朝の情報番組戦線において、確固とした立ち位置を築いているNHK『あさイチ』。社会や家庭をはじめとした、さまざまなテーマで問題提起を行うのが特徴だが、9月29日放送で取り上げたテーマは「人生最後に話したい相手は誰ですか?」。「もし人生最後の会話だとしたら、誰と何を話しますか?」という想定のもと、幅広い世代の人々に相手を指名してもらい、その会話の様子を収めたVTRを紹介したのだ。しかし視聴者からは賛否両論、困惑の声が広がっている。
「1人目に登場したのは、結婚14年目で子どもが2人いる男性。『人生最後に話したい人』と聞かれて、すぐ妻だなと思ったという彼は、ともに歩み続けてきた妻への思いを伝えて感謝していました。2人目は、3人の幼い男の子を育てる母親。自身の母親が若くして亡くなったことから、子どもたちに今思うことを伝えたいと話していました」(芸能ライター)
その母親は、「今まで一緒に暮らしてきていろんなこと言ったと思うの。例えば、早く片づけなさいとか仲よくしてくださいとか」と切り出すと、子どもたちにこんなメッセージを熱弁。
「でも、なんかもう……それは全部忘れちゃってもいい……って思いました。一番言いたいのは、みんながどんなに間違えちゃっても、うまくできなくても、失敗しちゃっても。めちゃめちゃ怒ってても、すごく泣いても、どういうときでもお母さんは、みんなのことがすごく特別に大好きということを言いたいと思いました」
すると10歳長男は「生まれてきて良かったなと思った」と言いながら、母親の愛を感じ入ったのか静かに泣きじゃくったが、7歳の双子の1人はまだそこまで理解できていないようだった。
「このほか、結婚55年、3人の子どもを育て上げた70代夫婦の『人生最後の会話』を挟んで取り上げられたのが、7年前、妻を胃がんで亡くされたという男性。病院へ連れて行ったときは末期がんで、残された時間を過ごすしかなかったそうです。ほとんど会話もできない状態の中、ある日、病室で寝ていてもベッドから降りてしまう妻に『帰りたいの?』と聞くと、『うん』と返してきたとか。それが、妻の声を聞いた最後だったそうです。その男性は『ドラマのようにいろいろな話ができれば違うのかもしれないですけど、なかなか、できない』と語っていました」(同)
ちなみにMCの博多大吉は、人生最後はやはり相方の博多華丸と、「漫才したいとしか言いようがないよね。漫才してうっすら、スベりながら終わりたい」と語り、スタジオを笑わせていた。
この企画に対して、SNS上では「朝から涙腺崩壊」と感動したとの声も上がっていたが、一方で、「なんなのこの企画?」「これを見せられてどうしろと」「なんで急にこんなのやってるんだろう」と困惑のコメントが続出。また、「申し訳ないが、こういうのは大嫌い。自己満足、きれいごとだよ」「チャンネル変えた。 最後の会話なんて想像もしたくない」と激しく拒否する声も見受けられる。
ほかにも、「肉親を亡くしたばかりなので視聴中断した。なんでこのタイミングで……」「『人生最後の会話』。これは心身が健康な人の発想かもなー、と思ってしまった。がんになり、そんな余裕のある心境で想像できなくなった」という意見も。自分自身、もしくは身近に「死」を感じている人には酷な企画だったかもしれない。
なお、企画の最後には、今回放送されたVTRの完全版が10月放送の同局ドキュメンタリー番組『シェア・ストーリーズ』で流れるとの告知も。どうやら『あさイチ』の企画ではなく、NHKの巧妙な“番宣”だったようだ。『あさイチ』では困惑と拒否反応が多数だったが、本放送では一体どんな反響がみられるのだろうか。
(村上春虎)