羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。
<今週の芸能人>
「美容系YouTuberじゃねえよ」オリエンタルラジオ・藤森慎吾
『サンデージャポン』(10月24日、TBS系)
カップルが安定していい関係を保つために、コツのようなものはあるのだろうか。
明治安田生命が主催する「理想の有名人夫婦」ランキング。2020年の調査では、俳優・三浦友和と山口百恵さんが15年連続で1位を達成し、殿堂入りを果たした。“よい夫”の代名詞ともいえる三浦は自著『相性』(小学館文庫)内で、夫婦ゲンカを一度もしたことがないと明かし、その理由を「私は素晴らしく相性の合う女性と出会い、結婚できたと言える」と書いている。つまり、ケンカの原因が生まれないほど相性のいい人と結婚することが、安定していい関係を保つコツということだろう。
もっとも、三浦は「相性がいい」ことに甘えているわけではない。三浦は結婚したときに「浮気をしない」ことを百恵さんに約束したと、『相性』内で明かしている。現代の感覚では、結婚する人が浮気をしないのは当たり前と思われるだろう。しかし、当時の芸能界では「女遊びは芸のこやし」という風潮が強かった。特に、売れている男性芸能人が不倫をしても、今のように責められることはほとんどなく、三浦の“宣言”はかなり少数派だったといえるのではないか。
そんな三浦の人柄に加え、この夫妻は金銭的な相性が特によかったと思う。
17年1月11日配信のウェブ版「女性自身」(光文社)によると、三浦は2人の子どもたちが生まれた頃、「仕事があまりなく、年に1本くらいしかない」と話していたが、そんな彼を百恵さんが責めることはなかったそうだ。18年12月24日配信の同サイトでも、家を建てたものの、仕事に波があってローンの返済が難しくなったという金銭的な苦労を伝えている。三浦はこの際、家の売却を百恵さんに持ちかけたが、「10万円なら10万円の、1,000円なら1,000円の生活をするだけよ」と答えたそうだ。それ以外にも、『相性』内では三浦が投資に失敗して、長いこと借金を払っていたことも明かされている。
夫の仕事がなくても、お金がなくても「身の丈に応じた生活をすればいいのよ」と言いたいのはやまやまだ。しかし、現実問題、生活するにはお金がいるし、三浦と百恵さんにはお子さんだっている。一方で、歌手であった百恵さんは引退後も歌唱印税が期待でき、節目ごとに発売されるアルバムもヒットを記録している。専業主婦で外に働きにこそいかないものの、百恵さんは無収入ではないわけで、これは三浦にとっても、夫妻にとっても大きな安心材料となったことだろう。経済的な助け合いができるからこそ、揉めごとも起こらない。これが三浦と百恵さんの「相性の良さ」ではないだろうか。
お互いの性質や価値観が合う「相性」をカップルに必要な要素と考えるのなら、破局してしまったが、田中みな実と藤森慎吾はベストカップルになれる2人ではないかと思う。
12年に「フライデー」(講談社)で交際が報じられた田中と藤森。しかし、15年の「女性セブン」(小学館)によると、藤森から切りだして別れることになったそうだ。15年といえば、田中がTBSから独立してフリーアナウンサーとして活動を始めた時期と重なる。
そんな田中は19年に発売した写真集『Sincerely yours…』(宝島社)の大ヒット以降、アナウンサーというよりも、「美のカリスマ」としての活動に重きを置いているようだ。若い女性向けの雑誌を見ると、田中のおススメするコスメを知ることができるし、最近では、下着メーカーと組んで、ガードルの開発にも携わった。
朝日新聞が主催する情報サイト「telling,」のインタビューを受けた田中は、自身の強いこだわりのために「納期に間に合わない」とメーカーに言われても、「それは、そちらの都合ですよね」とつっぱねるくらいの熱い思い入れで開発に当たったそうだ。仕事では強気な田中だが、今月12日に放送された『グータンヌーボ2』(関西テレビ)では、藤森と破局後、「立ち直るのに2年かかった」と話していた。
一方の藤森は、相方であるオリエンタルラジオ・中田敦彦がYouTubeに軸足を置くようになり、吉本興業を退社。藤森も彼に釣られるように吉本を辞め、現在はお笑い芸人というよりも、タレントにシフトチェンジしたように見える。かねてよりブラジルと日本のダブルの彼女がいることを公言していたが、今月24日放送の『サンデージャポン』(TBS系)では、プロポーズをしたが断られて破局したことを認め、「めちゃめちゃさみしい」と打ち明けている。
別れた2人に復縁しろというのは大きなお世話だが、田中と藤森は運命的な相性の良さを秘めているように感じて仕方がない。
田中はフリーに転身したばかりの頃、ある番組で、藤森は自分の美容上の努力に気づいてくれる存在だと話していた。ネイルを変えたとか、新しい口紅にしたなどという小さな変化に気づいて、ほめてくれるのだという。さすがに前髪を5ミリ切ったときはわからなかったようだが、変化に気づいてほめてくれる男性というのは、日本ではかなり少数派で、これは藤森の才能というべきだろう。
現在は、ほぼ美容家として活動している田中のモチベーションを上げるためにも、こういう感度の高い人がそばにいることは仕事の役に立つのではないか。ちなみに、美容家・君島十和子の夫(元皮膚科医)も妻の変化に敏感で、ほめてくれたり、「そろそろエステに行け」と勧めてくれると女性誌で読んだことがある。
くしくも、藤森も美容には造詣が深い。20年11月配信のウェブ版「MAQUIA」(集英社)のインタビューによると、スキンケアはもちろん、月に一度、サロンで眉毛の形を整え、ネイルサロンに通い、シミができたらレーザーを打ち、全身脱毛と歯の矯正やホワイトニングをしていることを明かしている。また、お世話になっている女性たちのために、シャネルの口紅を30本購入して配ったこともあるという。
自分だけがきれいになるのではなく、美容の楽しさを性別問わずにシェアするような行動がとれる藤森は、男性、女性双方に憧れられる「美容男子」として、新たなキャラクターを確立できるのではないか。
もっとも、男性が美容を楽しむというのは、ある程度の年齢の人には理解ができないことなのかもしれない。今月23日放送の『サンデージャポン』(TBS系)で、司会の爆笑問題・太田光に「おまえ、美のカリスマなの?」とたずねられた藤森は「美容系YouTuberじゃない」といなしたものの、太田に「田中みな実とやってること一緒」と茶化されていた。藤森本人がどう思っているかは別として、第三者から見て確かに方向性はとても似ている。
出会ったときは違う職業で、別れたはずなのに、何年かしてみたら、2人とも同じ分野の第一人者になっている。これを運命と呼ばずして、なんと言うのか。復縁すれば「美しすぎるカップル」「美を高め合うカップル」として、ビジネスにもつなげられそうだ。共通の興味を持ち、お互いを高めあえるという点で、田中と藤森は「相性が良い」と思う。
もちろん、一度別れた2人がよりを戻すのは簡単なことではない。16年放送の『旅ずきんちゃん』(TBS系)に出演したNON STYLE・井上裕介は、共演者である田中を目の前にして、藤森から恋愛相談を受けていたと明かしていた。井上いわく、藤森は田中の「ゲロ吐くぐらいのわがまま」に悩んでいたそうだ。
わがままな人と付き合うのは疲れそうだが、わがままな人に喜んでもらうために行動することを、自分の成長に変えられる人もいる。藤森がそのタイプに当たるかはわからないが、いっそのこと“修行”だと思って、もう一度、田中にトライしてみたらどうだろうか。おせっかいなのは百も承知で、ご提案したい気持ちでいっぱいだ。