羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。
<今回の有名人>
「家族にはギャラは支払えないってさ」メイプル超合金・安藤なつ
「デイリー新潮」6月29日
お笑いコンビのメイプル超合金・安藤なつが離婚調停中であることを、ニュースサイト「デイリー新潮」が報じている。安藤といえば、2019年に6歳年下の一般人男性と交際3カ月でスピード結婚したことが話題になったが、どうやらうまくいかなかった模様。今時、離婚したくらいで世間はたいして驚かないが、夫の知人なる男性の証言によると、離婚の原因は安藤の超束縛と金銭面での厳しさだという。
「新潮」の記事に沿って、夫の知人が挙げた具体例をまとめると、以下の7つになる。
(1)夫が知人と食事に行くときは、相手の連絡先を安藤に申告しなければならない。
(2)家賃の支払い負担は、安藤と夫で6:4。生活費は折半だが、たまに安藤が食事を作ったときは、夫に食費が請求される。安藤は断固として夫に収入を教えない。
(3)アメリカの歌手・リゾの日本語版PVに夫婦で出演。2人にギャラが支払われると聞いていたが、安藤は「家族にはギャラは支払えないってさ」と言い、いつまでたっても渡してくれない。
(4)夫が安藤の仕事を“手伝う”と、安藤自作の「お食事券」が渡される。これは外食したときに、安藤が支払いをしてくれる“金券”のようなもの。
(5)夫は安藤から車検の費用2万円を預かったが、実際は1万円で済んだ。浮いた1万円を安藤に返すのを忘れていたら、「犯罪者」呼ばわりされた。
(6)一緒に食事をしたことがある芸能人について、夫が「あの人、元気かな? また一緒にごはんに行きたいね」と言うと、安藤は「私を利用して近づきたいのか」と怒る。そのため、芸能人の友達が作れなかった。
(7)安藤にドライブレコーダーをチェックされるから、車に乗りにくくなった。
売れっ子芸能人である安藤と、介護職の男性では、収入差があることは想像に難くない。これらのエピソード「だけ」で判断するなら、安藤はモラハラ妻にも感じられるが、エピソードの「前」に何があったのかは書かれていない。たとえば(5)の例は、夫が「たまたま」返金を忘れたのか、それとも返金を忘れることが「前にもあった」かどうかで、受ける印象は違ってくる。そのあたりが不明瞭だから、安藤をモラハラ妻と決めつけるのはいかがなものかと思う。
オンナ芸人と夫婦のカネ問題といえば、山田花子が思い出される。10年5月にトランペット奏者の福島正紀氏と結婚した花子は、13年1月放送の『お笑いワイドショー マルコポロリ!』(関西テレビ)に出演した際、「夫からキス1回1,000円、エッチ1回10万円を要求される」と明かした。また、15年10月放送の『快傑!えみちゃねる』(関西テレビ)で、花子は福島氏の仕事を「儲からない」と断言しながら、トランペット教室を開くために100万円以上かけてホームページを整備した上、高級なハンドクリームやリップクリームを使っているなどと、私生活を暴露。「私は安いのを使ってるのに」と、愚痴をこぼしていた。
関西はお金についてあけすけに語る文化があるため、花子は「あえて」そういう話をしたのだろう。しかし、対等な立場でするはずの行為に金銭を要求したり、高級志向だったりと、夫がカネに固執しているようなエピソードは、視聴者にとって屈託なく笑える話だと私は思えなかった。
オンナ芸人の夫婦で問題になるのは、カネだけとは限らない。北陽・虻川美穂子の夫はイタリア料理店のオーナーシェフ・桝谷周一朗氏だが、バラエティー番組『はねるのトびら』(フジテレビ系)で虻川から公開プロポーズをするなど、よくテレビで見かける夫婦でもある。2人が仲良しならば共演もアリだろうが、バラエティー番組で明かされるエピソードから考えると、そうとも思えない。
たとえば、虻川が枡谷氏と手をつなごうとしても拒否されるとか、勝負下着を着けていても無視といったエピソードのほか、虻川の料理やファッションセンスにダメ出ししている枡谷氏の姿を見て、「この人は、本当に虻川を愛しているのか?」と思った視聴者は少なくないだろう。桝谷氏は虻川との結婚後、昔から大ファンだったという明石家さんまと何度か共演を果たしているが、大興奮するその姿からは、「芸能人と結婚して、芸能人とお近づきになりたい」といった思いがあるように感じた。
幸い、花子も虻川もお子さんに恵まれ、夫婦円満にやっているようだが、2人の夫の「カネや芸能界の人脈に固執する姿」は、安藤の夫に共通する部分があるのではないだろうか。(3)のエピソードで考えると、ギャラがもらえないことから、夫は「安藤はカネに汚い」と思っているようだが、私に言わせると、ちょっと考えが甘い。
日本のファッション雑誌でたまたま安藤を見かけて気に入り、オファーしたというリゾだが、彼女はグラミー賞にノミネートされるほどの実力者なので、PVに出演するならば、本来はオーディションが必要だったかもしれない。例えば、ドキュメンタリー映画『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』(09年)では、マイケル・ジャクソンの後ろで踊るために、世界中からダンサーが集まり、オーディションを受ける姿が収録されている。しかし、介護職に就く一般人の夫は、そうしたオーディションを受けていないはずだ。それなのになぜ、夫にもPV出演のオファーが来たかというと、「安藤なつの夫」だからだ。安藤のおかげで出演できたことをわかっていないから、夫は「家族にギャラを支払えない」と言われたことを「不当」だと感じるのだろう。
(6)のエピソードも同様で、食事会で芸能人と出会い、楽しい時間を過ごせたことで「友達になりたい」と舞い上がったのかもしれないが、それは「安藤なつの夫だから、良くしてもらった」可能性は否めない。「安藤なつの夫」というポジションにいるから受けられる恩恵や、相手の気遣いを考えず、「またご飯に行きたい」と友達のように言ってしまう夫は、ちょっと世間知らずで強欲な部分があるのではないか。
オンナ芸人の活躍の幅は広がり、女優業や執筆業への進出も目覚ましい。有名になれば収入も社会的地位も得られるが、こうなると、有名人の夫になって「自分も有名になりたい」という野心を持ったり、「いい生活ができそう」と企んだりして、オンナ芸人を狙う一般人男性はどんどん増えることだろう。女性の経済力をあてにした結婚が悪いものだと私は思わない。
しかし、その場合は、ある“義務”を背負う覚悟が必要になるだろう。世の社長夫人の多くが控えめにふるまうのは、本人の性格もあるだろうが、「夫あっての自分」ということをわきまえているからではないか。「女性有名人の配偶者」となり、なんらかの恩恵に浴したいと思うなら、男性も「妻あっての自分」であることを理解して、「妻を立てて、控えめにふるまう」ことはマストだろう。
安藤だけでなく、オンナ芸人の皆様におかれましては、気を付けて相手を選んでいただきたいものだ。