■小児科医・森戸やすみ先生の子育てQ&A
Q.新型コロナの感染対策をしていても、インフルエンザワクチンは接種したほうがいいの?
A.インフルエンザワクチンは、毎年10〜11月頃に接種しておいたほうが安心です。
今年の夏、RSウイルスは、新型コロナウイルス予防のために感染対策をしているなかでも流行しました。また、RSウイルスは昨年の冬に流行しなかったぶん、あっというまに広まったのかもしれません。つまり、どんなに感染対策をしていても、なんらかの新型コロナウイルス以外の感染症も同時に流行することはあるので、ワクチンがある感染症はワクチンで防いだほうが安心だといえます。
インフルエンザは、毎年12月頃から流行する感染症で、インフルエンザウイルスによって起こります。急に高熱が出たり、身体の節々が痛くなるといった特徴があり、感染した場合は他の人にうつさないよう学校や幼稚園、保育園などを休まなくてはいけません。頻度は高くないものの、特に5歳未満では中耳炎、肺炎、インフルエンザ脳症などを起こすこともあります。できたら予防しておきたい病気ですね。
ところが毎年のように、①「インフルエンザのワクチンには意味がないと証明されている」、②「流行するインフルエンザウイルスの型は毎年違うから意味がない」といった間違った説が流布されてしまいます。
①については、1987年に発表された『前橋レポート』を根拠としていることが多いようですが、このときにはインフルエンザの迅速診断キットもPCR法もなく診断基準が非常に曖昧で、さらにワクチンを接種した割合も低かったため、現在では否定されています。
②については、確かにインフルエンザウイルスには型があり、毎年流行する型が変わります。そしてインフルエンザワクチンは、毎年次シーズンに流行する型(4種類)を予想して作られているため、流行型とワクチンが一致しないこともあります。しかし、それでもインフルエンザワクチンが推奨されているのは、およそ50〜60%の確率で予防することができるためです。さらに、たとえ感染した場合でも、重症化を防ぐことができます。アメリカの研究では、インフルエンザワクチンの接種によって、2010〜2012年のシーズンに小児集中治療室に入るリスクを74%も減らしたことがわかりました。
以上のようなことがわかっているため、WHOのウェブサイトには「予防接種はインフルエンザウイルスに起因する感染症や重大な結果を防ぐもっとも効果的な方法です」とあります。もちろん、日本の厚生労働省も毎年インフルエンザワクチンを接種するようすすめています。
インフルエンザワクチンは、生後6か月から接種可能です。13歳未満の場合は2〜4週間あけて2回、13歳以上の場合は1回打ちます。ただ、厚生労働省のサイトにもあるように、WHOは9歳以上〜成人は1回接種が適切だとしています。受験生だとか、持病があるなどの場合でなければ、9〜12歳も1回でいいかもしれません。1回でも接種しないよりはずっといいです。米国予防接種諮問委員会(US-ACIP)は過去に2回以上インフルエンザワクチンを受けていれば、生後6ヶ月〜8歳でも1回でいいと言っています。
厚生労働省 インフルエンザQ&A
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/qa.html
米国予防接種諮問委員会(US-ACIP)
https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/70/rr/rr7005a1.htm
接種費用については、お子さんの場合、公的な助成が受けられる場合もありますから、お住まいの自治体のウェブサイトなどをみてください。流行前に免疫をつけるため、毎年今ぐらいの時期(10〜11月)には受けるようにしましょう。
<今回のポイント>
○インフルエンザワクチンは効果あり
○生後6か月から接種が可能
○9歳未満は2回接種する必要がある
○毎年10〜11月頃に接種するといい
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