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タランティーノvsブルース・リー娘で『ワンス・アポン~』をめぐる論争再び! 「白人男性は父を都合よく利用してきた」

ByAdmin

Jul 5, 2021

 ブラッド・ピットとレオナルド・ディカプリオのW主演で、60年代後半のハリウッド業界を描いた大ヒット映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(19)。鬼才クエンティン・タランティーノが脚本・監督を務めた同作は、69年に女優シャロン・テートがカルト集団「チャールズ・マンソン・ファミリー」に惨殺された事件が主軸になっているが、それとは別に波紋を広げたシーンがあった。

 それが、伝説的アクションスター、ブルース・リーを描いたシーン。ブルース役の俳優に「モハメッド・アリなんか簡単に倒せる」「自分の手は凶器だ」といったセリフを言わせ、ブラッド演じるスタントマンのクリフ・ブースに闘いを挑むが打ちのめされる、というもの。

 これにブルースの娘のシャノンは、「父を傲慢な男のように描いている」「父は白人中心のハリウッドで厄介者扱いされていたが、この映画でも同じ扱いを受けている」と批判。謝罪を求めたが、クエンティンは「そういう人だった」「(中国系の英語の)なまりや傲慢な話し方も脚色していない」と反論していた。

 映画のヒットとは別に、関係者にとってもファンにとってもわだかまりを残したシーンだったが、渦中の2人がまた論争を繰り広げている。

 クエンティンは、現地時間6月29日、小説版『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』のプロモーションを兼ね、総合格闘技コメンテーター、ジョー・ローガンが司会を務める人気ポッドキャスト『The Joe Rogan Experience』に出演。

 『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』で最も論議を呼んだのはブルース・リーを描いたシーンではないかと聞かれ、「このことについて話すのは、あまり気が進まないんだよなぁ。(話したら)そればかり注目されちゃうから」と前置きした上で、両手を広げ、「まぁね。彼の娘が怒っているのは理解できるよ。自分の父親のことなんだから」と発言。「でも、彼女以外のほかの人に文句言われるのはね。ちんこでもしゃぶってろよって感じだね」と、ムッとした表情で吐き捨てた。

 ブルースと主人公クリフが3本勝負をする問題のシーンについて、「1回目はわざと勝たせることで相手の体の動きを計算し、2回目からは叩きのめすというのがクリフのやり方なんだ。本に詳しく書いてるけど。大口を叩くような奴は、1回勝つと(調子に乗って)2回目も同じ動きをするから」と説明。

 このシーンは、関係者から「ブルースの傲慢な態度を直すために倒してくれ」と頼まれた格闘家ジーン・ラベールとブルースの一戦をモデルにしたといわれているが、「ブルースとジーンの歴史について知っていたか」と聞かれたタランティーノは、「もちろん」と即答。

 さらには、「(ブルースの出世作であるテレビ番組)『グリーン・ホーネット』のスタントマンたちは、ブルースのことを嫌っていた。(『ブルース・リー伝』を執筆した)マシュー・ポリーの本に、そう書いてあった。その本が出版される前から知ってたけど」「(ブルースの態度に困ったスタントコーディネーターが)ジーンに頼んだんだ。『ブルースにアメリカ人スタントマンをリスペクトさせてくれ』と。ブルースは本当にスタントマンを見下していたから」「『(ブルースが)本気で蹴ったり殴ったりするから、彼とは働きたくない』と拒否するスタントマンまでいたんだ」とブルースの逸話をベラベラと披露。

 「(ブルースは)スタントマンたちのことを、軽蔑していたんだろうね。自分はアクションをリアルに見せたいと、実際に蹴ったり殴ったりしていたんだ」と持論を展開した。

 このクエンティンの発言に、シャノンが大激怒。7月2日、大手業界誌「ハリウッド・リポーター」に「クエンティン・タランティーノはブルース・リーが嫌いなのか? それとも本を売りたいだけ?」というタイトルのコラムを寄稿した。

 まずは、「私が父の描かれ方を不快に思っていると、潔く認めたことには感謝する」とした上で、ブルースに会ったことのないクエンティンが、なぜあたかも事実を知っているかのように振る舞えるのか疑問だとぴしゃり。「“ブルース・リー”を都合のいい時に都合のいいように利用して、娘である私に“ブルース・リー”を説明したがる人たちに、何年にもわたって出会ってきた」と嘆いた。

 「父を尊大なクソ野郎だったと話す、ハリウッドの白人男性たちにはうんざり。60〜70年代のハリウッドで、独特のなまりを持った中国人男性が仕事をし、外国人・有色人種と認識される中で自分の意見を述べることがどんなに大変だったか。どんな気持ちだったか、見当もつかないだろうし、想像すらできないんでしょうね」と批判。

 「ハリウッドの白人男性たちが、父が持っていた自信や情熱、スキルを傲慢さから来るものだと思い違いすることに、心の底から失望する」「ハリウッドの白人男性は、父がアクション映画というジャンルや演技に与えた影響、格闘技の普及と関心への貢献、そして父の業績がアジア系アメリカ人や有色人種コミュニティの精神を高揚させ、誇りの源となっていることに言及せず、父が(亡くなった)32歳という若さで達成したこれらの偉業を軽視することに、私はうんざりしています」と、偏見に満ちたブルース・リー像の広がりを憂いた。

 そして、「(クエンティンが)父のことを好きなのか、嫌いなのか、そんなことはどうでもいい。あなたはよくわからないでしょうけど、異文化や自分とは異なる経験をリスペクトするためにも、これ以上はブルース・リーについてコメントしないことをお勧めしたい。これ以上の争いなど必要ない。(アジア系アメリカ人という)文化的英雄が少ない世界において、あなたの発言がどれだけインパクトがあるものなのか。いま一度考えてほしい」と厳しい言葉をつづった。

 父親への尊敬と愛を隠さず、同時に、白人男性が大きな優位性を持つハリウッドの権力勾配の問題を突き付けたシャノンの寄稿。クエンティンがどのように反応するのか、気になるところだ。