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小学生の学年別「算数のつまずき」対処法 学習支援専門家・澳塩渚さんインタビュー

ByAdmin

7月 7, 2021

 『ワークつき 子どものつまずきからわかる算数の教え方』(合同出版)は、子どもが算数を学ぶなかで起こる「つまずき」から、その子にあった学習法や指導法を紹介した、ユニークな一冊です。

 この本の著者である澳塩渚さんへのインタビュー前編では、算数を学ぶ土台となる「数理解」の重要性と、「くり返し学習」への偏重が子どもに与える悪影響について聞きしました。

 後編では、学年ごとに起こる「算数のつまずき」の原因とその解消法をお話しいただきました。

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澳塩渚(おきしお・なぎさ)
公認心理師、学習支援教室「まなびルームポラリス」主宰。大学在学中より適応指導教室にて不登校の児童生徒の学習サポートを行う。発達に偏りのある児童の家庭教師等を経て、放課後等デイサービスおよび児童発達支援事業所にて、学習支援、ソーシャルスキルトレーニング等を担当。子どもたちの言葉の力を育むことが学習やコミュニケーションの充実につながると考え、現在は静岡市にて作文読解、コミュニケーションのための学習支援教室「まなびルームポラリス」を主宰。発達に偏りのある子どもたちが自分自身を適切に表現し、自立していくため力の育成を目指し、様々な活動を行なっている。

小1のつまずき
――ここからは、小学校の学年ごとに起こる「算数のつまずき」についてお聞きします。まずは1年生ですが、つまずきが表れるのはいつ頃なのでしょうか。

1学期が終わる頃にたし算に入る学校が多いのですが、数理解がゆっくりの子は、ここでつまずくことが多いです。お話しした通り、「いち、に、さん」と口で言えても「1、2、3」と一致しているとは限りませんし、「このミカンは何個?」「3個」「じゃあ2個ちょうだい」「?」となることもあります。

またこの年代の子どもは、自分自身を俯瞰的に見る力があまり発達していないので、何がわかって何がわからないのかも自分で把握できていないことがほとんどです。なので「どこがわからないの?」と聞かれても答えようがないので、大人がよく観察し、理解できているところとできていないところを探っていく必要があります。

――小1の子どもに必要な数理解とは、具体的には何と何なのでしょうか?

数理解には大きくいって5つのステップがありますが、「目で見てわかる」ということから始まります。

澳塩渚著、平岩幹男編『ワークつき 子どものつまずきからわかる算数の教え方』(合同出版)より
「まとめる・わける」というのは同じ種類、形、色などで分類するということです。「黒いいちご5個」と「白いいちご4個」のどちらが多いかを、数を知らないうちは数えて比べることはできませんが、まとまりの大小でどちらが多いかを推測できることはできます。そこから目の前の数と数字を一致させ、「あわせて9個」と「合成」できるようになると、数字を理解した段階に入っているといえます。

また、数理解に直結していないようでも「前後」「上下」「左右」といった空間での位置や方向を認識できることも重要で、これらは数字と同じように人間が共同生活を営む上での必要から作り出された概念です。左右については大人でも混乱する人がいるくらい難しい概念なのですが、上下はかなり早くから認識することがわかっています。机の上よりも遊びのなかで、これらの概念に触れる機会が多ければ、数理解につながりやすくなっていくと考えられます。

――たし算のはじめで苦戦するようであれば、数理解や空間認識の部分でフォローしてあげれば、つまずきが解消される可能性があるのですね。

そうですね。数唱ができても数理解ができているとは限らないことに、とくに注意してあげてください。

小2のつまずき
――小2の算数はたし算の桁数も上がりますし、九九も始まります。

大人でも「1億個のリンゴ」をイメージすることが難しいように、生活経験が少ない年代の子が100を超える数をイメージするのは簡単ではありません。生活のなかで3桁の計算をする場面といえば、やはりお買い物です。コロナ禍でキャッスレス決済が一気に普及しましたが、硬貨や紙幣を使った買い物の経験をなるべく積ませてあげてほしいですね。生活や遊びと勉強をあまり切り離さないことが大切だと思います。

――九九はどうでしょうか。

九九は「音」で苦労する子が数多くいます。ことばの「音」を認識することを音韻認識というのですが、これがどのくらいできるかは個人差があります。

たとえば「うさぎ」は「う」「さ」「ぎ」と3つの音からなります。音の他に「耳が長い」「白い」という意味イメージと結びつくことで初めて単語として機能します。「言葉」というと意味の部分が大事だと思われがちですが、音も理解のために重要です。日本語はひらがなの1文字に対し一つの音が対応しているので、音を聞いて文字が浮かぶことと文字を見て音が浮かぶことが重要なんです。

