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レジ袋削減の目的はCO2排出量削減だけではない! 日本メディアのミスリードを糾す

ByAdmin

6月 30, 2021

●いま、“ここ”が分水嶺…豊かな地球を残すために知っておくべきこと(第4回)

 エコバッグを使うより、レジ袋を買って複数回使うほうが環境に優しい―先日、某雑誌で記事が掲載され、ツイッターなどSNS上で話題となっていました(リンク)。

 結論から言うと、読者をミスリードさせる、非常に問題のある記事なのですが、日本では何故レジ袋を削減する必要があるのか、十分に社会に浸透していないからこそ、あのような記事が注目を集めるのかもしれません。そこで、今回はレジ袋削減や脱プラスチックについて、解説します。

 問題の記事は、イギリスの環境庁が2011年にまとめた報告書をもとに、レジ袋とエコバッグの地球温暖化に及ぼす影響を比較しています。同記事によれば、エコバッグはその製造に環境負荷がかかるため、131回以上使わないとレジ袋より環境負荷が高いとしており、「レジ袋を複数回使った方がエコ」とも書いています。

 ただし、出典の英環境庁報告書では、エコバッグの素材ごとの温暖化への影響のデータを比較しており、「レジ袋131回分」というのは、コットン(綿)製のエコバックのデータです。その他の素材では、例えば、紙袋では3回分、ポリプロピレン不織布では11回分となります。

 前述の某誌の記事では、"131回も使わないといけないエコバッグを使うくらいなら、レジ袋を複数回使った方がエコ"との趣旨ですが、素材によって環境負荷が全く異なることを書かないのは、あまりフェアだとは言えません。

 ポリプロピレン不織布なら、それなりに丈夫なので、すぐ破れるレジ袋よりも、ずっと長く使えます。一方、コットンは環境負荷が大きいことは事実です。原料となる綿花を育てる過程では大量の水が使われており、Tシャツ1枚分(150グラム)のコットンは、一般的な風呂桶の13.5倍の水(約2700リットル)を必要とします。

 また、綿花のための化学肥料や農薬をつくったり、農作業用の機械を動かしたりすることで、大量のCO2を発生させます。石油が原料のレジ袋より、コットン製のエコバッグの方が製造における環境負荷が高いというのは、これらの理由があるのです。

 しかし、例えば化学肥料や農薬を使わないオーガニックのコットンなら、従来のコットンに比べ、約9割の水を節約でき、4割以上のCO2排出を削減することができます。

レジ袋が環境に与えるもうひとつの負荷
 そもそも、レジ袋削減が訴えられている理由は、温室効果ガスの削減だけではありません。

 レジ袋を含めたプラスチックは、自然界ではなかなか分解されず、環境中に流出すると、何十年、何百年も、ごみとして残り続けます。

 近畿地方などの12自治体による関西広域連合が2019年に発表した調査結果によると、大阪湾だけでも約300万枚のレジ袋が海底に堆積しているとのことです。こうしたレジ袋は、クジラやジュゴン、ウミガメ等の海の生き物達が誤飲してしまうという問題があります。

 また、東京農工大学の高田秀重教授によれば、プラスチックが砕けたりして細かくなったマイクロプラスチックは、海中の有害物質を吸着するとのことです。そして、これらの有害物質を含んだマイクロプラスチックが生物の体内に蓄積されることによる悪影響は、水鳥などではカルシウム不足で卵の殻が薄くなる等の害あることが確認されているそうです。

 人間への影響はまだよくわかっていませんが、魚などの海産物を食べることで、有害物質を吸着したマイクロプラスチックを体内に取り込んでしまうことは十分あり得ることなのです。

 食品等の容器やペットボトル、漁具など毎年膨大な量のプラスチックが海に流出しており、自然保護団体WWFJapanによれば、重さにしてジャンボジェット機5万機分に相当するのだそうです。

 この海洋プラスチックごみの排出をいかになくしていくかは、全世界的な課題であり、2019年のG20大阪サミットでも中心テーマのひとつとなりました。

 海洋プラスチックごみ対策として、レジ袋も含めた使い捨てのプラスチックを削減/廃止していこうというわけです。

 昨年7月にレジ袋が有料化され、今年6月には、家庭から排出される廃プラスチックを自治体が一括回収することや、企業にリサイクル・使い捨てプラスチックの削減などを促すプラスチック資源循環促進法が国会で成立しました。

 WWFJapanやグリーンピース・ジャパンなどの環境団体による「減プラスチック社会を実現するNGOネットワーク」は同法の成立を歓迎しつつ、「発生するプラスチックを最大限抑制することを最優先した上で、代替品を含め長期間利用やリユース等を行う」「2030年までに環境中に流出するプラスチックを根絶する」等、さらなる対策の強化を求めています。

 温暖化対策のみならず、脱プラスチックの流れから、やはりレジ袋は削減されていくべきで、いずれは廃止されるべきものでしょう。

 本記事で触れたようにコットンの環境負荷も確かに大きいのですが、オーガニックコットンなど、より環境負荷の小さい布素材のエコバッグを使ったり、例えば、いらなくなった衣服等、古布を使ってエコバッグを自作するならば、環境への悪影響を小さくできます。

 何が本当に環境に優しいのか判断するのかは、なかなか難しいこともありますが、基本的には、大量生産・大量廃棄を見直すことが重要なのです。

(志葉玲)

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