• Fri. Sep 24th, 2021

未成年“大量万引き”グループに警察官も激怒! 抵抗する少年、泣き叫ぶ少女……とんだ真夏の大冒険

 こんにちは、保安員の澄江です。

 新型コロナウイルス蔓延防止に基づく緊急事態宣言が、範囲を広げる形で、またしても延長されました。高齢者枠に入るため、すでに2度のワクチン接種は終えておりますが、デルタ株に対する警戒は怠れず、不安の尽きない日々を過ごしています。つい先日には、いつもよくしてくださる某食品スーパーのマネジャーさんがコロナに感染。ひとり身のため、限界まで我慢されたのでしょう。自宅療養中に救急車を呼ばれたそうですが、病院到着時には重篤な状態に陥られて、ICUに入院されたものの回復することなく亡くなられたと聞きました。退院後まもなく荼毘に付され、葬儀の予定もないそうです。享年、56歳。

 身近にいる方がコロナに感染した事実はもちろん、ついこないだまで元気に店内を闊歩していた方の命がいとも簡単に奪われた現実が恐ろしく、明日は我が身と感染対策を徹底して現場に臨んでいます。

 今回は、そうしたこととは無縁で、ひどく迷惑な若者たちについてお話ししたいと思います。

 当日の現場は、関東近県の住宅街に位置する総合スーパーS。広大な敷地に、衣料品店や百円ショップ、ドラッグストア、レストランなど、多数のテナントが集まる商業施設にある大型店舗です。この日の業務は、午前11時から19時まで。出勤の挨拶のため、バックヤードから事務所に入ると、どことなくよゐこの濱口優さんに似た店長さんが応対してくださいました。

「本日は、よろしくお願いいたします。なにか注意することはございますか?」
「万引きも相変わらず多いけど、最近、駐車場に若い子たちがたむろして困っているんだよね。みんな顎かけのマスクでしゃべって、タバコ吸って、そこら中につばを吐いたりするからクレームがきちゃってさ」
「このご時世に、迷惑な話ですね」
「うん。夕方になると集まり始めるから、店に入ってきたら注意してみてください」

 業務開始まもなく、素麺とミョウガをバッグに隠して盗んだ80代女性を捕まえて警察に引き渡し、微罪処分の事務処理をしていると担当の警察官が言いました。

「最近、この辺の若い子、ちょっと危ないから注意してくださいね。特殊詐欺やひったくりも多いし、薬物やっているのも多いから」

 そんなギャングのようなグループの人たちに万引きされても、私ひとりで太刀打ちできるわけないので、それとなく相手の状況を探ってみます。

「そうなんですか。なんでも駐車場がたまり場みたいになっているらしくて、注意するように言われたんですけど……。万引きも、やっていそうですか?」
「あまり聞かないけど、やっていても不思議じゃないですね。なにかあれば、遠慮なく通報してください」

 そのまま軽く昼食をすませて現場に戻り、巡回を再開するも気になるような不審者の来店はありません。夕方のピークを迎えても状況は変わらず、息抜きを兼ねて屋外に設置されたトイレに向かうと、排気音がうるさいスクーターに乗った2組のカップルが駐車場内に入ってきました。見たところ10代後半くらいでしょうか。自転車用の駐輪場に乱雑な形でバイクを停めると、すぐ脇にある休憩スペースのベンチを陣取って、一斉にタバコを吸い始めます。全員が同時にタバコをふかしているため、喫煙所と見紛うほどですが、この場所は禁煙で灰皿の設置はありません。駐車場を仕切る警備員も、彼らの存在に気付いてはいるものの、入場してくる車に向けて赤棒を振ることで見て見ぬふりをしているようです。

(あれが、うわさの人たちね。店の中に入ってこなければいいけど……)

 見ていても仕方ないので、手早く用を済ませて、それとなく各々の顔を覚えてから店に戻ります。近頃は、若い子たちの間で、昭和のスタイルが流行っているのでしょうか。渡哲也さんのようなサングラスをかけた短髪の男の子たちと、露出の激しい金髪の女の子たちの姿をみて、どこか懐かしい気持ちになりました。
 店に戻り、品出しをしていた店長に状況報告をすると、もし彼らが入ってきたら目を離さず、何かあったらすぐに知らせるようあらためて指示されます。

「ウチの副店(副店長)は空手の黒帯だし、鮮魚部長も学生相撲をやっていた人だから大丈夫。あんな奴らに、負けないですよ」

 どうにか理由をつけて排除したいらしく、有事の際は、腕っ節の強い男性社員と駆けつけるつもりでいるようです。業務終了まで、あと2時間半。なにもないことを祈りながら店内の巡回を再開すると、願い届かず、2組のカップルが店に入ってきました。肩を揺らして、威嚇するように先導する男の子たちの態度と、女の子の肩にある大きめのトートバッグが気になります。スマホで店長に連絡を入れながら様子を見ていると、花火売場で足を止めた一同は、手元を見られないように固まって、複数の花火セット(噴出と手持ちのセット)をトートバッグに隠しました。

