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ズボラ育児を、姑が「意識高い」自然派育児と勘違い!

ByAdmin

Oct 19, 2021

 物事を自分の辞書で翻訳する、という経験は誰しもあるでしょう。理解を深めるため、身近に感じられるように、自分を納得させるため。いろいろな理由がありそうです。最近では、現代の常識やビジネス視点で語られる、昔話や神話などもよく見かけます。それらには笑いや学びがあるものの、見ていて困惑してしまうのは、発達障害を当事者以外の人が「ギフテッドの天才!」とタグ付けしたり、「宇宙から来た、地球を救うための魂である」などと壮大なスケールで語ったりすること。ほかにも、トラブルを「魂の修業のため」「自分の人生に必要なことだった」という精神世界解釈で納得させるというのもよく見かける言説です。

 今回は、そんな「超解釈」が思わぬ助けになったという体験談をお届けしましょう。お話してくれたのは、元・自然派沼の住人、S子さん。30代、2児の母です。

 自称「ただのズボラ」な育児を、「意識高い自然派育児」として解釈し、ほめちぎってくれるのは姑。姑は元教師で破天荒な自由人、そして「宗教やトレンド的な趣味など、とにかく何かにハマっていたい人」なのだとか。

S子さん(以下、S子):姑がハマっていた宗教に個人情報を流されるなど、トラブルがあったので一時期疎遠になっていたのですが、少し交流が復活するようになると「無農薬だから」が口癖になっていることに気づきました。そのころの私も、子どもの生活用品や食べ物は自然なものにこだわっていたので共感できる部分も多く、ある意味姑と仲間意識が芽生えたかもしれません。宗教でのいざこざはあったものの、子どもにむやみやたら市販のお菓子を食べさせようとする他の親類より、よっぽど安心して付き合えました。

 ところがその後、第2子が生まれると、子どもをふたり抱える生活の大変さから、S子さんは脱・自然派。「ていねいな育児」もすべて投げ捨てたと言います。

S子:2子がやんちゃすぎて大変で、こだわりの自然派生活なんて優雅なことをやっていられなくなりました。知育遊び? 体力づくり? 食べたものが体をつくる? そんなこと考えているゆとりは、まったくありません。ところが「ズボラ」としか言いようのない私の育児を見て、姑がこんなことを言い始めました。

 以下、S子さん姑のコメントをまとめてみました。

脳も活性化する裸育児
▼S子さん視点

1歳半の2子は裸族。服はもちろんおむつすらつけさせてくれず、追いかけ回し、叱る毎日に限界。結果、裸で放置することに。当然靴も履いてくれず、すぐに素足で脱走します。

▼姑コメント

裸育児は素晴らしい! 刺激を全身で受け止めることができるのよ! そして素足で感覚が鍛えられているからこそ、この体つきで運動能力……(うっとりしながら)。S子さんの子育ては、本当に徹底してますね。

▼ノジル補足

「裸育児」とは、赤ちゃんは裸が大好きで、裸でいると脳の発達にいいことだらけ! と謳われる育児法です(Sさん姑の言う裸育児が何を指すかは不明)。裸育児を推す育児書のトンデモっぷりは過去に当連載でも取り入れたことがあり、さらにこれを取り入れている幼稚園のHPを見ると、「健康に付随するあらゆる能力がぐんぐん伸びた」「開放的、寛容、明朗な性格になる」「親の過保護から解放される」「病気に対する抵抗力が出来た」「病気をしても回復が早くなった」「小児喘息が治った」といった怪しげな効果効能が書かれていることからも、だいぶ「信仰」が入っている気配が伝わってきます。

体幹を育てる育児
▼S子さん視点

裸族であると同時にとにかく落ち着きがなく、ひとときもじっとしていいられない2子。家の中でもテーブルにぶらさがったり、ソファから飛び降りたり……(ため息)。

▼姑コメント

体幹ができているのよ! 背筋もバッチリ! しっかり体を作る遊びをさせていて素晴らしい!(スタンディングオペレーション)

▼ノジル補足

特に自然派のあいだでは「現代の子どもは姿勢が崩れている。それは体幹が弱いからだ」という主張がよく見られ、野外で遊ぶ場所の少ない現代の環境だけでなく、抱っこ紐などの便利育児グッズが原因として批判されることも多々あります。そこからいかに体幹を使う遊びをさせるか~といったアドバイスが登場するものの、そんなにがんばらなくても子どもってほっとけばサルみたいに全身で遊び回るよね~というのが個人的な実感です。

私の孫は左利き
▼S子さん視点

長女に使っていた教材を引っ張り出して遊んでいた姉妹。ふたりとも、現時点はどちらかというと左利きかな……? という程度なのですが。

▼姑コメント

両方の脳を使えているわああ~! そんなふうに育てたのね……すごい!

