• Sat. Sep 18th, 2021

ムショ帰りを受け入れる人は少ない――元女囚が考える「元受刑者」と向き合う難しさ

 覚醒剤の使用や密売などで逮捕起訴され、通算12年を塀の中で過ごした後、その経験を基にさまざまな活動を続ける中野瑠美さんが、女子刑務所の実態を語る「知られざる女子刑務所ライフ」シリーズ。

刑務所職員のコロナ感染が増えている

 コロナ、ぜんぜん収まりませんね。

 特に、ムショはもともと「密」やのに、メイケイ(名古屋刑務所)は職員の「120人自宅待機」がニュースになってましたね。「居酒屋で会食したり、県外の温泉へ職員同士で出掛けたりしていたことが判明。症状が出た後に勤務を続けた職員もいた」そうです。

 ちゅうか「編集部調べ」やと、最近の感染はみんな職員ですよ。懲役(受刑者)の感染者が一番多かったのは今年の1月頃で、8月に入ってまたちょっと増えてますが、なぜか職員はずっと増えてます。

 こんだけ自粛が長引くと、飲んだり旅行したくなったりする気持ちはわかりますけどね。まして毎日懲役を相手にしてる刑務官は、めちゃストレスと思いますよ。

「おいしいもの」と「寄り添う心」

 瑠美も経営してるラウンジを閉めたままやからヒマでヒマで、おうちごはんを充実させています。こう見えて料理は得意なんですよ。子どもたちはみんな独立してるんで、気合を入れて料理することもなくなってましたが、やっぱり作ると楽しいですね。たまたま来た息子に、強引に食べさせたりしています(笑)。

 やっぱり食べることは、めっちゃ大事です。おいしく食べられれば、たいていのことはなんとかなりますからね。瑠美はたくさん作って家族や友達とたくさん食べて、たくさんカラダを動かすのが好きです。

 そんなことを考えてたら、栃木の保護司さんの記事を見つけました。この保護司さんは、現役の獣医さんで、やさしそうなおばあさん。保護観察中の人に「おかえりー。なに飲む?」ゆうて、自宅のキッチンに入れてるそうです。

 「おかえり」って、もちろんムショからのお帰りです。これはええですね。瑠美も保護司さんになれたら、絶対にそうしようと思いました(さりげなく「保護司さんになりたいアピール」をしています)。

 ふつう保護司さんになる人は、学校の先生やった人や、お坊さん、元警察官とか堅苦しい人ばっかりですから、まず緊張するし、話してもおもんない(おもしろくない)です。リアルにアットホームでやさしく話してもらえたら、前向きになれますよ。

 おばあさん保護司さんは、記事で、「これから自分の足で立って生きていかなきゃいけない人が相手だから、『こうしなさい』『それをやったらダメ』は私の中では禁句」とおっしゃっています。そんなキャラやから、しばらく前に担当していた男性が突然おうちに来て、結婚の報告をしてくれたこともあるそうで、それってすごくないですか? ちゅうか記事にはなかったですが、保護司さんは76歳で定年です。もうこの方には、誰もお世話になれないです。

 保護司さんや社長さんなどムショ帰りを受け入れてくれる人は、少ないです。それは、めちゃくちゃ大変やから。おばあさん保護司は、記事でこうも言うてます。

「みんな立ち直ろうともがいている。一人じゃ無理だけど、時間もかかるかもしれないけど、そっと寄り添い続ける人がいればきっと大丈夫です」

 言うのはカンタンですが、これはめちゃくちゃ難しいです。元受刑者を受け入れてる企業も、順調とは言い難い感じです。

 北洋建設(札幌市)やお好み焼きの千房(大阪市)とかは元受刑者の受け入れで有名ですが、特に北洋建設の小澤輝真社長は難病で余命宣告を受けてるのに、従業員にやさしい目を向けてこられました。

 瑠美も通算で12年ムショにいたんで、ようわかるんですが、更生は単純に仕事や家があればええちゅうもんでもないんです。そこが難しいです。そもそも立ち直る気がなさそうなのもいてますし、周囲がやさしくしてくれても、再犯する人はします。それでも、瑠美も「立ち直ろう」ともがいてる人を支えてあげたいですね。

 保護司さんになる人も、エリートさんよりも、瑠美みたいにザセツを味わってる人のほうがええですよ、絶対。