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発酵食品はすばらしい…けど過度に効能を謳い、衛生面にも問題ある「野良発酵」には要注意!

ByAdmin

Sep 7, 2021

 微生物の作用で、風味・栄養・保存性を高める発酵食。人類の知恵、そして世界各地それぞれの土地の特徴をも感じることもできる、素晴らしい食文化です。素人でも家庭で作ることができるので、工場で大量生産される類の食品を嫌う人たちからも大人気。手作り発酵食品づくりを手軽に始められる市販品がたくさんあるなか、あえてのチャレンジ精神で挑む、なかなかにエクストリームな手作り発酵食が度々発生しています。

 手作り発酵食自体は、ごく一般的なものでしょう。ところが当連載でたびたび取り上げる「野良発酵」(と呼んでます)のなかには、それ、発酵でなく腐敗や……と思えるヤバげなものもありました。赤子ヨーグルトにマンモスジュース、そしてパラダイス酵母。ピンポイントでは取り上げていませんが、アボカド豆乳ヨーグルトもなかなかの魔界でしたなあ。

 野良発酵愛用者たちのあいだでは、右回りに混ぜるとエネルギーが抽入されるだの、発酵食は究極の引き寄せだの、スピリチュアルエッセンスもたっぷり抽入されています。食は哲学や思想、文化、習慣も色濃く反映される宇宙ですので、栄養面のみを語るのは無粋というものですが、衛生的にヤバげでかつ、あまりにもお作法に無理があるものにはツッコミたい。

 今回は、そんな野良発酵のラインナップに加えるべき新顔のご紹介です。

 物件名は「しゅわさかさん」。産みの親は「トレジャーじいさん」を名乗る人物のよう。しゅわさかさんとは「複合発酵ドリンク」と謳われた液体のことで、「国際プロジェクト」としてはじまり(自称かな)、2013年ごろから母親たちのあいだで口コミで広がりはじめたと説明されています。写真や動画で見ることができるそれは、黄色、もしくは茶色っぽい濁った液体。これを飲めと言われると、ちょっとひるむビジュアルです(パラダイス酵母で作った炭酸飲料のほうがだいぶ安心感ある)。

 しゅわさかさんはどうやって作られたのか? はじめは「国内のさまざまな乳酸菌」が加えられ、2013年からは「手に入るかぎりの薬草・薬木から、薬効成分を生みだす常住菌を採取して」投入。そうしたものに水・糖・ミネラルなどを与え、醗酵環境を整えて育てていくそうです。さらに仲間内で抽出した微生物をテイスティングして混ぜ合わせたり、「海外の微生物研究者たちが分けてくれた「免疫力を最適化する最強の乳酸菌」を加えたとも……。要は、よさげなものを「継ぎ足しのタレ」のごとく上からどんどんぶちこみ発酵させたよ! という感じでしょうか。

 そうしてできた「しゅわさかさん」は基本、無料で配られています。分けてもらった人は自分で増やし、積極的にどんどん人に広めよう! というのがルールのよう。増やし方は、人から分けてもらった「元」に、「湧き水・井戸水などの天然水」「生成されていない糖(おすすめは黒糖)」「天然塩をときどきひとつまみ」加え(大量生産の精製塩は体に毒なのでダメなんですってよ)、なるべく日のあたる暖かい場所に置き、酸っぱくかもされてきたら毎日飲むのだとか。日々のお世話はたくさん振って「今日も元気ね。ありがとう♡」と話しかけるともありました。

しゅわさかさんとともに配布されている説明書。トレジャーじいさんのHPでは、イギリス語、スペイン語版もダウンロードできるようになっている。
 な~るほど。令和のヒッピー・トレジャーじいさんが、感性のままに作り上げた発酵ドリンク(的なもの)なのかな。ネーミングの由来は「しゅわしゅわ栄える微生物さん」という意味からきているようですが、私の目には「コンタミ飲料」※です。だってそれ、いろいろブッコミすぎてすでに何が入っているかよくわからないのでは?

※コンタミ=「コンタミネーション(contamination)」の略称。異物混入、あるいは異物混入があった製品を表す語である。特に主原料とは異なった物質が混入することを意味する場合が多い。

 「こんなに多種多様な微生物を含んでいる液体はこの地上に存在しない」「有用微生物群」などYouTubeでそれっぽく言ってるけれど、そもそも本当に有用なのかな。有用と言い切るならば「育て・呑み・活かし・配るのはすべてそれぞれボランティアの自己責任です」と強調されるのはなぜなのか。

 さてヤバみが醸されているのは、それだけではありません。SNSやYouTubeで発信されている、トレジャーじいさんみずからが語る「効能」です(デター)。身内の雑談ならともかく、ここまで自由気ままに世界に発信できる人のリテラシーって、本当に不思議。

