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『だめんず・うぉ~か~』倉田真由美が50歳で挑む新境地! 初の長編ミステリー&電子コミック『凶母』の制作秘話

 ダメ男と、ダメ男にばかりハマってしまう女性の姿がリアルに描かれた恋愛エッセイ漫画『だめんず・うぉ~か~』の著者で、昨今はコメンテーターとしても活躍する、くらたまこと倉田真由美氏が、初の長編ミステリー&電子コミック『凶母(まがはは)~小金井首なし殺人事件 16年目の真相~』(ウーコミ!)を、10月26日より各電子書店にて配信する。

 日本屈指の霊能者と見せかけ、実は凄腕の催眠術師・東郷高峰の元に、16年前に母親を惨殺された美女が相談に訪れたことから物語は始まるのだが、ほんわかとしたくらたまタッチの絵と、得体のしれない気味の悪さがまじり合い、独特な世界観を形成。読者を引きつけて離さない、スリリングな展開となっている。

 完全オリジナルストーリーで長編ミステリーという新境地を切り開いた倉田氏に、制作の裏側や本作にかける意気込みを聞いた。

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――『凶母』は完全オリジナルストーリーで、初の長編ミステリー、初の電子コミックと、倉田さんのキャリアにとっても大きな転機となる作品だと思いますが、本作を執筆しようと思ったきっかけから教えてください。

倉田 紙で描いた4コマが電子コミックになったことはあるんですが、ペンタブ(デジタルで漫画を書くペンタブレット)で一から漫画を描いて発表するのは、今回が初めて。そういう意味では、わたしにとって新しい挑戦です。だって、30年くらい紙でやってきたものを全部捨てて、デジタルに完全移行したんですから。スクリーントーンも全部捨てたし、たくさんあったペンのストックもすべて人にあげちゃったし、紙の原稿も子どものオモチャになりました(笑)。

――2000年から13年続いた『だめんず・うぉ~か~』(扶桑社)連載終了後、40代後半はあまり漫画を描かない時期もあったそうですね。

倉田 ほかのジャンルにチャレンジしたこともあったんですが、あんまりうまくいかなくて、漫画を描くこと自体、嫌になってしまって、文章の方に行こうかなって思った時期があるんです。とはいえ、そんなに強みがあるわけではないし、せっかく今までやってきたことを全部なしにしちゃうのももったいないな、と思っていました。

 それと、コメンテーターとか、ほかの仕事でなんとかなっちゃっていたというのも大きいですね。でも、「漫画家の倉田さんです」とか紹介されながら、なんにも描いてないから、これはいかんなと。このままだと、「元・漫画家の倉田さん」になっちゃう。それで、50代はもう一度、漫画を頑張ろうと思って、2年半前にペンタブの練習を始めたんです。

――最初はペンタブ教室に通われていたとお伺いしました。

倉田 20代の子にまじって、47歳がひとり(笑)。何度か通ったんですが、何か描きたいことがあるわけじゃないから、全然身につかないんですよ。まったく使い物にならなくてあきらめかけていたところに、7歳年下の女友達がペンタブ買って「これから漫画家目指す」って言いだして、2人で「ペンタブ会」を作ったんです。それで、ペンタブを使って仕事をしているイラストレーターのママ友に教えてもらうようになったら、みるみる上達して。やっぱり、仲間ってすごいんですよ。身に付き方の速度も深さもぜんぜん違うの。それで、最初に書いたのが『凶母』の1話なんです。試行錯誤して描いているから、実はレイヤーの数が多かったり、いま見ると無駄なところ、ダメなところがいろいろあるんだけど、「紙より向いてるかもしれない」って思ったんです。

――紙とデジタルの違いって、具体的にどんなところでしょうか?

倉田 わたし、基本的に雑だから、紙でもペンタブでもザーって線を描いちゃうの。ザッ、ザーって。紙の場合だと、直しをする場合にホワイトかけないといけないし、かければかけるほど汚くなっちゃう。それがペンタブだと、何度でも直せる。あと、左右の反転とか縮小とか、紙だと絶対できないことがペンタブだとできるので、初めから絵がうまい人よりも、わたしのように基本があんまりなっていない、絵が得意ではない人には向いているかもしれないなと思いました。紙で描くのはしんどいなっていうのがずっとあったけど、ペンタブだとそんなにしんどくないんです。

 

――エッセイ漫画のパイオニアであるくらたまさんが、まさかミステリーとは驚きました。

倉田 Twitterで恋愛4コマとか動物4コマとかやろうとしたけど、それって結局、今までやってきたことの縮小再生産なんですよね。まったく新しいことに挑戦しているっていう感覚はぜんぜんなくて。年齢を重ねていくと、どうしても縮小再生産になりがちだし、そうなると「若いころのほうがよかったね」ってなるのは、初めから見えているわけですよ。これから50代、60代になっても描き続けたいと思うんなら、それだと難しいなって。

 もともと才能のある人が同じことを続けても縮小にはなっていかないし、読者もついてきてくれる。でも、わたしはそうじゃないから、新しいことをしないとなって。そういう客観的な、自分に対する叱咤激励もありますよね。そんな中で自分が好きなジャンルって限られていて、恋愛、ホラー、ミステリー、SF…この4つかなって。

――ミステリーは、普段からよく読まれるんですか?

