「秋バテ」という言葉、みなさんは聞いたことがありますか? 「夏バテ」と比べてあまり知られていないため、自覚なく「秋バテ」の症状に悩んでいる方も多いようです。
夏の暑さが落ち着いてきたころに起こる、「食欲がない」「疲れがなかなか取れない」「イライラする」といった体や心の不調が、秋バテの主な症状。夏バテによく似ていますが、起こる理由が異なるため、解消法も変わってくるのです。そこで今回は、ある女性の体験談から、秋バテの原因とその解消法を薬剤師がご紹介します。
1.ストレスが溜まって食欲も気力もダウン……これが「秋バテ」なの!?
秋バテの症状に悩む1児の母・みどりさん(仮名)39歳のエピソードをご紹介します。猛暑の時期を過ぎた9月上旬ごろ、みどりさんは体調不良に悩まされるようになったそう。
「夏の終わりごろから、食欲があまりないんです。小学6年生の息子と主人と食卓を囲んでも、私はビールとおかずを少しつまむだけになりました」
もともとお酒好きで、今年の夏は外出できない代わりに“家飲み”にハマり、アルコールの量がどんどん増えたとのこと。
「最近は涼しくなって過ごしやすい日も増えたはずなのに、疲れがなかなか抜けないんです。それをごまかすように、晩酌が日課になったことで、翌朝の胃もたれとダルさが続くように……。なんとか仕事はしてますが、帰ってから家事をするだけのパワーは残っていません」
みどりさんはデパートの美容部員なので、コロナ禍でも出社は必須。一方、夫は在宅勤務が基本で、みどりさんが家に帰ると、キッチンやリビングがぐちゃぐちゃになっていることが増えたとか。
「こうしたことでストレスが溜まり、ますます食欲がなくなって、気力も体力も落ちたように感じます。夏前までは、こんな不調はなかったのに……。猛暑が過ぎて落ち着くどころか、体も心も疲れている状態。一体、どうすればよいのでしょうか?」
秋バテは夏に溜まった疲れに加え、秋の気候や温度の変化が体に影響することによって起こります。湿気が多く暑い夏から、乾燥して涼しい秋へ変わるこの時期は、1日の寒暖差が大きいことも特徴。これらの環境変化に体をうまく順応させることができないと、秋バテを引き起こすのです。
そんな秋バテにならないために、初秋の過ごし方のポイントをお伝えします。
2-1.保湿をする
秋は気温と湿度が下がり始め、空気が乾燥します。すると、体表面を守る皮膚や髪、鼻や喉を乾燥させ、体の防御機能も低下。秋バテで弱った体で風邪などにかかってしまうと、さらに体力を奪われ、体調が悪化します。乾燥する秋には、保湿クリームなどを使って、体表面の乾燥を防ぎましょう。
2-2. 旬の食材を摂る
体の不調を防ぐには、バランスのいい食事を摂ることが大切。さらに、旬の食材を取り入れることもおすすめです。
秋が旬の食材は、おいしくて栄養豊富なだけでなく、秋バテ予防にもピッタリ。反対に、辛いものや酒類など、刺激の強いものは体を乾燥させてしまうので、控えめにしましょう。
2-3.衣類で体温調節をする
急な寒暖差から秋バテにならないためには、衣類を調節しながら、徐々に気温に体を慣らしていくことが大切です。日中は脱ぎ着をしやすいストールやカーディガンなどを常備しておくといいでしょう。
また秋は、朝晩の寒暖差にも注意したい季節。「冷えは万病のもと」と言われるように、冷えはさまざまな不調の原因になります。昼間だけでなく、夜間にも体を冷やさない工夫が大切です。
みどりさんは体調も気持ちもすっきりしない日々を過ごす中、「秋バテ」を特集した雑誌が目に入ったそう。「イライラしやすくなる」「食欲がなくなる」といった症状が書かれており、みどりさんはこの時初めて、自身の不調が秋バテだと気づいたのです。
この雑誌には、秋バテで起こる不調を改善するために、漢方が勧められていたそう。早速ネットで検索すると、オンラインで漢方を注文できるサービスを発見。そこで「加味逍遙散(かみしょうようさん)」という漢方を勧められ、飲み始めたといいます。
「飲み始めてしばらくすると、胃の不快感やダルさがなくなり、食欲が復活。しだいにイライラすることも減っていきました。体調も気持ちも安定してきたので、料理も楽しめるようになり、今は秋の食材を取り入れた、栄養いっぱいのごはんを作ってますよ」
秋バテを漢方で改善した、みどりさんのエピソードでした。
3-1.漢方医学が考える「秋バテ」とは?
漢方医学には、体調を考える時に「気」「血」「水」という要素があります。暑い夏にたくさんの汗をかき、体の潤い(水)がなくなると、エネルギー(気)を消耗。さらに、食事の不摂生により胃腸が弱り、食欲がなく疲労や倦怠が残ると、エネルギー不足が進みます。エネルギーが足りないと、血流(血)のめぐりが悪くなり、心にも影響が及ぶ……これが漢方医学における「秋バテ」の原因です。
漢方医学は、ピンポイントで治療を目指す西洋医学と異なり、体全体のバランスを見て不調を改善していきます。つまり、漢方薬なら体全体をバランスのいい状態に整えられるため、秋バテのように「なんとなく体全体の不調を感じる」という方には、特に最適といえるのです。
それでは、秋バテによく使われる漢方薬をいくつかご紹介します。
・補中益気湯(ほちゅうえっきとう):ダルくて疲れやすい方に
胃腸のはたらきを高め、食欲を出すことで「気」を補い、疲れを改善していきます。
・加味帰脾湯(かみきひとう):イライラや不安があり、眠れない方に
胃腸のはたらきを助けながら「血」を補い、「気」をめぐらせることで気持ちを落ち着かせます。
・加味逍遙散(かみしょうようさん):疲れやすく、イライラがある方に
不足した「血」を補い、「気」をめぐらせることで胃腸の不調も改善します。
漢方薬は医薬品ではあるものの、自然の素材が体にやさしく働くため、一般的に副作用が少ないといわれています。とはいえ、ご自分の状態や体質にうまく合っていないと、効果を感じられないだけでなく、場合によっては副作用が生じることも。しかし、たくさんの漢方薬からご自分に合った漢方薬を見つけるのは大変ですよね。
そんなときは、薬剤師に気軽に相談できる、「あんしん漢方」などのオンライン漢方サービスを利用するのもいいでしょう。あなたに合った漢方薬を見極めて、お手頃価格で自宅に郵送してくれます。
4.夏の疲れを引きずらない! 心も体も元気に秋を過ごそう
「食欲の秋」ともいわれるように、秋はおいしいものがたくさんあります。好きなものをおいしく楽しく食べられるって、幸せですよね。夏に溜まった疲れを解消し、食事から栄養をしっかり摂るようにしましょう。
そして、過ごしやすい気候が続く秋のうちに、寒い冬を乗り越えるための心や体の準備をしておきたいもの。なんとなく体調不良が続いている方は、秋バテの可能性もありますので、今回の改善策を参考にしてみてください。