■小児科医・森戸やすみ先生の子育てQ&A
Q.新型コロナウイルスが怖いので、定期・任意のワクチンは後で打ってもいいですか?
A.お子さんを守るために、できる限り推奨スケジュールに沿って接種しましょう。
新型コロナウイルスやRSウイルスが猛威をふるっている今、できたら小児科に行きたくないという親御さんがいるかもしれません。特に1歳までのお子さんの場合、定期・任意のワクチンをスケジュールに沿って受けるとなると、頻繁に通院することになるので、心配になるのもよくわかります。それでも、私は定期・任意どちらのワクチンも、特別な事情がない限り、推奨されているスケジュール通りに接種するのをおすすめします。
その最大の理由は、小さい子が感染すると重症化しやすく、後遺症が残ったり、命を失ったりする危険性のある感染症は、新型コロナウイルスやRSウイルスだけではなく、ワクチンのある感染症も同じだからです。この地球上には数えることができないほどのウイルスや細菌が存在し、そのひとつが新型コロナウイルスですが、その他にも危険なものはたくさんあります。すべてを予防することはできませんが、ワクチンで防ぐことのできる感染症は防いだほうが安心です。
小児科医をしていると、ワクチンを接種していれば感染することはなかったのにと悲しく思うことがあります。例えば日本では、ヒブ(ヘモフィリス・インフルエンザ菌b型)ワクチン導入前には年間600人が細菌性髄膜炎を発症していましたが、導入後は98%も減少しました。ヒブ髄膜炎にかかると、2〜5%の子どもが亡くなり、脳の後遺症が30%くらいの確率で残ります。いつ誰が、どのような感染症にかかるのかはわかりませんから、適切な時期にワクチンを接種しておくことは大事なのです。
厚生労働省も、以下のようなリーフレットを作っています。発達の様子を確認し、病気などがないかどうか確認するための乳児健診も忘れずに受けましょう。
○厚生労働省「遅らせないで!子どもの予防接種と乳児健診」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_11592.html
また、その他にもワクチンによっては、特定の月齢までしか打てないものもありますし、適切な年齢で決まった間隔を開けて接種することによって抗体がつきやすいものもあります。さらに定期接種は公費で打てる期間が決まっています。そういう意味でも、やはり推奨スケジュールに沿って受けておいたほうがいいでしょう。任意接種でも、自治体の補助が出るものがあり、それも期間が決まっていたりします。
○日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール(2021年3月改訂版)
http://www.jpeds.or.jp/uploads/files/vaccine_schedule.pdf
現在では、小児科クリニックの多くは、コロナ下での診療にも慣れ、ワクチン外来の時間と、発熱外来の時間を別々に設定しているところも多いと思います。また、感染対策をしっかり行っていると思います。あまり心配しすぎず、信頼できるクリニックを選んでワクチンを接種してくださいね。
すでに何かのワクチンを受け損ねたり、遅れたりしている人も、まだ間に合います。何を受けていないのかわからなくなった場合、予診票などがない場合などは遠慮せずに小児科や保健所等で相談しましょう。
<今回のポイント>
○ワクチン接種はスケジュール通りに
○接種し損ねた人は小児科か保健所で相談を
○安心して通える小児科を見つけて
森戸やすみ、宮原篤『小児科医ママとパパのやさしい予防接種BOOK 疑問や不安がすっきり!』(内外出版社)
■連載「小児科医・森戸やすみ先生の子育てQ&A」一覧ページ