・複合発酵飲料が放射性物質の内部被曝を和らげる。
・難病に効く! 治療法のわからなかったさまざまな病に効く!
・しゅわさかさんは、10リットルのポリタンクでたっぷり育てるのが主流。プラスチックを食べ慣れたしゅわさかさんは、体内のマイクロプラスチックを食べてくれる。
・微生物が生成する天然の化学物質であり経口薬だ。ボトルの下にたまった沈殿物は「最強のお薬」。
・高周波な波動を出しているといわれる有用微生物群は、エネルギー装置のようなもので、害虫とか低波動な生物がよりつかないと聞いた。そこでしゅわさかさんを置いてみると……ゴキブリ出ない。ダニ出ない。害虫出ない。畑でも同じだ~!
・松の葉も激推し。コロナにも感染にも、とりわけワクチンを打ったあとにも効く松の葉でお茶や酒を作り、しゅわさかさんで割って飲めばこれ最強。松の葉入りのしゅわさかさんももちろんOK。
・イベルメクチン※など、世間一般の菌の研究を引き合いに、「腸内細菌叢がゆたかになると、免疫力・解毒力・造血力・総合的体力・総合的精神力などあらゆるいのちの能力が向上します」と説明。※現時点では科学的根拠がないとされながらも、新型コロナウイルス感染症の治療薬として推奨されている抗寄生虫薬

 いつもの当連載ではひとつひとつの主張にライトなツッコミを入れるのが常でしたが、もはやつっこみも出てこないレベルの適当さ。

 極めつけは「しゅわさかさんを加えたお湯で、妻が水中出産」という報告の動画です。「お風呂の中でほどよくしゅわさかさんを温めて、しゅわさかさん出産をしました。いえーい!」って、怖いわ。さらに竹酢液と、たっぷりの天然塩を入れるそうです。

 「肺の中のたまった老廃物をプハーと吐き出しながら、嬉しそうに笑ってるんですね」「快感出産!」「笑うお産!」「天土(あまつち)とひとつになってパラダイス自宅出産!」「胎盤はパワーフード。塩漬けにしておけば、何か大変なことがあったとき、ちょっとその塩を食べれば難病も治るのではないか」etc...

 菌がトレジャーじいさんをこうさせたのか、元からこういう人なのか、とても興味がわいてきます。Facebookにはプライベートグループがあり、そこでは「しゅわさかさんでパン焼けました!」というほのぼのとしたものから、「医療現場で必要なのではと個人的に思っている」「エサに混ぜたら猫の体調不良が治った」「一歳児たちがゴックンゴックン飲む飲む!」というディープなものまで、各種報告で盛り上がっています。

 私のもとには、親友がトレジャーじいさんにハマり、家族にしゅわさかさんを勧めだしているという方からの連絡も届いています。しゅわさかさん布教者となったご本人以外は皆、困惑していているうえ、友人の母親は勧められた松葉茶を飲み、全身蕁麻疹が出てしまったそう。しかし親友はそれを「好転反応」と軽く流し、今は松葉入りのしゅわさかさんを、業者かという勢いで仕込みまくり、それをSNSに投稿しているとか。

 トレジャーじいさんは「民度の高さを発揮するひとつがしゅわさかさん。この国を底上げしていくタイミング!」とYouTubeで語っているのですが、さまざまな野良発酵のなかでも、かなり民度低そうな感じ。トレジャーじいさんは、謎の「日本の伝統的な生活術」を布教する人物でもありますので、スピ、ナショナリズム、コミューン、エコ、土着文化などの要素がごった煮となっている、よく見かける今どきのナショナリストという印象です。余談ですが「世界最高の発酵テクノロジーを食生活のなかで楽しんでいたのが、かつての日本人でした」とおっしゃいますが、発酵食って世界中にありますよね……。

 「菌の力でガンが治ることが広まると、製薬会社のシステムが崩壊する」とまで発信している点からも、おそらくしゅわさかさんはカウンターカルチャーの一種なのでしょう。発酵食は、誰でも生産者になれるという点では、消費社会に疑問を持つ人たちにもうってつけの食品です。しかし、しゅわさかさんの作られ方を見ていると、(俺たちの)世界を栄えさせるためと言いつつ、バイオテロによって内部が真っ先にヤラれるのではないかと、関係者の健康だけが心配です。特に、母親たちのあいだで広まっているというので、しゅわさかさんを常飲させられる子どもたちの健康は大丈夫なのか。手探りのなかから発酵と腐敗を嗅ぎ分けられるスキルが身についたり、こうした冒険が後に素晴らしい発酵食を生み出すのかもしれませんが、少なくとも現時点のしゅわさかさんは、私の目には不安しか感じない野良発酵物件でした。

Information
黒猫ドラネコ×山田ノジル トークイベント(仮)

 山田ノジルが、サイゾーウーマンで「黒猫ドラネコの“教祖様”注意報」を連載中の黒猫ドラネコさんとトークイベントを開催。ゲストに、実体験をもとにマルチ商法を描いた小説『マルチの子』(徳間書店)で話題沸騰中の西尾潤さんをお招きします。マルチの内部事情がわかり、むちゃくちゃ面白い!

開催日:10月3日(日)
時間:15時開演(14時半開場)/17時終演予定
場所:LIVE STUDIO LODGE(ライブスタジオ・ロッジ) 東京都渋谷区代々木1-30-1 代々木パークビルB1
料金:アーカイブ配信付き/1,800円、アーカイブ配信なし/1,300円(どちらもワンドリンク制)

イベント詳細&申し込み方法はこちらから。

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