■産婦人科医・宋美玄先生の妊娠・出産Q&A
Q.つわりがひどいんですが、何かできることはないでしょうか?
A.すっきり解消する方法はないので、食べられるものを食べましょう。
妊娠時のトラブルは、よく「病気じゃないんだから」「頑張ればなんとかなる」などと言われますが、どうにもできなくてしんどいことが多いもの。つわりも、すっきり解消する方法がなく、非常につらいことのひとつです。
つわりとは、妊娠初期に起こる吐き気や嘔吐、食欲不振のこと。少し気持ち悪いくらいの人から、入院が必要になる人まで症状の幅が広く、若い妊婦さんのほうが重い傾向があるようです。たまに妊娠後期に気持ち悪くなることを「後期づわり」と呼ぶ人がいますが、医学用語ではなく、また原因が全く違います。(後期の場合の多くは、大きくなった子宮に内臓が圧迫されて気持ち悪くなるのだと考えられます)
このつわりが起こる妊娠初期は、赤ちゃんの内臓が作られる大事な時期。だから、「バランスよく食事をとりましょう」「気持ちが悪くても頑張って食べるように」などと言われがちです。しかし、妊娠中はただでさえ精神的に不安定になりやすく、また他のトラブルもあったりして疲れがちなので、「バランスよく食べなきゃ」「きちんと食べなきゃ」などと無理をしすぎないようにしましょう。ただ、栄養は必要なので、何も食べないよりもずっといいと割り切って、食べられるものを食べてください。
つわりのとき、一般的には水分が少ないものをよく噛んで食べると吐きづらいようです。そのほかファストフードなら大丈夫、麺類なら気持ち悪くなりにくいなど、それぞれに食べやすいものが違うと思いますので、探してみてください。私も妊娠中、つわりに悩まされましたが、麺類なら食べやすかったです。もともと好きな肉類がダメになり、魚なら食べられました。つわりの時期は味覚が変わってしまうのも、よくあることですね。また、食べづわり(食べないと気持ちが悪くなるタイプのつわり)というほどではなかったですが、お腹が減りすぎると気持ち悪くなったので、こまめにアイスやジュースを少量食べていました。どうしても何も食べられない場合は、アメやガム、スポーツドリンクなどで、水分と糖分を補給するといいですね。
こうした工夫をしてみてもつらい場合は、我慢しないでかかりつけの産婦人科で相談しましょう。吐き気止めを処方したり、脱水やビタミンB1不足に陥る危険性があるため点滴をしたりする場合があります。
なお、つわりのときは、歯を磨くのがつらいものですが、きちんと磨いておかないと、あとで虫歯や歯周病になってしまいます。気持ち悪くなりにくい食後30分以上経ってからでもよいので、なるべく磨きましょう。難しいときは、マウスウオッシュだけでも構いません。
つわりは、すっきり解消する方法がないのがつらいところですが、ピークは8〜10週頃で、その後はだんだんよくなり、13週頃には収まるといわれています。それまで、なるべく食べるようにしながら、なんとかやり過ごしましょう。
<今回のポイント>
○食べられるものを食べる
○水分が少ないものが食べやすい
○よく噛むと吐きにくくなる
○13週頃には収まることが多い
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