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大ブレーク芸人・ヒコロヒーは“やさぐれキャラ”だけど……「売れても変わらない」を求める、真面目な“人間性”に思うコト

羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。

<今週の有名人>
「スターになっていくにつれて、ちょっとだけ、こう、アレだなと思う人も多い中……」ヒコロヒー
『ロンドンハーツ』(テレビ朝日系、8月3日)

 売れた芸能人が「たまたま売れた」と自己分析することがある。「運やタイミングが味方してくれた」という意味を含んでいるのだろうが、同業者から見れば、やはり「売れる人は売れるべくして売れた」と思うのではないだろうか。

 8月3日放送の『ロンドンハーツ』(テレビ朝日系)で「もしも新しくコンビを結成するのならあの女芸人と組みたい!」として、6人の女芸人が新しい相方を、ドラフト形式で1~3位まで指名する企画が行われた。多くの女芸人が「組みたい」と名前を挙げたのは、阿佐ヶ谷姉妹・渡辺江里子とヒコロヒー。2人とも、今をときめく売れっ子であることは説明するまでもないが、女芸人たちがお笑いの能力や性格的な相性、今後の展望まで冷静に考えて指名していたのは興味深かった。

 渡辺はお笑いの能力はもちろん、妊婦だった横澤夏子の体調を気遣ったり、先に現場を出る時に手紙を残していったりと、普段の優しさや心遣いを高く評価する声が多かった。対するヒコロヒーは、借金や遅刻癖がほかの番組でもよく話題になる。しかし、こういう“悪癖”があるにもかかわらず、多くの女芸人が「一緒に組みたい」と名前を挙げるということは、そこを差し引いても芸人として、人として魅力的なのだろう。

 確かに、同番組での発言を見ていると、“やさぐれキャラ”で売っているわりには気遣いというか、相手を立てるタイプだと感じる。たとえば、ゆりやんレトリィバァはヒコロヒーと組みたい理由として、「何言っても怒らない感じがいい」「自分をどう扱うのか」などと自分中心で話すのに対し、ヒコロヒーは組みたい相手のいいところを紹介して、自分の話はほとんどしなかった。

 もちろん、“いい人”なだけではない。番組内で、ヒコロヒーは3位に選ばれることが多かったため、「3番目の女って、誕生日プレゼントで写真入れもらいがち」と自虐をした。さらに、3時のヒロイン・福田真紀に関しては「つぼみという吉本の安いアイドル、大阪の面白いアイドルを目指していた点がやや信用できない」と毒も吐いてみせた。

 その一方で、わりと繊細というか、「売れて変わる」人に対して“潔癖”なのかなと思う部分もある。ヒコロヒーは平野ノラを2位に選んでいたが、彼女がバブルネタで大ブレークしている最中、仕事で一緒になることが多かったそう。その際、「私みたいな人間って、そういう時期に人がどういう対応をするのかって、ちょっと見させていただいてる部分がある」「平野ノラさんはどれだけ忙しくても、すごく丁寧」と話していた。要は、売れているからといって、横柄な態度を取る人が気に入らないということだろう。

 ヒコロヒーはメイプル超合金・安藤なつを1位に選び、その理由も「スターになっていくにつれて、ちょっとだけ、こう、アレだなと思う人も多い中、なつさんは今でも変わらない」と話していたから、「売れても変わらない」はヒコロヒーにとって、大事なポイントなのかもしれない。

 ここで思い出すのは、元おニャン子クラブで女優の国生さゆりが『HEY!HEY!HEY!』(フジテレビ系)で「売れていた時代」を振り返ったときのエピソードだ。

 「バレンタイン・キッス」(1986年)のレコードが30万枚売れたことで、周囲の扱いが変わり、天狗になっていったという国生。遅刻しても謝らない、ドラマ撮影なのにセリフは覚えていかない、ウエスタンブーツを履くための椅子を用意しなかったスタッフに向かってブーツを投げるなど、あの愛らしい笑顔からは想像もつかない天狗ぶりだったそうだ。こういう人とコンビを組むと仕事がスムーズに進まないし、ストレスが溜まることは想像に難くないが、一方で「売れても変わるな」というのも、なかなか難しい注文だと思う。なぜなら、人は変化する生き物だと思うからだ。

 人は環境によって作られる部分があるので、周囲が変われば物の見方や感じ方も変わってくるし、求めるものも違ってくるのではないか。学生時代の女友達が結婚や出産をすると、独身者とは話が合わなくなるという経験をした人は多いと思うが、まさにこれが典型。どちらが悪いというわけでもなく、環境が変われば興味も変わり、共通の話題が減るということだろう。

 ヒコロヒーも自分では気づかないだけで、ブレーク前と比べたら、変わっている部分はあるはずだ。彼女は『女芸人No.1決定戦 THE W』(日本テレビ系)にて、4年連続で準決勝進出を果たしている。今ほどテレビに出ていない時代であれば「準決勝まで進んですごい!」と思えただろうが、今は売れているからこそ、なんらかの大会のタイトルを獲得して、さらに活躍したいと思うのが、芸人というものではないか。

 ヒコロヒーがさらなる高みを目指すなら、歴代の受賞者や先輩からアドバイスを受けて、精進する必要があるだろう。そうすると、おのずと興味の対象や、付き合う人も変わっていくと思う。昔の仲間からは「変わった」「売れたら付き合いが悪くなった」と言われるかもしれないが、そもそも、変わり続けなくては生き残れないのが芸能界、もしくはお笑いの世界なのではないだろうか。

 「売れて天狗になる」というのはみっともいいものではないが、「周囲の扱いが変わる」のは、人気がある時だけだ。国生はある日突然人気がなくなり、スタッフに対する態度が良くなかったこともあって、10年間、仕事が低迷して苦しんだと言っていた。結局、そういう態度は本人に返ってくると考えるなら、「売れても変わらない」ことより、「さらに売れるために変わる」ことが大事だと思うのだ。

 ひと昔前、女芸人は見た目やモテないネタで笑いを取っていたが、これは視聴者が女芸人を一段下に見ていた証拠といえるだろう。しかし、今や女芸人はバラエティー番組だけでなく、ドラマや文筆の世界にも活動の場を広げ、「国民の女友達」的な存在にシフトしてきたと感じる。

 こうなると、女芸人に求められるのは“人間性”ではないだろうか。「売れても変わらない」ことを良しとするヒコロヒーの真面目さ、潔癖さは女性ウケすると思うが、一歩間違うと「義理人情に縛られて小さくまとまってしまう」「他人からストレスをもらって、自分が疲れてしまう」可能性もあるだろう。生真面目や潔癖もほどほどに、さらに突き進んでいただきたいものだ。