さる8月21日、22日に放送された『24時間テレビ 愛は地球を救う』(日本テレビ系)で行われたチャリティー企画「復興への想いをつなぐ募金リレー」。福島県楢葉町にある復興の象徴「Jヴィレッジ」の敷地内、約100キロのコースを10人のランナーが24時間リレー方式で走るという内容だった。この放送を見たテレビ関係者は「マラソン企画はもう潮時を迎えている」とシビアに分析する。
第1走を務めたメインパーソナリティーのKing&Prince・岸優太を皮切りに、リレーでタスキをつないでいった「募金リレー」。続く走者には、東京五輪・卓球混合ダブルスで金メダル、男子団体で銅メダルを獲得した水谷隼、同じく五輪レスリング女子で史上初の姉妹で金メダルを獲得した川井梨紗子・川井友香子、五輪バスケットボール女子で銀メダルを獲得した林咲希といったメダリストのほか、フィギュアスケート・荒川静香、ラグビー・五郎丸歩、体操・田中理恵、サッカー・丸山桂里奈、ボクシング・長谷川穂積と、人気のアスリートが集結した。
「ランナーのラストに登場したのはTOKIO・城島茂。2014年には、同番組で101キロのチャリティーマラソンに挑戦しています。このときは放送終了ギリギリに日本武道館にゴールインし、瞬間世帯最高視聴率41.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)を記録。なお、メインパーソナリティーは関ジャニ∞で、番組全体の平均視聴率は17.3%でした」(芸能ライター)
今回の募金リレーにおける城島のゴールシーンも、番組最高視聴率を記録。世帯23.4%(個人16.0%)と結果を残しているが、7年前と比べておよそ20%も激減している。
「今回の『24時間テレビ』全体の平均視聴率は世帯12.0%(個人7.0%)。これまで44回あった番組放送史上29位タイ、個人は関東で計測が始まった1997年以降の25回中、歴代22位とかなり低い。これは、チャリティーリレーへの注目が低かったことも起因していると思われます。毎年、数字が盛り上がるのはチャリティーマラソンの企画と決まっていて、全体的な平均視聴率も上げていましたからね」(同)
マラソン企画の転機は19年の『24時間テレビ』。ハリセンボン・近藤春菜、ガンバレルーヤ・よしこ、水卜麻美アナ、いとうあさこの4人がタスキをつないで合計148.78kmを走る「24時間駅伝」が実施された。24時間を1人で走り続けるという、それまでのコンセプトが変更されたのだ。
「近年は、“無理しない”“つらかったら頑張らなくてもいい”という風潮が強くなっていて、SNSでも『苦しいだけなのに、なんで走らせるんだ』『24時間も走らせる意味がわからない』という声が多くなっていました。『24時間駅伝』は、そんな批判に対する一つの対策だったのでしょう。ところが、翌年の20年はコロナ禍によって公道を走ることが困難に。代替企画として行われたのが、日産自動車追浜工場の構内を利用した『24時間募金ラン』でした」(放送作家)
工場の敷地内、1周5キロを走るたびに10万円をランナー自らが募金する「24時間募金ラン」。企画の発起人は元マラソン選手の高橋尚子で、3日前にランナーの打診を受けたという柔道家・松本薫は、「なんか募金するって説明受けたんですけど、難しくてあまり聞いてなくて。わからなかったので走りました」とインタビューで答えている。ランナーとして走るだけでなく、募金しなければいけないというコンセプトは、参加者だけでなく視聴者の混乱も招いた。
そして、その翌年となった今年は、東日本大震災から10年を迎えたことから「復興」を打ち出し、ランナーが被災地への思いを胸に走る企画を行った。
「今回は、ジャニーズの岸と城島以外は全員アスリートという顔ぶれ。これも、『普段マラソンとは無縁の芸能人を無理やり走らせるなんて……』という世間からの批判に対する策なんです。職業柄、アスリートは一般人に比べれば走るのは苦ではないでしょう。ただ、それだと今度は盛り上がりに欠けた。苦しむ様子もなく、同じ場所をぐるぐる走ってるだけの映像ですから、面白みがなかった」(同)
批判を防御しながら四苦八苦続けてきた、この数年。来年のマラソン企画は、「コロナ次第ですが、公道でのマラソンが再開されるかもしれない。芸能人を立てることも案の一つに浮上するでしょう。しかし、それはそれで叩かれる。どのみち、マラソン企画が八方ふさがりで、ジレンマに陥っていることは間違いないでしょう」(同)。
『24時間テレビ』第15回の1992年、間寛平から始まったチャリティマラソン。来年2022年に行われれば30周年を迎えるが、果たしてどうなるのだろうか?
(村上春虎)