羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。
<今週の有名人>
「これからはいい記事を書いていただけるように……」華原朋美
YouTubeチャンネル「華原朋美」結婚会見生配信、8月17日
どういうわけか精神的に不安定な人というのはいて、そんな人はネットの世界で「メンヘラ」と呼ばれている。仕事や家庭の問題を気に病む場合もあるだろうが、メンヘラの“本領”がいかんなく発揮されるのは恋愛だろう。
付き合い始めた当初は「人生最高のパートナー」「運命の出会い」とのろけているが、その関係は長く続かず、相手にしつこくつきまとって嫌われるが、そんなことはお構いなしに、ストーカーのように待ち伏せしたりもする。しかし、それも忘れてまたすぐ別の人に恋をして、また揉めて……の繰り返し。私の友人にそういうタイプのメンヘラがいて、オトコを待ち伏せして車で軽くひかれたり、ミートソースを投げつけられたりしていた。
そんな友人をなんとか助けたいと思って、「オトコに依存してはいけない」とか「メンヘラを治そう」と提案したこともある。なぜそんなことを言ったのかというと、私の根底に「メンヘラはよくない」という考えがあったからだ。
しかし、今はそうは思わない。周囲を見回して考えてみると、いつもメンタルの調子が絶好調という人のほうが少数派だろうし、メンヘラのようにわかりやすい行動に出なくても、恋愛やその他のことでメンタルを削られてバランスを崩している「隠れメンヘラ」はいくらでもいる。となると、問題はメンヘラかどうかではなく、「いいメンヘラ」「悪いメンヘラ」のどちらに属するかではないだろうか。「いいメンヘラ」なら、それはある種の才能だから、伸ばしたほうがいいというのが私の考えだ。
私の考える「いいメンヘラ」の条件は、体力があること、仕事を続けられる(辞めない)ことの2つである。たとえば、私の友人はオトコと揉めると「眠れない」「食べられない」と騒いでいて、実際に激やせしたりもしていたが、会社に行けないわけではない。
これで本当に倒れてしまったり、仕事ができなくなって辞めざるを得ないなら、周囲は直ちに介入する必要があると思う。これが私の考える悪いメンヘラだ。しかし、仕事をこなして体調を崩さずにやっているのなら、それは一種の“趣味”ととらえていいのではないか。
「穏やかな恋愛をしたい」というのが口癖の彼女だったが、その一方で「平凡はつまらない。オトコと揉めている時に生きていると感じる」と漏らしたことがある。ということは、彼女はオトコと揉めたくて揉めているわけだから、「かわいそうな人」ではなく、案外幸福なのではないかと思うのだ(もちろん、相手には同情する)。
芸能人にも、友人と似た「幸せそうなメンヘラ」がいる。歌手の華原朋美だ。天才プロデューサー・小室哲哉に見いだされたシンデレラガールにして、90年代を代表するトップアーティストだが、人気絶頂時から精神的に不安定なイメージもあったと記憶している。
小室との交際が順調な時も歌番組で奇声を発したり、質問に答えずにずっと笑っているなど、カメラの前で“奇行”を繰り広げたこともあったが、時代の寵児に愛されていることもあって、それすらも「かわいい」と言われていた。しかし、小室と破局したことで、彼女はながーい暗黒時代を経験することになる。
若い女性が恋人に突然別れを告げられたら、メンタルの調子を崩してもおかしくないが、華原の場合、小室と別れることで仕事や収入、アーティストとしてのポジションを一気に失ってしまう。薬物の大量摂取や精神科病棟への入院などが報じられたこともあったが、彼女を待ってくれるファンもいて、時間はかかったが芸能界にも復帰した。これこそが彼女の強さ、スゴさだろう。
結婚をせずに40代後半で出産したことが話題になったが、産後の肥立ちが悪いという話も、初めての子育てに煮詰まって、子どもを虐待してしまったという話も聞かない。不安定であることは間違いないが、ギリギリの線はちゃんと守って芸能活動を続けている。これは彼女が「いいメンヘラ」だからではないだろうか。
その華原が、先日結婚を発表した。相手は所属事務所の社長だという。精神的に不安定になりがちな人なので、常に彼女のそばに誰かいてくれることは、華原はもちろん、小さなお子さんにとってもいいことだろう。結婚がいつまで続くかはわからないが、それは誰でも同じだから、その時はその時だ。
そう思いながら、華原の結婚会見を見終わってあることに気づいた。会見での服装が、引退した歌手・安室奈美恵さんがTRFのSAMと結婚した際に着ていたものとよく似ているのだ。
これは単なる偶然かもしれないが、もし意図的に安室さんと同じ衣装をチョイスしたのなら、その理由は何なのか。
安室さんと華原は、かつて小室がプロデュースする“小室ファミリー”の一員だった。しかし、2017年6月にバラエティ番組『じっくり聞いタロウ〜スター近況(秘)報告』(テレビ東京系)で華原は、「誰が“ファミリー”って言ったんだろうと思って。誰一人、ファミリーなんて思ってないです」と話していた。「やっぱり、1位取りたいって気持ちがすごい」「TKのプロデュースだと、みんなそう思ってるんで。だから、みんな敵なんです」とも語っていて、ファミリーよりも“ライバル”のような関係性だと言いたいようだった。
華原本人は結婚会見で「これからはいい記事を書いていただけるように」と話しているが、仮に安室さんの真似をしていたとして、結婚会見というおめでたい場で、彼女に固執しているかのような行動を取ったら、「粘着行動が怖い」などと言われかねないだろう。
夫は誤解を招くような行動をどうして放っておくのか、それとも注目を集めるための作戦なのか、はたまた全く気づいていないのか。私の友人が「穏やかな恋がしたい」と言いつつ、「オトコと揉めていると生きていると感じる」と話していたように、華原自身にも穏便にコトが進むことに対する抵抗があって、問題を起こしてしまうのか……。
このように、気づいたら、華原について考えさせられてしまう。この人はやっぱり「いいメンヘラ」で、生き様で大衆を魅了するザ・芸能人といえるのではないか。結婚しても離婚しても、彼女は芸能界で生き続けられる気がしてならない。