倉田 東野圭吾さんは全般的に好きだし、綾辻行人さんや、漫画だと伊藤潤二さん。あと、映画で言うと、この漫画にも出てくる『羊たちの沈黙』や、昔、テレ東の日曜映画劇場でやっていた『料理長(シェフ)殿、ご用心』もすごく好きですね。おどろおどろしい作品がすきなんですよね。首がないとか、猟奇殺人に興味を持ってしまうので、それを自分で描けるっていうのは楽しいですよね。

――本作のプロットは10万字超の小説形式で、かなり力が入っていますね。制作期間はどれくらいだったんですか?

倉田 3~4カ月くらいかな。とにかく最後まで書いてしまわないと絵には起こせないぞって。だから今、ネームにするときはすごく楽ですね。わたし自身、トリックが破綻しているところに目がいってしまうタイプだから、なるべくそこはつぶしていかないと、って意識しましたね。

――執筆にあたり、何か影響を受けた作品や事件などあるんでしょうか?

倉田 いや、特にないんです。殺人ありきで、どうやったら完全犯罪を成立させられるか、を頭の中で考えていきました。結局わたし、トリックが好きなんですよね。「なんで?」みたいなことを逆算して考えていく。わりと数学的な思考だと思うんだけど、そういうことを考えるのが嫌いじゃないんだなって、これをやり始めて初めて気づきました。

 漫画って、それぞれのキャラクターの心情を丁寧に描く人とか、いろいろなタイプがいるけど、わたしはどちらかというと、少なくても今は、トリック的なもので読者をあっと驚かせたいっていうのがありますね。

――まさに、新境地ですね。

倉田 だから『凶母』は、50歳の新人としてのデビュー作だと思って描いています。今までの連載って、最高8ページなんですよ。対してこの作品は1話24ページで、その3倍。圧倒的に長いし、その分、気合も入っています。今まで背景なんてほとんど描いてこなかったし、ギャグ漫画だからそれで成立していたけど、24枚もあると、ある程度、描き込まないともたないから、私にしてはかなり頑張って描いています。ペンタブがあるとはいえ、基本がなってないからあんまりうまくはないけど、こういうヘタくそな絵でシリアスものって、逆に面白味があるかなって、自分を鼓舞しているところですけど(苦笑)。

――16年前の未解決事件解決に乗りだす霊能者(と見せかけ、実は凄腕の催眠術師)・東郷は、くらたま作品の中でも珍しくかっこいい男性ですよね。登場人物にモデルはいるんですか?

倉田 雑誌に連載持っているとか、そういうあたりの設定は、認知科学者・苫米地英人先生を少し参考にさせていただきました。見た目に関しては、今まで描いてこなかったものにしたくて。知り合いにオールバックの人がいたので、面白いなって思って描き始めたんですけど……意外と難しいんですね(苦笑)。ほかのキャラクターに比べて、すごく時間がかかってしまっています。

――本作では「凶名」がストーリーの鍵となっていますが、倉田さんご自身は姓名判断や霊視といった真偽が定かではないものについて、どういったスタンスなのでしょうか? 某姓名判断サイトで倉田さんのお名前を調べたらすごく字画がよかったので、もしかして何か影響あるのかなと…。

倉田 そうなの!? 全然知らなかった! 私自身、そういうのはまったく信じていないので、だから逆に東郷は、実は催眠術師って設定にしてあるんですよね。あくまで現実の話で、霊が教えてくれるとか、前世がどうちゃらっていうスピリチュアルな要素は絶対に入れたくなかったんです。

――ロジカルに、ということですね。今回、電子コミックということで読者層も広がると思います。どういう人に読んでほしいですか?

倉田 やっぱり、ミステリーが好きな人に読んでもらいたいですね。犯人が誰なのか、どういうトリックなのか、いろいろと推理してみてください。

――今後の展開が気になるところですが、シリーズ化なども考えていらっしゃいますか?

倉田 実は、これとは別で、あと3本くらいネタがあるんですよ。そういう意味では、わたしまぁまぁやれそうだなって思っています。きちんと認められるかどうかは、これからですけど(笑)。

――ミステリー漫画で原作も作画もやっている人って、あまりいませんよね。

倉田 『だめんず』もそうでしたけど、ダメ男の取材をしてエッセイ漫画にして、っていうことをまだ誰もやっていなかったから、そういう意味で、“ほかの人がやらない漫画”という強みがありました。だから今回も、ほかの人がやらない部分って探していくと、これしかなかった。自分でミステリーの話をつくって、漫画にする。それも破綻なく。50代はミステリーでいきますよ!

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●『凶母(まがはは)~小金井首なし殺人事件 16年目の真相~』
Renta!コミックシーモアDMMブックスまんが王国ほか、各電子書店にて、10/26(火)より1~3話一斉配信(以降、月1話配信)
価格:150円(24ページ)
※10/26~11/8までのキャンペーン期間中、上記4書店では1話が無料で読めます!

●倉田真由美(くらた・まゆみ)
1971年、福岡県生まれ。一橋大学卒業後、「ヤングマガジン」(講談社)ギャグ大賞を受賞し、漫画家デビュー。自身の恋愛遍歴を元に2000年より「週刊SPA!」(扶桑社)にて連載を開始した「だめんず・うぉ~か~」がブレイク。漫画・エッセイなどの執筆活動のほかに、新聞・雑誌、テレビ・ラジオのコメンテーターとして、恋愛から政治問題まで幅広く"くらたま流"のコメントをしている。

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