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King&Prince・平野紫耀の「演技力」を現役演技講師が解説! 主演作続くも……あえて“脇役”を押すワケとは?

 コロナ禍の今年も、例年通り放送された『24時間テレビ』(日本テレビ系/8月21日~22日放送)。恒例の目玉企画といえば、チャリティーマラソン以外に番組内で放送されるスペシャルドラマがお馴染みだが、1997年の堂本光一主演『勇気ということ』以降、ほぼジャニーズ俳優が主演を務めてきた。

 そして今年は、King&Prince・平野紫耀が主演を務める学園ドラマ『生徒が人生をやり直せる学校』を放送。原作は黒川祥子氏によるルポルタージュ『県立!再チャレンジ高校 生徒が人生をやり直せる学校』(講談社)で、“底辺校”と呼ばれる槙尾高校を舞台に、教師たち(平野、浜辺美波ほか)が、生徒(なにわ男子・道枝駿佑、桜田ひより、板垣李光人ほか)が抱えるさまざまな問題を解決しようと奮闘する、実話をもとにした物語だ。

 平野といえば、2014年1月期放送の深夜ドラマ『SHARK』(同)でドラマ初主演を務め、昨年6月期にSexy Zone・中島健人とダブル主演を務めた『未満警察 ミッドナイトランナー』(同)でプライム帯の連ドラ主演に抜てきされた。19年公開の主演映画『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』は興行収入22.4億円のヒットを記録し、King&Princeの中でも“主役を張る”メンバーとして活躍が期待されている。

 そんな俳優としても好調な平野だが、その演技をプロはどう見るのか。現在、「エイベックス・アーティストアカデミー」のシアター総合コースディレクターとして演技講師も務める演出家で俳優の秋草瑠衣子氏に、『生徒が人生をやり直せる学校』を見てもらい、気になる4つのシーンをピックアップしてもらった。

気になるシーン1:痛々しいシーンが「うまい」

 問題を抱える生徒たちに心を開いてもらおうと手あたり次第に声をかけるも、「ウザイ」とまったく相手にされない新任体育教師・樹山蒼一(平野)。体育の授業に参加せず座り込んでいる乃木翔(板垣)に「一緒に汗を流そう!」と声をかけていると、突然飛んできたバスケットボールが直撃し、よろけて得点盤に額をぶつけ、「あああ」と悶絶する。

秋草氏 “バスケットボールが頭に当たる”“得点盤に頭を打つ”のほかにも、“玄関の棚に頭を打つ”“公園のベンチに弁慶の泣き所を打つ”……など、ドラマの前半では痛々しいシーンが何度も出てきましたが、平野さんは体の「どこ」に、「どれほどの強さ」で、「どんな固さ」のものが当たったのかが、うまく表現できています。

 平野さんは動いて遊ぶことが好きで、ケガが多い子ども時代を過ごした……という話をどこかで聞いたような気がするのですが、そういった実際の経験がリアクションの演技をする上で役にたっているのではないでしょうか。また、“リアクションがうまい”ことの理由として、コメディタッチの映画の主演経験や、バラエティ番組への出演なども大きく影響していると思います。

 派手なリアクションができる役者は表現の幅が広がるので、とても良いことだと思います。今後はコメディタッチではなく、渋みのある落ち着いた役を平野さんが演じたら、どんなお芝居をされるのかも拝見してみたいですね。

 生徒が希望の職種でバイトしながら技術を学び、就職に繋げるための「インバイト・プロジェクト」を立ち上げた槙尾高校。槙尾市の“地域活性親睦会”で登壇した樹山は、「子どもは親を選べない。だけど、貧困から抜け出す道は選べる」「彼らに、未来への希望を与えてください」と訴え、同プロジェクトのためには地元企業の協力が必要だと呼びかける。

