• Fri. Sep 24th, 2021

料理研究家だって、料理はつらかった!? 賢人が明かす「飽きずにラクに」続けていくための台所術がすごい

時短、カンタン、ヘルシー、がっつり……世のレシピ本もいろいろ。今注目したい食の本を、フードライター白央篤司が毎月1冊選んで、料理を実践しつつご紹介!

今月の1冊:『料理がしんどいあなたへ ラクしておいしい台所術』

 今回紹介する本は、7人の料理研究家の考えをまとめたもの。まずメンバーを紹介したい。

瀬尾幸子
小田真規子
武蔵裕子
脇雅世
石原洋子
渡辺麻紀
前田量子

 の各氏である(登場順)。多くの料理編集者から長年信頼を集める、そうそうたる面々だ。彼女たちによる「日々の料理を効率よく省力していくには、こうするといいよ」的アドバイスが詰まった本なのである。

 帯には「賢い手抜き法」とあるが、手抜きというよりも、毎日続く家庭料理をどう合理的に考えるか、無理や無駄をどう省いてシンプルにしていくか、といったそれぞれの哲学が、とても分かりやすくまとめられている。

 料理が面倒な人に向けられた本だが、年齢を重ねて体力や気力が落ちてしまい、キッチンに立つのがつらくなってきたシニア世代へのアドバイスが豊富に含まれるのも本書の特徴だ。

 料理研究家とは基本的に皆、かなりの食いしん坊である。当然、料理が大好きだ。そんな人たちも年齢と共に量は食べられなくなり、嗜好も変わる。重たい鍋や食器はつらくなる。そんなもろもろの変化にどう対処・対応してきたか。それぞれのシーンで得た様々な知恵が語られていく。

 トップバッターの瀬尾幸子さんの言葉では、「飽きないごはんとは、繰り返し作れるもの」というのがまず響いた。材料がいろいろ必要なものは、結局作らなくなってしまうことが多いと。凝った料理は「作るのにも食べるのにも体力がいる」だから家庭料理には向かない、という喝破。

 そう、繰り返し作れるもの、無理なく作れるものこそが家庭料理だ。家庭料理というのは家の数だけその形があるけれど、「担い手にとって無理にならない料理」ということだけが共通項じゃないだろうか。日々の自炊は連続するもの。飽きずにラクに続けていくためには、「その人が作りやすいもの」を主体にするしかない。冒頭に瀬尾さんの言葉を持ってきた構成は正しいと思う。

 続いての小田真規子さんは、栄養面から使い勝手までを総合的に評価した「パフォーマンスがいい食材」を選ぼうという提案をされる。「栄養価・調理のラクさ・見栄え・買い物のラクさ・日持ち」の5項目から、小田さんがすすめる食材や活用法が紹介される。具体的な指標がほしい人にありがたい内容だろう。中でも油と水で蒸し煮にする調理法は私も毎週のように実践している。素材の味がしっかり感じられつつラクなので、おすすめ。

 高齢の親御さんの料理を作り続けてきた武蔵裕子さんは、大事なこととして食材を「やわらかくすること」を挙げている。これは、本当に大事なこと。高齢になる前から知っておいてほしい。歯が弱ってくるのは意外と早いから。

 実際にシニア年代にさしかかる前に、食に関することで人間はどう弱っていくのか、どう対応ケアしていけばいいのかを予習すると、大きな「転ばぬ先の杖」になると思う。料理の賢人たちによる「私はこんなふうに体の変化に対応した」というエピソードの数々は、知っておいて損はない。

 各氏の印象的な言葉を紹介していったらキリがない。石原洋子さんの和食の基本の味つけ、そして薄いときは「均等に増やす」という考え方には唸った。渡辺麻紀さんのすすめる「半調理の作りおき」は、同様のことを瀬尾さんもすすめており、私も同意見。食材を味つけせず加熱して保存しておくことだが、いろいろな料理にすぐ加えられて便利だし、なんならポン酢でもかけてそのまま食べられる。

 管理栄養士でもある前田量子さんの具体的な「栄養バランスのいい食べ方」は大変分かりやすく具体的。栄養意識があり、「自分を整える」ことに興味のある人なら引き込まれると思う。前田さんは電子レンジの活用も提案されており、火を使いたくない派が増えている現在強く求められるものだと感じる。

 料理において何を便利でラクと感じるかは人それぞれ。「これならできそう」「試してみたい!」 と思えるアドバイスが何かしらきっとあるはずだ。

白央篤司(はくおう・あつし)
フードライター。郷土料理やローカルフードを取材しつつ、 料理に苦手意識を持っている人やがんばりすぎる人に向けて、 より気軽に身近に楽しめるレシピや料理法を紹介。著書に『自炊力』『にっぽんのおにぎり』『ジャパめし』など。