• 日. 12月 22nd, 2024

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映画『ハニーレモンソーダ』主演のSnow Man・ラウールに「一抹の不安」……大ヒットの裏で賛否が分かれるワケ

 少女漫画雑誌「りぼん」(集英社)で2016年2月号から連載中の『ハニーレモンソーダ』(村田真優)の実写映画が7月9日に全国公開された。

 本作は、とある高校を舞台に、中学時代にいじめられていたマジメ女子と、クールで人気者な金髪男子が織りなす“胸キュン”青春ラブストーリー。髪はレモン色、基本的には塩対応でソーダのようにさっぱりとした性格ながら、実は誰よりも優しい“レモンソーダ男子”の主人公・三浦界を、ジャニーズグループSnow Manのラウールが演じている。また、界に出会い少しずつ変わっていく“原石系女子”のヒロイン・石森羽花を吉川愛、2人をとりまく共演者には、堀田真由、濱田龍臣、坂東龍汰、岡本夏美ら人気実力ともに兼ね備えた若手俳優たちが集結した。

 監督を務めるのは、山本美月とHey! Say! JUMP・伊野尾慧が主演した『ピーチガール』(17)、King&Prince・平野紫耀の映画初主演作『honey』(18)など、高校生の青春ラブストーリー×ジャニーズタレントの起用に定評のある神徳幸治氏。KAT-TUN・亀梨和也と土屋太鳳が年の差カップルを演じた『PとJK』(17)、THE RAMPAGE from EXILE TRIBEの吉野北人や神尾楓珠ら注目のイケメンたちが出演する『私がモテてどうすんだ』(20)を手掛けた脚本家・吉川菜美氏とのタッグで、青春の甘酸っぱさや葛藤の中に主人公たちの成長を感じ取れる作品を作り上げている。

原作ファンとSnow Manファンのレビュー濃淡、実際の内容やいかに!

 原作は、累計発行部数700万部を突破した人気作だけに、実写映画化および主要キャストが発表された際、「三浦界は実写不可能」「原作の世界観が壊れる」「好きな漫画でも実写化してほしいかどうかは別」と、ネット上には原作ファンからの反対意見が散見された。

 一方で、Snow Manファンはラウールの映画初単独主演作ということもあり、今回の大抜擢について「漫画もラウールも好きなのでうれしい」「原作読んで予習する」など盛り上がりを見せていた。

 公開前から対照的な反応をみせていた両ファン陣営だが、実際のところ気になる映画の内容はどうなのだろうか。個人的には過去、ジャニーズ若手俳優×原作漫画(青春ラブストーリー)の実写映画を数々手がけてきた神徳監督が指揮をとるということだったので、原作をいい具合にリアルに落とし込んで割と良い映画になるのでは……? と思いつつ、演技未知数であるラウールの実力はいかがかしら……? と期待を胸にいざゆかん映画館! 今回は前評判を踏まえつつ、原作ファンでもSnow Manファンでもない筆者がフラットに感想を述べたいと思う。

 意外や意外、作品自体は突飛な展開があるものの、ヒロインである羽化の変わっていこうと努力する過程が学校生活を通じて丁寧に描かれており、青春ラブストーリーというよりも一少女の成長ストーリーとして、また、三浦界はじめ他キャラクターの成長物語としては非常によい構成になっていた。

 とはいえ、少女漫画原作にある“キュン成分”を誇張するための少し無理のある強引な流れや、登場人物のスピーディーな心情の移り変わりは観客を置いてきぼりにすることもしばしば……。各個人の内面と向き合う演技は悪くなかったものの、いざスクリーン前の観客を意識したキュンシーンになると途端に安っぽくなる演技には、やや表現自体が飽和状態であることは否めない印象を受けた。これ、単発の瞬間風速の映画化ではなく、同じ製作陣とキャストでの連続ドラマだったら、細かい心情シーンもより描くことができてちょっと良いドラマになってたんじゃない……?

気になるラウールの演技力は……

 「今後に期待!!」の一言だろうか……。ラウールのぎこちない演技を支える周囲の若手俳優陣の演技が輝くことで、「あれ? この子たち高校生だっけ? 20代では……?」と、役年齢とのミスマッチを覚えるシーンも所どころあり、原作の世界観が崩れていると感じる原作ファンも少なくなかったのでは。筆者は演技の巧拙はこういった原作少女漫画実写映画には割と不要だと思っている派ではあるが、今後ジャニーズを牽引していくSnow Manのセンター・ラウールともなれば、その存在感に見合う演技力も身につけてほしいところ。

 しかしながら、作品の核心部分である「胸キュン」「爽やかさ120%青春ラブストーリー」に必要不可欠なスクリーン越しに観客を殺しにくるルックス、醸し出す甘い雰囲気はさすが。演技経験の少なさを有り余るフレッシュさでカバーし、実年齢と役年齢の近いラウールの、今を生きる刹那のみずみずしさがスクリーンを通して伝わってきたように感じる。これを機にステップアップし、たくさんの演技経験を積んで、さらなる飛躍に期待したい!

 と、ここまで映画の感想およびラウールの演技についての感想を述べてきたが、その全てを忘れさせるくらい劇場で衝撃だったのが、Snow Manファンの鑑賞の仕方である。

 あれ? ここは応援上映会場でしたっけ……? と錯覚するほど、ラウールのキスシーン間際になると急激に上がる劇場の温度。小声で高ぶるボルテージを抑えられないラウールファンの女性たち。キスシーンが流れると、視界の片隅でハイタッチをする女性たちや、コロンビアポーズ(テレビ朝日のご長寿クイズ番組『パネルクイズ アタック25』で回答者が正解した時のアレ)をする女性、肩を震わせ涙を流す女性……。

 か、感情の宝石箱や〜〜〜!!! なんだここは……! カオス空間……!

 各々が全身全霊をかけて“推しごと”している様を目の当たりにし、齢18にしてここまでの人々を虜にするラウール、恐ろしい子……! と一抹の不安を覚えた。

 後日SNSで映画の感想をみかける機会があったが、半分は純粋な感想で、半分は鑑賞マナーに衝撃を受けたという内容が多かった。原作ファンや純粋な映画ファンからしたら、さぞかし衝撃的な光景だったことだろう。

 今回『ハニーレモンソーダ』を鑑賞して得た気づきは、「推しの名誉を守るため、そして今後の活動に悪影響を与えないためにも、せめて劇場内では、高ぶる感情は理性で抑えるべき」という点。ちょっとした心がけが、より質の高いジャニーズ実写化作品が生まれるきっかけになるかもしれない。

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