▼ノジル補足

「左利きは右脳と左脳の両方をバランスよく使えている」とか「天才が多い」とか、いろいろなことが言われておりますね。脳科学をウリにした幼児教育メソッドでも、利き手がどうとかよく言われますが……正直乳児のうちって、ハサミやお箸、えんぴつなど日常の道具をスムーズに使えるように見守るだけでも結構大変です。右脳や左脳まで考えて訓練まで取り組めるご家庭は、相当意識高そうです。

アーシングで電磁波放出
▼S子さん視点

さほど遠くない義実家ですが、子どもをふたり連れてこまめに顔を出すのは、このうえなく億劫。だからコロナ禍を言い訳に「人の少ない場所を選び、休日はいつも海や山で過ごしているものですみません~」とごまかしている。

▼姑コメント

アーシング!! 裸&素足で大地とつながる、素晴らしい育児よ!

▼ノジル補足

アーシングとは素足や素手で大地と触れ合うことが、地球のエネルギーに触れるこであり、人間にとって必要なことであると考える健康法です。太古の昔から人間は大地と触れ合ってきたのに、現代の生活ではビルや衣類で大地と断絶され、常に電磁波を放つ機械を身に着けている。体内の電気を放出させるためにも、地面と触れ合いましょう~というお説です(これを聞くたび、ラピュタの「土から離れては生きられないのよ」を思い出してしまう)。そこからバッチリ商売に誘導され「アーシングマット」「アーシングシューズ」など、いろいろな謎グッズが販売されています。自然の中で過ごすのは普通にいいものですが、あれこれいわれるとめんどくさくなりますね。

ヴィーガンは、感性が研ぎ澄まされている証!?
▼S子さん視点

長女は肉や魚をまったく食べてくれず、ひょろっとした体型をしています。実母から「もっと肉を食べさせない」と小言を言われるレベルで……。

▼姑コメント

動物性の食品を食べないのは、ここまで丁寧に味覚や感覚を育ててきたからよ! 長女ちゃんが肉を食べないのは、ヒトに合わないって本能的に分かっているのよ。私もプラントベースに切り替えたいけど、職場で給食があるからどうしてもねえ~。

▼ノジル補足

子どもの偏食は気にしすぎなくて大丈夫! であるようですが、病気・体質以外の理由で、親の思想による意図的なヴィーガン食だけはダメ絶対! 

*     *     *

S子:そのほかいろいろありますが、姑は基本体育会系の経歴なので、それと自然派が相まってストイックな生活を喜びがちです。さらに舅も一緒になって、「自作のオーガニックハーブティの味を、子どもたちはわかってるぞ!」と喜んでいる始末です。まったく違うわ!と思うものの、私の親が裸族で落ち着きのない子どもたちを見て「恥ずかしいからやめさせなさい」とか嫌味っぽく、私の育児を非難してくるんですよね。だから方向はややアレなのですが、義実家が肯定してくれることそのものはうれしく、育児で疲れた心も軽くなりました(笑)。

 これまで、「身内が過激自然派」というエピソードではどれもシリアスで、聞いているほうも心が削られるものばかりでしたが、こんなやさしい(?)世界を生み出すケースがあったとは。

S子:姑は破天荒というか、ガサツなんですよ。私が言うのもなんですが。以前は断捨離にハマり、物がない家に憧れた結果、炊飯器をはじめとする調理器具も捨ててしまい「サトウのごはん」を食べる生活をしていました。かと思えばガランとした家の壁が枯れ葉だらけになっていて、よく聞いてみるとハーブを作っているとの話。夫は過去に痛い目にあったのか、「俺の実家で出されるものは絶対口にするな!」といつも言っています。また、自然生活の延長なのか、最近ではカマキリの卵を家に持ち込みテレビの裏に放置して、大量の卵が孵ってしまう事件もありました。それは舅がさすがにブチ切れ、掃除機で赤ちゃんを吸ってたそうですが……。近所の子どもたちから、「猫ババア」と呼ばれています。いわゆるエサやりおばさんだったようですが、最近では家猫にすべく、せっせと勝手口で餌付け中です。

 要はS子さんのズボラも容認できる、共通点があったということでは……という気がしなくもありませんが、心温まる平和(カマキリ事件は除く)なお話をありがとうございました。ちなみに姑のコメントがところどころ敬語なのは、宗教トラブルでの確執が微妙に残っているからだそうです。

 最後にひとつだけ、このエピソードの注意点をお伝えしておきましょう。S子さんが姑翻訳をほどよくうまく受け止められるのは、自身が元自然派沼の住人で、姑の語るそれがどういうものかをよく知っているからです。もしよく知らずにいたら、褒められた喜びから興味を持ちはじめ、一緒に自然派育児の沼へ入り込んでいた可能性も大いにあるでしょう。スピリチュアル教祖様にのめりこんだ体験談でも、肯定感を手軽に与えてくれたのがきっかけだという話もありました。

 今回はお互いの距離感も上手く作用し、平和な展開となったようでなによりです。