ネットを中心にダイエットにまつわる情報があふれ、雑誌や広告を飾るのは“モデル体型”の人ばかり。いわゆる“痩せ信仰”が根強い一方、「ありのままの自分を愛して受け入れる」“ボディポジティブ”という考え方が注目されています。
コミックエッセイ『自分サイズでいこう 私なりのボディポジティブ』(KADOKAWA)の著書でイラストレーターのharaさんは、過激なダイエットや摂食障害を経験した上で、ボディポジティブになれたそう。今回はharaさんがボディポジティブになれたきっかけや、ありのままの自分を受け入れるためにできることを語ってもらいました。
hara イラストレーター・漫画家
ありのままの自分の体を受け入れ、愛する「ボディポジティブ」という考え方に感銘を受け、プラスサイズ・ボディポジティブな女の子を描き、発信を行う。Twitterアカウント:@hara_atsume
ーー体型にコンプレックスを感じていた頃は「自分はおしゃれしちゃダメなんだ」と思っていたそうですが、そう思うきっかけは何だったのでしょうか?
小さい頃に見たドラマや映画、漫画の登場人物はみんな痩せている人ばかりで、自分と同じような体型でおしゃれをしている人を目にする機会がなかったんです。バラエティなどでは太った芸人さんが出ていることもありましたが、体型を誇張するような演出があったり、他の出演者からバカにされたりしていたので、それを見ているうちに「太っている自分はバカにされる側なんだ」と刷り込まれたような感覚がありました。
太った女性芸人さんがテレビでいじられているのを見て「体型にコンプレックスがある人は笑われるしか生きる道がないんじゃないか?」と極端に考えてしまう時期もあったくらい。それで、かわいい服を着ることに抵抗を覚えるようになりました。
ーー中学時代に半年で20キロものダイエットに成功し、高校時代に摂食障害に転じ、20キロ増加。摂食障害を患っていた時期もあったとのことですが、当時のharaさんはどんな状況でしたか?
ダイエット中は食べることが怖くて、いちいちカロリーを確認しないと食べられない状態で、生理が止まったり冷え症になったりしていました。でも、その頃は「自分は頑張ってダイエットしたんだ!」という気持ちしかなく、ツライとも思いませんでした。その後、「痩せすぎ」と言われるようになったので、少し体重を戻そうとしたんですが、食べてもすぐに体重が増えなかったことから食欲に歯止めが効かなくなり、短期間で体重が増加してしまいました。
摂食障害の時は「普通に食事をとる」ことがどういうことなのかもわからなくなり、食事をする度に弱い自分に負けている気分で。当時は摂食障害はメンタル面が関係しているとは知らなかったので、「意思が弱いせいだ」と自分を責めてばかりでしたね。
ーーそんな経験をした後、“ボディポジティブ”でいられるようになったのはなぜなのでしょうか?
高校から大学までは摂食障害で食事とうまく付き合えず、自分に自信がなかったんですが、大学卒業後に偶然、書店でプラスサイズ女性専門のファッション誌「la farfa(ラ・ファーファ)」(文友舎)を見つけたことが転機でした。自分に似た体型のおしゃれなモデルさんたちが誌面に出ているのを見て「こんな世界あったんだ!」と衝撃を受けました。そこから徐々に「自分もおしゃれしていい」と思えるようになり、食事もきちんととれるようになったんです。
ーーとはいえ、まだまだ“痩せ信仰”は根強いですよね。そんな中でも “ボディポジティブ”について発信しようと思ったのはどうしてですか?
私が『la farfa』に出会って摂食障害から回復できたのが今から3年前なんですが、その頃は海外では“ボディポジティブ”という考え方が少しずつ認知されていた一方、日本ではほとんど知られていなかったんです。「この考え方は絶対もっと広まったほうがいい。そのために自分にできることがないか」と思ったことからエッセイを描き始めました。
エッセイをきっかけに、私の知り合いにも「痩せすぎで太れないことがコンプレックス」「感覚過敏で着られる洋服が限られている」という悩みを持っている人が少なくないことがわかり、体型やファッションの悩みは本当に人それぞれだと実感しました。
ーー最後に、他人からの身勝手なジャッジを気にせず、ありのままの自分を受け入れるための考え方などがあれば教えてください。
私も以前はそうだったのですが、ネットなどで「太っている人はダイエットをするべき」「太っている人はおしゃれしちゃダメ」といった声を目にすると、それが世の中全体の意見と思ってしまいがちです。でも、実際それは一部でしかなく、もっと色々な考え方があります。
最近では、SNSなどでさまざまな体型の人が自分ならではのおしゃれを発信しているので、自分と似た体型の人のコーディネートを見て「いいな」と思えたら、自分を受け入れるための第一歩になるんじゃないでしょうか。世の中は他人基準の情報が多いですが、それを自分基準に変えるところからチャレンジするのもいいかもしれません。
『自分サイズでいこう 私なりのボディポジティブ』より
『自分サイズでいこう 私なりのボディポジティブ』より
『自分サイズでいこう 私なりのボディポジティブ』より
『自分サイズでいこう 私なりのボディポジティブ』より
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