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宋美玄先生に聞く「日本に無痛分娩できる施設が少ないのは、産みの痛みに耐えるべきだからですか?」

ByAdmin

Oct 27, 2021

Q.日本に無痛分娩できる施設が少ないのは、 産みの痛みに耐えるべきだからですか?
A.海外のように大規模なバースセンターに集約されておらず、 小さな施設が多いからです。

 昔から日本には「産みの苦しみに耐えてこそ本物の母親になれる」「出産の痛みぐらい我慢できないと母親になれない」といった風潮があるのは確かです。私は初産で通常の分娩を選びましたが、陣痛などの痛み自体に意味があるとは全く思えませんでした。第一そういった言説は価値観の押し付けでしかなく、その理屈だと男性は親になれませんからおかしいですね。しかし、日本で無痛分娩が普及していない主な理由は他にあります。

 もっとも大きな理由は、他の先進国は大規模なバースセンター(出産のための施設)があって集約化されていることが多いために無痛分娩にも対応しやすいのに比べ、日本は小さな産院や病院が多くて無痛分娩をするには人員が足りないことが多いためだろうと思います。

 そもそも無痛分娩とは、硬膜外麻酔によって痛みをとりながら行う出産方法です。麻酔分娩、または和痛分娩と呼ばれることもあります。完全に痛みがなくなることは稀で、3割程度に減るという感じです。本来、出産時にいきんだりできる状態を維持して痛みのみを取る産科麻酔には高い専門性が必要です。しかし、小さな病院に産婦人科医以外に麻酔科医が常駐しているということは少ないため、無痛分娩に対応できない施設が多いのです。

 たとえ無痛分娩ができるとしても、あらかじめ日にちを決めておいて陣痛を誘発する「管理分娩」が多く、すると子宮口が開きづらいため、お産が長引いたり、帝王切開になることもあるようです。ですから、できれば陣痛が起こってから無痛に対応してくれるところがいいでしょう。また、万が一でも麻酔によるトラブルが起こった際に対応できる施設かどうかも重要です。

 無痛分娩のリスクとしては、十分な陣痛が起こらない「微弱陣痛」によってお産が平均1時間程度長引く「遷延分娩」になるかもしれないこと、血圧低下のリスクが約30%増えること、血圧が低下すると赤ちゃんの呼吸が少し苦しくなるかもしれないことです。一方、メリットは、やはり痛みが軽減されるため、産後の回復が早いことでしょう。また、痛みに弱い人にもいい選択肢になります。

 残念ながら今のところ、どこでも安全に無痛分娩をするというのは難しいと言わざるえません。が、日本でも自由に無痛分娩が選べるようになるといいと思います。

<今回のポイント>
○  小規模施設では無痛分娩を行いづらい
○  産科麻酔には高い専門性が必要
○  無痛分娩のリスクとメリットの確認を

宋美玄『産婦人科医ママの妊娠・出産パーフェクトBOOK-プレ妊娠編から産後編まで! 』(内外出版社)
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