2020年、新型コロナウイルスに立ち向かい奮闘する医療関係者や、パンデミックの影響で生活に苦しむ人々を支援するために、数多くのセレブが寄付をして大きな話題になった。ケタ違いの寄付金を出すセレブたちに対して、「イメージアップや節税対策になるから」と意地悪い目で見る人もいるが、純粋に「助けになりたい」「世の中を変えたい」と思い、チャリティや慈善活動をしているケースがほとんど。自分の知名度や人気、築き上げた富をうまく利用して、社会貢献している若いセレブもたくさんいるのだ。今回はそんな彼らのチャリティ事情を、5人のセレブたちの慈善活動を通して見てみよう。
近年、米R&B界のトップランナーに君臨しているザ・ウィークエンド。今年2月には、人気、実力共にトップでないとオファーされないスーパーボウルのハーフタイムショーでパフォーマンスを行い、世界中を魅了した。
3月にグラミー賞の人種差別を指摘した上で、「永久ボイコット」を表明して話題になったが、彼は黒人差別撲滅のために何年も前から声を上げてきた。16年に黒人男性2人が警察官に射殺された時には、「うんざりだ。立ち上がる時が来た。傍観するか、行動を起こすか。今、決断する時が来た」とツイートし、「Black Lives Matter」運動を率いる団体に25万ドル(約2,700万円)を寄付。運動拡散に一役買った。
20年6月には、自身のインスタグラムで、人種平等を推奨する「Black Lives Matter Global Network」、投獄された人々を救援する「National Bail Out」、人種差別に抗議するため国歌斉唱時に片膝をつく行為を始めたNFL選手コリン・キャパニックが創設した団体「Know Your Rights Camp」に計50万ドル(約5,500万円)を寄付したことを公表。「余裕のある人はできるだけ、余裕のない人は少額でもいいから、みんな可能な範囲で寄付をしてほしい」と呼びかけた。同じく6月、コロナで職を失った音楽業界の人たちを救済する団体と、ウィークエンドが育ったカナダ・オンタリオ州の病院関係者をサポートする団体に計100万ドル(約1億1,000万円)を寄付した。
また8月には、レバノンの首都ベイルートの爆発事故で被害を受けた人たちを救済するために「Global Aid in Lebanon」に30万ドル(約3,300万円)を寄付。同月、TikTokで開催されたバーチャルライブと、併せて限定販売されたグッズの収益35万ドル(約3,800万円)を、弱者への基本的人権保障に取り組むNPO団体「Equal Justice Initiative」に寄付し、大きな話題となった。
2020年、TikTokで大流行した曲「Savage」でブレイクし、「濡れた女性器」を意味するカーディ・Bとの過激なコラボ曲「WAP」も大きな話題となったミーガン・ジー・スタリオン。彼女は出身地テキサス州ヒューストンや女性へのチャリティ活動にとても熱心。今もテキサス・サザン大学で学んでおり、奨学金をサポートする活動も積極的に行っている。
20年4月にビヨンセとコラボしたリミックス版「Savage」のすべての収益は、2人の出身地であるヒューストンの新型コロナウイルス対策に使ってほしいと、貧困者や高齢者らに食料提供などをしている災害救援組織に寄付。ヒューストンの貧困者を助ける活動はブレイク前から行っており、19年11月の感謝祭にはターキー(七面鳥)の丸焼きを提供するために1万5,400ドル(約170万円)をフードバンクに寄付している。
10月には、有色人種の女学生のために奨学金「Don’t Stop Scholarship Fund」を設立。21年3月8日の国際女性デーには、ブランド「ファッション・ノバ」とタッグを組み、女子学生や女性起業家を支援する複数のチャリティ団体に総額100万ドル(約1億1,000万円)を支援することを発表した。
同じ3月にジョージア州アトランタでアジア系女性8人が犠牲となった銃撃事件が発生した時も、「ファッション・ノバ」とタッグを組み、米南東部のアジア系アメリカ人の人権向上活動をしているNGO団体「Advancing Justice Atlanta」に5万ドル(約550万円)を寄付。いち早く「みんなで団結し、アジア系コミュニティに対する差別や暴力を撲滅しよう」とインスタグラムで呼びかけた。
今年6月には、レコードレーベル「ロックネーション」がロングアイランド大学と協力して設立した「Roc Nation School of Music, Sports & Entertainment」で学ぶ学生のため、ミーガンが「4年間の全学費をカバーする奨学金を提供したい」と発表。若き慈善家として、多くの尊敬を集めた。
甘い歌声と整った顔立ちで、やさしげな青年という印象が強いショーン・メンデス。しかし、コンサートでは、「僕が使う『ユース(youth=若さ)』という言葉は、若いという意味ではない。自由な気持ち、幸せな気持ちという意味で使っている。わかる? ここにいるみんなが世界を変える力を持つ人たちなんだよ」と呼びかけるなど、世界をポジティブに変えたいという強い姿勢を貫いてきた。