 それから通路上に設置されたカゴを手にとり、どこかわざとらしくじゃれ合いながら食品売場に入った4人は、精肉コーナーで焼肉やステーキ用の和牛肉、ソーセージやブロックベーコンなど、値の張る商品ばかりをカゴの中に投げ入れ、続いて向かった酒コーナーで、缶チューハイやつまみなどの商品をカゴに追加して売場を離れます。彼らの位置だけを把握するように注視していると、男たちが手ぶらで店の外に出ていくのが見えました。何をするのか気になりますが、女たちが持つ未精算の商品から目を離すわけにはいきません。悶々とした気持ちで見守っていたところ、店長と合流することができたので、ひととおりの状況を説明しながら未精算の商品を見守ります。

「きっとカゴダッシュで持っていくつもりですよ。警察にも通報しておいたほうがいいかもしれませんね」
「わかりました。とりあえず出口を固めます」

 店内無線を使って外の様子を確認するよう副店長に指示した店長は、続いて鮮魚部長も呼び出して出入口付近で待機しておくよう命じました。するとまもなく、外に出た男たちがバイクを入口前に移動させているとの報告が入って、状況が一気に緊迫します。

 外に出た男たちが店内に戻り、待機していた女たちと合流してカゴを拾い上げると、つかず離れずの距離を保って全員が出口に向かって歩き始めました。店長とふたり、遠巻きにして後を追うと、出口前のベンチで足を止めて周囲を警戒しています。まもなく走り出す雰囲気を感じたため、なるべく急いで間合いを詰めたところ、案の定、外に向かって一斉に走り出しました。慌てて追いかけると、外に出たところで、副店長と鮮魚部長と思しき2人がバイクにまたがろうとする男たちと揉み合っています。揉み合い現場のかたわらで立ち尽くす女たちに近づき、それとなくトートバッグの持ち手を掴んだ私は、少し距離を取るよう2人を誘導してから用件を告げました。

「お店の保安員です。お姉さんたち、なんでこうなっているか、わかりますよね?」
「……はい、ごめんなさい」
「あの子たちは、あなたたちの彼氏かな? 暴れないように説得できる?」

 すでに数人の野次馬が、騒ぎに気付いて足を止め、大声を出して暴れる彼らに目を向けています。私の問いかけに顔を見合わせた2人は、すでに泣いていますが、目で会話してうなずき合うと、身をねじって暴れる男たちに近付いて言いました。

「ねえ、お願い。もうやめて!」
「……わかったよ。ごめん」

 冷静さを取り戻して、まるでスイッチが切り替わったようにおとなしくなった男たちに、改めて用件を告げます。

「このカゴに入っているもの全部、お金払っていないでしょう? 間違いないわよね?」
「うん。すんません」

 すぐに認めてくれたので、出入口に横付けされたバイクを駐輪場に停めさせて事務所に向かおうとしたところ、屋根に赤灯をつけた覆面パトカ―が駐車場に入ってきました。状況を話すと、彼らに免許証を提示させた警察官は、その場で犯歴とバイクのナンバー照会を行います。照会中、もうひとりの警察官がスクーターのシート下を捜索すると、人数分の水着やビーチサンダルが値札のついたまま出てきたほか、真新しい練炭やミニガスコンロなど、盗品と思しき商品が見つかりました。

「なんだお前ら、キャンプにでも行くつもりか?」
「川でバーベキューしたかったから……」

 所轄に送るにも複数台の車が必要なので、バックヤードにある従業員用の休憩室で待機しつつ、諸々の処理を進めます。報告書作成のため、身分確認を進めると、彼らは17歳から18歳。被害合計は、自店の被害だけで1万7千円ほどになりましたが、全員が1,000円程度ずつしか所持しておらず被害品を買い取ることはできません。すると、彼らの所持品検査をしていた厳しめの警察官が、出てきたタバコを片手に言いました。

「おまえら、タバコ持っていたらダメじゃんかよ。これ、没収な」

 すかさずに店長が、顧客から苦情が来ている話を持ち出すと、警察官はものすごい形相で怒鳴りつけます。

「おまえら、ここの人たちに、どれだけ迷惑かけてんだよ。吐いた唾、あとで掃除しにこいよな。吸い殻も拾って帰れ。このバカたれが」
「いや、緊急事態宣言が発令されていますし、それは大丈夫です」

 今後は、施設内に立ち入らない旨の誓約書を書かせたうえで被害申告する運びとなり、被疑者たちとは別便のパトカーで所轄警察署に向かいます。未成年者だからと、私より先に被疑者たちが帰宅する不条理に耐え、全ての手続きを終えたのは午後11時過ぎ。ようやくに解放の時を迎えて少年課の取調室を出ると、隣の取調室には、ひとり取り残されてガラウケ(身元引受人)を待つ少年の姿がありました。ニヤニヤした目で、品定めするように見られて、とても怖かったです。

(文=澄江、監修=伊東ゆう)