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「スピリチュアル大喜利」開幕に困惑! 元2世が語る、カルト宗教信者に「説教された思い出」

「『カルト』と呼ばれる新興宗教の信者である両親の元に生まれた私は、子どもの頃からずっと(うさんくせぇ……)と思ってきた」――「脱会くん」ことライター・DJ2世がつづる、みんなに知ってもらいたい、2世信者だった私の日常と本音。

 スピリチュアルな人々には、スピリチュアルな理論が存在する。

 2世信者という境遇で生まれてきた我々は、周りの大人たちのその独特な理論にどう対峙してきたのか。今回は、そんな2世信者ならではの不思議な体験を紹介する

◎高校生の頃の変な思い出……仲良し3人組、おじさんに呼び出される
 これは私が高校生の頃、親が信仰していた宗教のイベントで起こった出来事である。私は当時よくつるんでいた、信仰心薄めの友達2人と一緒にいた。

 登場人物は、以下の通りだ。

 同い年仲良し3人組。みんな総じて信仰心がほぼない。Zさんは、サラサラヘアーな中年の信者。

 宗教イベントなので、もちろんお祈り的なことをする時間があるのだが、我々3人組はダラダラしているので、意図的ではないものの、席に着くのがほんの数秒遅れてしまった。会場内はざわざわしていたので、目立った行動ではなかったが、そこに目を光らせていたのが、このZさんというお時さんである。

 このZさんは教団の関係者で、一見すると優しそうだが、その半面、熱血漢なところがあり、謎の正義感が働くと、すぐに若者を呼び出す面倒くさい奴である。スピリチュアルな上に熱血漢。信仰心のない2世信者にとっては、最悪なタイプの大人である。

 祈りの時間が終わった後、ZさんがBくんに、「これから、会議室に来るように」と耳打ちしてきた。ほんの少し遅れただけなのに……。本当に面倒くさい。しかし、ここで無視するともっと面倒くさくなりそうだと思い、3人でZさんの悪口を言いながら会議室に向かった。

◎突然の「スピリチュアル大喜利」開幕!

 こんこんとドアを叩き、会議室に入ると、Zさんが中央の席で腕組みしている。我々は向かいの席に座った。

 静まり変える会議室で、Zさんが口を開く。

Z「なんで呼び出されたかわかるか」

 しーんと静まり返る会議室。

Z「A。どう思う?」
A「集合時間に遅れてしまいました」

 場の空気が重いので、みんな名指しされないとしゃべらない。

Z「そうだな。お前らはまず……最近のお前らは……」

 ここからZさんの説教が始まる。遅れた理由などを一通り聞かれ、「なぜお前らはダメなのか」を延々話し出す。ここまでは割と普通の説教と一緒、ただ口うるさい大人という感じである。しかしここから急に、カルト味がかかってくる。

 やはり宗教に生きる大人には、「何かスピリチュアルな良いことを言わないといけない」という心の動きがあるのだと思う。

Z「今、オレにはお前たちの守護霊様から『何が足りないか』を教えてもらっている。それが何なのか、当ててみろ。ちなみに2文字だ」

 我々3人の間に、「こいつ何言ってるんだ」という空気が流れる。急に「スピリチュアル大喜利」が始まってしまった。2文字で守護霊が言いそうなことを言わなくてはいけない!

Z「A。お前はどう思う」
A「わかりません」
Z「B。お前はどうだ」
B「わかりません」

 AもBも大喜利の面倒くささと、ヘタなことを言えない空気に呑まれて、何も答えない(なお、AとBは説教中、脳をオフにして死んだ魚の目になるタイプだ)。

Z「DJ2世、お前はどうなんだ」

 本人にわからないことを、守護霊越しにZさんが知っているなんて、どういう状況なんだという気持ちもある。しかし、何より「3人ともわからないと言い切ると、Zさん絶対キレる! 何か言わなくては!」と、私は脳をフル回転させ、とっさに頭に浮かんだ言葉を口にした。

DJ2世「か、覚悟……ですか」

 少年漫画のようなセリフを吐き、笑ってしまいそうになる自分の唇を噛んでぐっとこらえる。一瞬の沈黙が永遠のように感じられた。

 「覚悟」という言葉を聞いて、何を言い出すんだろう。Zさんはゆっくりと口を開いた。

◎回りくどいぞ、俺の守護霊

Z「ふん……。お前にそれが浮かんできたら、そうなのかもしれん。でもな、みんなの守護霊様が私に伝えてきた言葉はそれじゃない」

 そうなのかもしれないのかよ。まさか大喜利の2周目がやって来るのだろうか?

Z「私がお前たちの守護霊様に教えてもらったもの、それは『礼』だ」

 「礼(れ・い)」---! まさかのひらがな2文字だった。要はZさんは、ふてくされながら説教を聞く私たちを見て、「礼儀がなってない」と言いたいだけだったのだ。

 「覚悟」が的外れだったことがわかり、だんだん恥ずかしくなってくる。そもそもこの会話そのものが的外れなのではあるが。

 その後、Zさんの「礼儀がいかに大切か」という説教は続き、30分ほどで会議室から解放された。帰り道、3人の間で「ひらがななのかよ」という愚痴が延々と続いた。

 2文字なら「礼」ではなく、「礼儀」でいいんじゃないのか、オレの守護霊。いちいちZさんに言わせるなんて、回りくどいぞ。

◎スピリチュアルな大人の特徴

 宗教を通して、スピリチュアルな大人をたくさん見てきたからこそ、わかることがある。彼らはどんな場面でも、最終的にスピリチュアルな「いいこと」を言いたがる。

 こういった宗教のコミュニティにおいては、どんな説教やスピーチにもスピリチュアルなまとめが必要なのだ。そのほうがオシャレという文化があり、それなしで話が完結してしまうのは、どこか味気ない感じがしてしまうのだろう。

 というわけで、彼らの説教は、常に「普通の説教→スピリチュアル的になぜだめか→スピリチュアル的にどうしていくべきか」の構造になる。

 信者にとっては理路整然とした説教だろうが、信仰心のない2世だった私には、いちいち長いのだ。マジで。

 当時のことを思い出すと、「今の私だったらZさんになんと言い返すだろう」と考えてしまう。やはり真剣に教えを信じている人に、真正面から「おかしいだろ」と言うのは、腰が引ける。「スピリチュアルなものは絶対的に存在する」という大前提そのものに、理論の飛躍があるわけだが、それ以降の話は地続きというか、彼らなりには理屈が通っていたりするのだ。真剣に、キラキラしたまなざしでしゃべる人に物申して、話の腰を折ることはなかなできない。

 2世信者という生き物は、大人たちの「独特な理論」に違和感を持ちつつも、どうしても気を使ってしまい何も言えずにいる、そんな悲しき人種なのである。

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