キャリア初期からメンタルヘルスの大切さを口にしてきたショーンは、2014年にNPO団体「DoSomething.org」と組み、自己肯定力の低さから自傷行為をしてしまう若者たちにポジティブなメッセージを送る「ノーツ・フロム・ショーン」キャンペーンを開始。16年には、筆記具メーカー「Paper Mate」とタッグを組み、互いを励ます言葉を紙に書いてSNSに投稿しようと呼びかける「#SpreadJoy」活動を行った。
またDV被害者の救済のため、自身の曲「Treat You Better」のミュージックビデオの最後に、全米家庭内暴力相談窓口の連絡先を流すことも。
15年には発展途上国の教育活動をしているNGO団体「Pencils of Promise」と組んでオンライン募金活動を行い、ガーナ共和国に学校を建設する寄付金を集めた。
19年8月に満を持して慈善活動団体「ザ・ショーン・メンデス財団」を設立し、出身国カナダ・トロントにある小児患者を支援する団体「SickKids」や、環境保護団体などへの寄付を行うように。昨年も、コロナウイルス患者へのサポートをしてほしいと、「SickKids」に17万5,000ドル(約1,900万円)を寄付した。
「#MeToo」「Black Lives Matter」運動の流れに乗じて、セレブたちの過去の差別的な言動が掘り起こされ、出演や作品の「キャンセル」を求めるキャンセルカルチャーが続いている。無神経で無知なセレブはキャンセルされるべきだが、心から反省し謝罪するセレブにはチャンスを与えるべきという声も多く、また一方で、「キャンセルカルチャーがエンタテインメントをつまらなくする」と批判する大御所コメディアンもいる。
カルト的人気を誇るドラマ『フリークス学園』(90~00)や、映画『40歳の童貞男』(05)など数多くのコメディ作品に出演し、北朝鮮の金正恩総書記の暗殺計画を描いたブラックコメディ映画『ザ・インタビュー』(14)を監督して、物議を醸したセス・ローゲン。彼は今年5月、キャンセルカルチャーについて「差別的で古い(価値観に基づくジョーク)ことを言ったのなら、何らかの方法や形で責任を取るべき」と発言。「不謹慎スレスレのジョークばかり言う人だと思っていたが、こんなに人間性が高かったなんて」「ポリコレ意識の高い人だ」と評価された。
セスは、11年に結婚した女優のローレン・ミラーの母親が初期のアルツハイマー病と診断されたことを受けて、12年にNPO団体「Hilarity for Charity」を設立。笑いを通してアルツハイマー病患者とその家族へのサポート、支援を行っている。18年に仲間のコメディアンを集めて行った、同団体主催のチャリティーショーは大盛り上がりし、6万9,000ドル(約760万円)の寄付金を集めた。このショーは現在Netflixで配信中だ。
人権問題にも関心を寄せているようで、セスは、昨年ジョージ・フロイド事件(※)に抗議するデモ隊参加者が次々と逮捕された際、保釈金の支援をしたNGO団体「Minnesota Freedom Fund」にいち早く寄付した。
※黒人男性ジョージ・フロイドが白人警察官に逮捕される際、組み伏せられ、膝で首を押さえつけられ死亡した事件
2000年にインド代表としてミス・ワールドコンテストに優勝。その後、女優に転身して大成功を収めたプリヤンカー・チョープラー。両親共に医師で経済的に恵まれた家庭に育った彼女は、祖国インドのために慈善活動も行っており、キャリアをスタートして間もなく「Priyanka Chopra Foundation for Health and Education」を設立。収入の10%をこの団体に寄付し、女子の教育と医療ケアの普及、女性の人権、ジェンダー平等のために力を尽くしている。
16年にはユニセフ親善大使に任命。インドの自然公園にいるトラとライオンの飼育費を拠出し、臓器提供を広めるため「自分の死後、臓器提供をする」と表明。ムンバイにある病院にガン病棟を建てるため7万ドル(約770万円)を寄付するなど、幅広い分野で慈善活動をしている。
19年には、ユニセフを通して恵まれない子どもたちにクロックス5万足を寄付。20年3月、新型コロナウイルスの世界的パンデミックを受け、夫ニック・ジョナスと共に10のチャリティ団体に寄付をし、10月には貧困地域の子どもたちに栄養価の高い食事を提供する「FEED」キャンペーンに参加。ホリデーシーズンに向け、寄付を呼びかけた。
今年に入り、インドで変異ウイルスが拡大し深刻化すると、「プリヤンカー・チョープラー・ジョナス基金」はチャリティ団体「Give India」とタッグを組み、医療援助目的で募金活動を開始。5月に寄付金が100万ドル(約1億1,000万円)に達したことを報告している。