日本語の場合、このような音韻認識ができるようになるのは4歳半頃からで、7歳前後で完成されると言われていますが、個人差があります。大人になっても、うまくメモが取れなかったり、聞き取りが苦手な人もいます。

数字の場合、4に「よん」と「し」、7に「なな」と「しち」、9に「きゅう」と「く」と2つの読みがあることなどからから、数字の音を聞いたときに正しい数字が浮かばず混乱するケースがあります。「しちしにじゅうはち(4×7=28)」だと、「しち・し」なのか「し・ちし」なのかで混乱が生じますし、「さざん【が】く」などのように【が】で分かれてもいないので、音韻認識のエラーが起こりやすいんです。7の段と9の段は数と音韻音のイメージのズレが大きく、覚えられない子どもは多いですね。

――音と数字の対応関係がなかなか一致しないのですね。

最近は読みがな付きの九九カードが増えていて、とてもよい傾向だと思います。それだけ苦労する子どもが多かったということですね。人によって覚えやすい方法は異なりますが、本のなかでもいくつかの方法を紹介しています。

小3のつまずき
――3年生になるとコンパスや分度器など、使ったことのない道具が増えますね。

この年代になると、体の動きを制御することがうまい子と、ゆっくり発達する子の差が出始めます。体育の内容も「楽しく体を動かす」の段階は終わっていますし、周囲と自分とを比較する視点も育ってくるので、ほかの子との差を意識し始める年代でもあります。なので、道具をうまく使えないことのストレスも大きくなりがちです。

――コンパスは高学年になっても苦労した覚えがありますが、中学以降であまり使った記憶がありません。

そうなんですよね。教師も保護者も「人並みに使えるようにならないと」と考えがちですが、最近は簡単に円が描けるように工夫されたコンパスや、滑り止めのついた定規や分度器も発売されていますので、ここでつまずくと図形の勉強そのものが苦痛になりかねないので、使いやすいものを選んでもいいのではないかと思います。

――図形の学習に入る前に、コンパスで円を重ねて図形を作ったりして、コンパスの練習をした覚えがあります。

苦手な子は、円を描くことがまずできないんですよね。先生に「自由に絵を描いてみましょう」と言われて、鉛筆のように握って絵を描いたところ、「ちゃんと丸を描きなさい」と注意されて傷ついてしまう子どもも多いです。先生としては遊びのなかで使い方を覚えてほしいのですが、子どもからするとそもそも遊びになっていなくて、この段階で苦痛になってしまうんですよね。

――苦手意識さえなければ、ある程度の不器用さは体や神経の発達で解消されそうな気がしますが、早い段階で苦手だと思うとその克服はなかなか難しそうですね。

「今やっていることが楽しい」とか、「自分でもできる」という感覚がないと、なかなかその先に進めなくなってしまうので、やはり最初のハードルはぐっと下げてもいいんじゃないかと思います。

――ほかに、3年生の算数といえば分数が登場します。小数の基礎もこの学年ですね。

それまでは「1、2、3」と整数で表現される「分離量」だけだったのが、0と1、1と2の間に無限に数がある「連続量」が扱われるようになります。ところがどうも、この「無限」が納得できない、イメージできないようです。ふだんの生活のなかで、「1.25個のリンゴ」を扱うことはほとんどないので、生活イメージと対応させにくいのだと思います。

分数については、カステラを切るのが一番イメージしやすいでしょう。私にはきょうだいがいたので、定規をあてて切ったりしました(笑)。「1本」のカステラが、食べる人数によって4つに分かれたり、5つに分かれるという体験は、分数のイメージにはうってつけです。

――小数はどうすればいいでしょうか。

ゲーム感覚で、生活の中の「隠れ小数」を探すことをおすすめしています。たとえば350mlの缶は0.35ℓですし、500mℓペットボトルなら0.5ℓと、小数にすることができます。身長が130cmなら1.3mと、毎日接するもののなかに意外と小数は隠れていますし、単位換算のトレーニングにもなります。ペットボトルは一番わかりやすいですね。

澳塩渚著、平岩幹男編『ワークつき 子どものつまずきからわかる算数の教え方』(合同出版)より
――ややこしいのは「mℓ(ミリリットル)」と「dℓ(デシリットル)」の混在です。それぞれ1000と10で1ℓにくり上がるというのは、どうしても混乱します。

