが、この対談をどう読むかを、あとがきでばななが必死に補足している感も、大変味わい深いポイントです。

モテ教祖からスピ教祖へ
 蝶々はその後、2014年の冬に41歳で妊娠したことも報告されています。幸せいっぱいなマタニティライフは『蝶々、ママになる』(集英社)で語られていますが、さすがスピリチュアル作家への転向。こちらは胎内記憶界隈、子宮系女子界隈でよくお見かけする「胎児と会話する」という新たな設定をぶち込んでいます。

・「魂の波動とか発言の視野の広さとか安定感とか、すでに子どもとは思えない。めっちゃしっかりしている」
・「地球に来てやりたいことがある。経験を積んだ私が母親であることが、この子にとって動きやすい」

 「おなかに入る前からおしゃべりしていた不思議な赤ちゃん」が、広い視野と価値観を教えてくれたのだとか。さらに、産院からの紹介で行った仙骨調整では「あなたは神の子を宿している」と言われ、さらにその気になっている様子も伝わってきます。ええ、それは一体どんな産院なのか? 作中に医師や施設の名は出てきませんが「庭での薪割り」「玄牝-げんぴん-」というキーワードから、「自然なお産」のカリスマ的存在である、愛知県岡崎市の吉村医院で確定でしょう。産院の母親学級では胎児とおしゃべりできることを「あるって思ってコミュニケーションとろうと試みたら、詰まっているものがとれて開通するよ!」と力説したエピソードも登場しますが、なるほどこの産院を選ぶお母さん方なら受け入れてくれそう。

 「神の子」「宇宙から地球にやってきた」「子どもが自分を選んで生まれてきた」あたりは「胎内記憶」定番の展開ですが、コラボ大好き胎内記憶業界と関わっている気配はあまりありません。彼女の発信からは、自分はそのへんのスピ女子とは格が違う、と自負している様子が度々伝わってきますから、雲の上の存在を演出する戦略であると思われます(でもオリジナルのパワーストーンは売ってるのが平凡だわ)。

 モテ教祖のままでは、年齢的にも頭打ちになるのは必須。そこからスピ教祖へと鞍替えしたのでしょうけど、自分アゲの芸風は変えていかないと、今の時代にスピリチュアルを求める人たちの心は離れていきそうです。

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 さまざまな方面で活躍していた人たちが、今やトンデモ。この流れは、他にもいくらでも出てくるでしょう。いかにトンデモが活躍しやすい世の中であるのか。私たちは今、百鬼夜行の行列が、果てしなく長く伸びていくのを目撃しているのです。