今や日常生活において、かかせないツールとなっているコミュニケーションアプリ「LINE」。かつては子どもの送迎時に、ママたちが立ち話をしているような光景が見かけられたが、時間に追われ忙しく過ごす共働き世帯が増えた今、ママたちのコミュニケーションの場は、LINEのグループチャットになっているという。そんな、ママたちの「グループチャット」から浮き彫りになった、彼女たちの悩みや、苦悩、気になる話題を覗いてみる。
きょうだいを持つママの場合、それぞれのママ友との間でグループチャットを作成し、情報交換を行っている人も多いだろう。さらに、学校の役員ごとや子どもが通う塾や習い事先など、常に複数のLINEグループに参加している人は、通知が鳴りやまないこともあるのでは? あまりに身近な連絡ツールとなったため、中には学校の先生や、習い事先の先生ともLINEのIDを交換することもあるようだ。今回は、“先生との距離感”について悩んでいるという女性のエピソードを紹介する。
息子が通う空手教室の先生と連絡先を交換。“連絡網”だと思って既読スルーした結果……
首都圏に住む沙織さん(仮名・32歳)は、6歳になる息子を持つママだ。幼稚園児の息子は、空手を習っているという。
「息子が通う空手教室は、幼稚園に教えに来ていたことがある先生が開いています。幼稚園でのレッスンは1年間だけでしただが、その後、息子が興味を持ったので、仲が良い男の子と土曜日に教室へ通うようになりました」
教室の主催者である先生と生徒の保護者たちは、LINEのグループチャットを使ってレッスンの休校や、欠席などの情報を共有していた。沙織さんは、先生やほかのママたちとLINEを交換することにためらいを感じたが、連絡手段のひとつとしてグループチャットに参加したという。そこでのやりとりは、先生から保護者への連絡が主だそうだ。
「緊急事態宣言中は、レッスンが休講になってしまうことも多く、イレギュラーなスケジュールだったため、グループチャットには先生から頻繁にメッセージ送られてきました。グループ宛てだったので、特に私から返信はしないでいたところ、空手教室のママ友から『沙織さんは返信をしないから、先生が心配していたよ』ってメッセージが来たんです」
どうやら、沙織さんにメッセージを送ってきたママは、先生と直接LINEでやりとりをしていた様子。沙織さんは、「グループチャットはあくまで“連絡網”だと思っていたので、先生に直接はメッセージを送らないようにしていました。でも、中には『子どもがもっと家で練習をしたい』という相談など、こまめに先生に相談しているママもいたようです」と語る。
グループチャットのメッセージに返信しなかったことに対して、先生から直接何か言われたことはなかったため、ママ友から間接的に指摘されたことに違和感を抱いたそうだ。
「先生は私の連絡先を知っているんだし、何かあれば直接言ってくれたらいいのになってモヤモヤしました。私のように、グループチャットで全員宛てと思われるメッセージには返信をしていなかったママ友に、注意されたことを相談したんです。すると、そのママ友は、先生に直接メッセージを送っていたことが判明。『返事が全くないと、読まれているか不安だって先生が言っていた』と教えてくれました」
都市部では、先生と保護者のLINEを含む連絡先の交換は禁止されているケースも多い。そのため、沙織さんもこうした問題は、自分には起きないと思っていたという。
「私の地元は東北地方の田舎で、生徒数が少ない地域のため、友人から『先生と連絡先を交換した』という話は聞いたことがありました。先生とどんなやりとりをしているかなど、『ほかの保護者から探りを入れられてウザい』との愚痴も聞いていたので、私も必要最低限のことだけ連絡をしようと注意をしていたのですが、まさか『返信がない』ことで周りから注意されるとは想定外でした」
沙織さんいわく「小学校に入学すると、さらに連絡先の交換の機会が増えるのが不安」だそうだ。
「小学生の子どもを持つママ友から中は、役員の連絡事項の共有のため、担任の先生と連絡先を交換している人もいると聞きました。新型コロナウイルス感染拡大の影響で学校公開なども中止になっていることもあり、先生と話をする場も減っているため、密に連絡を取っているママ友は『優遇されているみたいでずるい』と周りに言われたりもするそうです」
コロナ禍の今、子どもがどのように学校生活を送っているのか知る機会が減ったことで不安を抱え、先生たちに相談の連絡をしたいと考えるママが多いのかもしれない。
「私は、普段から家族以外とはあまりLINEでやりとりをしていません。そのため、空手教室の先生にメッセージを送ると迷惑になるかなと思っていました。でも、先生の中には保護者と連絡を取ることで、生徒とのコミュニケーションを円滑にしたい人もいると知りました。ママ友たちが先生と連絡が取りたいという気持ちも、もちろんわかります。でも、自分ばかりが質問するのも図々しいかなって気が引けるんです。メッセージだと気軽に送れてしまう分、悩みますね」
沙織さんは、「これまでLINEはプライベートな連絡手段だったのが、ママ友や先生間でもどんどん広がりをみせているため、どう使っていくべきか迷うっている」という。
「一緒に空手教室に通わせている幼稚園のママ友とは、LINE以外でも頻繁に話ができるので、お互いどう思ってメッセージを送ったかも確認がしやすい。でも、週1回や月に数回しか会わない空手教室の先生やママ友とのやりとりは、相手がどう思っているかすぐに確認ができないので、『習い事があった日の夜』というように、LINEを送るタイミングを決めようかと思いました」
その便利さから、生活になくてはならない存在となったLINE。使い方について明確なルールがない分、連絡をする頻度や相手に対してどういう内容を送っていいのか迷ってしまう人も多いだろう。お互いの負担になったり、嫌な気持ちにならないよう、周りとも相談して使いこなしていきたいものだ。