「デシ」はややこしいですね。私も子どもに教える時は、必ず換算表をそばに置いています。体積に換算する場合でも、1㎖なら1㎤なのでわかりやすいのですが、1㎗をパッと体積に換算できる人は多くないのではと思います。中学以降では専門職でないとデシを使う機会はほとんどなくなるので、㎖とℓに統一してもいいのでは思うのですが。

ℓと㎗、㎖の換算は、やはりペットボトルなど暮らしに馴染みのあるものを使って覚えるのが近道でしょう。

小4~6のつまずき
――小学校高学年の算数になると、親が気軽に「教えてあげるから見せてごらん」と言える内容ではなくなってきます(笑)。

3年生までで四則計算は一通り習い、4年では大きな数の計算をすることになります。算数の基礎編といえる内容は4年までですので、ここまでのつまずきは解消しておけるといいですね。

――では5~6年でつまずいた場合は……

1~4年のどこかに原因があると考えられ、たいていは3~4年のどちらか、計算の手順であるとか、基本的な図形の知識に習得できていないところがあります。逆に言えば、5~6年のつまずきは原因を突き止めやすく、1~4年のどこかに戻ればいい、ともいえます。

――通信教材やタブレット学習などだと、前の学年の単元にすぐには戻りにくいように思うのですが。

「戻り学習」のしやすさでは、たとえば「スタディサプリ」 は小4~高3までの授業映像が見られるようになっているので、戻ってつまずきを解消したい場合や、逆に自分の興味でどんどん進んでいきたい子どもには向いているかも知れません。

また、個人の使用であれば無料の「eboard」は、やはり小中学校の教科と高校の数学Ⅰまで授業動画と教材が見られるようになっているので、小1~3のつまずき解消には使いやすいと思います。

通信教材の利点は、どの単元もコンパクトに設計されていて、集中力を持続させる仕掛けが工夫されていることですね。今の子どもはさまざまな活動でとても忙しいので、負担を小さくする意味でもサクッとできることはメリットです。

――提出課題など、親としてはノルマの達成度がどうしても気になりますが、授業でわからなかったところの補強や、逆に興味でどんどん進んでいきたい子に自由に使わせるなど、全部こなすことにあまりこだわらなくてもいいのかも知れませんね。

そうですね。教科書に載っていない問題や解説に触れられるだけでも大きな意味がありますから、ノルマや課題にこだわりすぎずに気軽に活用することをおすすめします。

サポートの活用
――子どもの勉強で苦手や遅れが生じた場合、学習塾や家庭教師の活用を考える保護者は多いと思うのですが、向き・不向きの判断はなかなか難しいものがあります。また、つまずきの原因にしっかりアプローチしてくれるかどうかも不安ですね。

そうですね。児童精神科医の吉川徹先生が、Eテレの「発達障害って何だろう」という番組で、「『できる』と『できない』の間に『できるけど疲れる』ことがたくさんある」とおっしゃっていたのがとても印象に残っているのですが、勉強についても「できる」と「できない」の間に「できるけど大変」がたくさんあるのだと思います。学習障害や発達障害といった診断は出ていなくても、何か大きなつまずきを抱えている子どもが支援のはざまに落ちてしまっていて、「できるけど大変」に苦しんでいる可能性があります。

ある調査で不登校傾向にある中学生にその理由を尋ねたところ、「疲れる」「起きられない」といった身体的症状以外の要因では、学業に関する理由がかなり大きなウエートを占めていることがわかりました。

日本財団「不登校傾向にある子どもの実態調査」2018年より

日本財団「不登校傾向にある子どもの実態調査」2018年より
――いじめなど人間関係も大きな理由ですが、それ以上に学業から不登校になる生徒も多いのですね。

勉強のつまずきが少し大きいと思ったら、どんどんサポートを活用してほしいと思います。自治体の総合教育センターでは相談は無料ですし、診断結果に関わらず、何らかの対処法は必ず教えてくれますから気軽につながってほしいですね。

――親としては「これくらいのつまずきはどの子どもでもよくあること」と思いたくなってしまいますし、実際に「よくあるつまずき」なのだとしても、学校の先生や親以外の視線が入ることでわかることはありそうです。

理解や認知への道筋は人それぞれで、得意や苦手も大きく異なり、専門家でないとサポートが難しい領域がたくさんあります。サポートなしで「支援のはざま」に放置されてしまうことは、その子にとっても親にとっても辛いことです。困りごとがあった時だけごく短期のサポートを受けるということでも構いませんし、小さなつまずきが積み重なって大きなものにならないように、どんどん人の手を借りてほしいと思います。

『ワークつき 子どものつまずきからわかる 算数の教え方』(合同出版)
イベント案内
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赤ちゃんが「数」を理解するまで

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