■小児科医・森戸やすみ先生の子育てQ&A
Q.新型コロナウイルスの流行後、ワクチンのデマが増え、ウソだとわかっていても怖くなります。
A.一度、感染症とワクチンがどういうものなのか勉強するのがおすすめです!
先月、日本経済新聞が、「新型コロナワクチンが不妊につながる」というツイッターの投稿が1月からの7カ月間で約11万件あり、その半数の5万件超はたった29アカウントの投稿が発端だと報じました。新型コロナウイルスの流行に乗じて、一部の人たちが根拠を示すことなく、そうした誤情報発信をしていることがよくわかる報道でした。
ワクチンに関しては普段から賛否両論あるかのような言説を見かけることがありますが、世界中のほとんどすべての専門家(医師や研究者など)がワクチンを推奨しています。否定している人たちはほんのわずかであり、また根拠も示していません。それなのに、あまりにも声が大きく、また「安全である」という情報よりも「危険である」という情報やよりセンセーショナルな情報のほうが広まりやすいために、なんの根拠もない噂だけが一人歩きしてしまうのです。さらに誤った情報を発信している人をSNSでフォローしてしまうと、エコーチェンバー現象といって同じような根拠のない情報がたくさん集まってきてしまい、あたかも事実かのように見えるようになってしまいます。怖いことですね。
反ワクチンの誤情報には、割とパターンがあります。よくある間違いをいくつか挙げて反論してみますね。
間違い①ワクチンによって自閉症になる
この根拠として挙げられるウェイクフィールドによる「MMRワクチンが自閉症の原因になる」という論文は1988年に権威ある医学誌『ランセット』に掲載されましたが、捏造が発覚して取り下げになりました。そのほか、ワクチンの保存料である水銀・チメロサール(水俣病の原因となったメチル水銀ではなく、エチル水銀)と自閉症の関連も否定されていて、安全性が確認されています。
間違い②ワクチンを打っても抗体がつかない
ワクチンを接種しても、まれに抗体価が上がらない場合はありますが、定められた回数と間隔で接種していれば実際の予防効果があります。また完全には予防できなくても、ある程度の抗体があれば症状は軽くなります。そしてワクチンを打っている人が多くなれば集団免疫が成立し、感染症の流行自体が起こりにくくなるのです。
間違い③病気にかかって得た抗体のほうがよい
確かに、例えば麻疹にかかれば、高い抗体がつくかもしれません。でも、麻疹は死亡率の高い病気だからこそワクチンができました。抗体がついても、命を失ったり、後遺症が残ったりしたら意味がありません。ワクチンの目的は抗体価を上げることではなく、病気によって命を失ったり後遺症が残ったりするのを防ぐことです。
このように詳しく説明されると、少し安心できませんか? つまり正しい知識があれば、怪しい情報が流れてきても騙されなくてすみます。ぜひこの機会に、厚生労働省や小児科学会のサイトで、感染症やワクチンについて学んでみてはどうでしょうか。また、私もワクチンについての基本がわかる『小児科医ママとパパのやさしいワクチンBOOK』(内外出版社)という本を書いています。ぜひ読んでみてください。
<今回のポイント>
○根拠のない情報ほど広まりやすい
○ほとんどすべての専門家がワクチンを推奨している
○正しい知識を身につけると安心
森戸やすみ、宮原篤『小児科医ママとパパのやさしい予防接種BOOK 疑問や不安がすっきり!』(内外出版社)
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