秋草氏 1分半ほどある長台詞を、ノーカットで平野さんだけカメラに抜かれる……という役者としてはかなり緊張するシーンだったと思います。話し始めは、声のトーンも抑え気味で落ち着いた感じから入り、会場にいる大人一人ひとりの顔を見ながら説得。後半では真っすぐ前を向き、自分の実体験から感じた気持ちを語尾を強めて語りながらも、表情は柔らかくすることで、切実に訴えている様子が伝わってきます。カメラの向こうの視聴者にドラマのテーマを伝えようとしている、平野さん自身の思いも伝わってきますね。

 ドラマ冒頭の“始業式での新任のあいさつ”の場面では、猫背だし、目線はキョロキョロしているし、語尾は弱いし……と、自信のない情けない教師という印象でしたが、これと比べると、同じ登壇シーンでも樹山の成長ぶりがはっきりとうかがえます。

気になるシーン3:間を使った表情の動きがわかりやすい

 樹山の訴えにより、「インバイト・プロジェクト」が軌道に乗り始める槙尾高校。これまで反抗的な態度を示していた乃木から「俺、シェフになるわ」「ありがとね!」と初めて感謝を伝えられた樹山は、瞬時に瞳を潤ませ、「おう!」と返し、最後は笑顔を見せる。

秋草氏 教師としてのこの上ない“やりがい”や“幸せ”を感じながらの「おう!」という短い台詞が、とてもよく演技できていたと思います。台詞までにきちんと“間(ま)”を作り、表情が変化していく……平野さんは目、鼻、口のパーツが大きく、表情の動きがわかりやすいので、“間”を使って確実に心が動いていることが伝わってきます。

 心が動いてから「おう!」と発語し、その後にフッと力の抜けた笑顔を見せることで、乃木との関係性がとても柔らかくなったことも表現できています。

 赴任してから3年目の春を迎えた樹山。ドラマのエンディングでは、社会に巣立っていった生徒らと再会しながら、「生徒から学んだこと」に思いをめぐらせる。

秋草氏 樹山がさらに教師らしく、自信を持って過ごしている描写ですが、赴任した時よりも、表情も含めて良い意味で全身の力が抜け、穏やかになっている演技をされていました。「険しい表情で教師としての威厳を出す」のではなく、「穏やかな表情で余裕を出す」ことで、生活の充実と教師としての成長を表現しているのではないかと思います。これまで生徒役だった平野さんが、初めての教師役でここまできちんと“教師としての成長”を演じることができたことは、今後の役者としての活動においても自信に繋がるのではないでしょうか。

 また、今回は、ほかの教師陣を演じる名俳優の先輩方が、かなりの強度で脇を固めていたので、平野さんも演技の勉強をしながら安心して主演することができたと思います。さらに、“素晴らしい教師の先輩方に囲まれている樹山”と、“素晴らしい俳優の先輩方に囲まれている平野さん”という環境が似ていたので、自然と“がんばる後輩教師”らしさも出ていたように感じます。「視聴者が応援したくなる主人公」になれるかどうかは、ドラマを成功させる上でとても重要なことなので、平野さんはその点がとてもクリアでした。

秋草氏 平野さんは顔のパーツの一つひとつがはっきりしているので、表情の変化がわかりやすいのですが、そのご自分の表情の特徴を自覚して、うまく使えていると思いました。前回、解説させていただいた岸(優太)さんは“目力や瞳の奥のお芝居”で、今回の平野さんは“顔力”とでも言いましょうか(笑)。

 加えて、平野さんの表現は、“肩から胸の辺り”もよく使われている印象があります。緊張した時に肩が硬くなり“いかり肩”に見えたり、力が抜けた時などは肩の力が抜けて“なで肩”に見えたり、情けないシーンの時は思いきり“猫背”になるなど、表情だけではなく上半身を使った表現が多いように思います。

 また、ご自身のグループでセンターを務められていることもありますが、“○○レンジャー”に平野さんが出演するとしたら「レッド以外考えられない」と言い切れるほど「主演」に向いている方だと思います。だからこそ、今後も主演ではない平野さんを見てみたい気はします。主演以外を演じることで、さらに平野さんの表現力が無敵化するのではないかと思っています(笑)。今後の俳優活動でのご活躍も、期待しております。