「おいしいごはんが食べたい、でも自炊するのはめんどくさい!」そんなズボラ女子の救世主といえば、コンビニ・ファミレス・ファストフード! 毎日の食事をおいしく楽チンにするため、管理栄養士・猪坂みなみ先生に、さまざまなテーマに合わせた「おすすめメニュー」を聞いちゃいます。
お酒と魚は相性がいい! 魚介メニューが豊富な人気居酒屋をチェック
緊急事態宣言が解除され、飲食店も通常営業に戻り始めたということで、前回の焼き鳥チェーンに続き、今回も居酒屋を取り上げます! “お酒のつまみ”といえば、焼き鳥など肉メニューをイメージするかもしれませんが、魚メニューが豊富な居酒屋チェーンは結構多く、管理栄養士の猪坂みなみ先生いわく、アルコールとの相性もいいのだとか。
そこで今回は、魚介類を中心に扱う人気居酒屋チェーン「魚民」「磯丸水産」「庄や」を対象に、栄養面から見たおすすめメニューを聞いちゃいました!
――栄養面から見て、魚とお酒の相性はどうなのでしょうか?
猪坂みなみ先生(以下、猪坂) まず、魚はとても健康にいい食材で、心筋梗塞や脳卒中、大腸・肺・肝臓・膵臓などのがん、肥満、糖尿病などのリスクを下げるといわれています。実際に、1日あたり約60g魚を食べる人は、まったく食べない人と比べると、死亡リスクが12%も低いとする研究もあるのです。
魚介類から摂れる栄養素の代表としては、筋肉や髪の毛、爪などの材料となるタンパク質、DHAやEPAなどのオメガ3脂肪酸、ビタミンD、E、B12などのビタミン、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、銅、亜鉛などのミネラル、その他の機能性成分(アスタキサンチン、タウリン、メチオニン、オルニチン、アンセリン、バレニン)などがあります。もちろん、一種の魚からこれら全部が摂れるわけではありませんが、今の日本人に足りない栄養素がたくさん含まれているのは確か。
しかし、日本人は魚の摂取量が年々減少しており、2001年から15年で4割も減ってしまっているというデータもあります。自宅、特に一人暮らしの小さなキッチンで魚を調理するのは難しい部分もありますので、外食のときに魚介類メニューが豊富なお店を意識的に選ぶといいですね。
また、魚介類に含まれている栄養素で、アルコールと相性のいいものには主に下記のようなものがあります。
◎タンパク質
アルコール分解などの代謝を担う酵素の材料になるため、お酒を飲むときは不足しないよう、積極的に取り入れることが大切。魚のタンパク質は、植物性のタンパク質よりも体内で効率よく利用されるというメリットもあります。
◎タウリン
牡蠣や帆立などの貝類、イカ、タコ、カニ、カツオやマグロなど、魚の血合いなどに多く含まれるアミノ酸の一種。アルコールは肝臓で解毒されますが、タウリンには肝臓の能力を強める働きがあります。 摂取したタウリンは、1〜2時間後に血中濃度がピークになりますので、食事の前半に取り入れられると良いですね。
◎オルニチン
オルニチンも、肝臓の働きを助けてくれるアミノ酸。お酒をよく飲む人の疲労感やストレスを改善するという研究もあり、相性が良いと考えられています。シジミやマグロ、ヒラメ、チーズなどに多く含まれますので、積極的に選んでみましょう。
――それではまず、「魚民」のおすすめ魚メニューを教えてください。
猪坂 どこの店舗でも、「お刺身の盛り合わせ」はいろいろな種類のお魚が食べられて、さまざまな栄養素を摂取できるのでおすすめです。同店なら、「お造り3種盛り」(878円、税込/以下同)がいいですね。タウリンなどを含むマグロ、アスタキサンチンという抗酸化物質を含むサーモン、低脂質でダイエットにも向いている真鯛の3種類が摂れますよ。
また、「かつおと納豆のカルパッチョ」(768円)もおすすめ。かつおは肝機能を維持してくれるタウリンが豊富ですし、納豆のネバネバ成分であるムチンは胃粘膜を保護してくれるので、アルコールで胃が荒れるのを防いでくれます。
――続いて「磯丸水産」はどうですか?
猪坂 磯丸水産は、お刺身や貝のメニューが豊富ですね。「鮪の葱まみれ」(659円)は、DHAやタウリンを含むマグロと、ビタミンや食物繊維を含むネギが一緒に摂れるのでおすすめ。「荒木さん家のブリお造り」(769円)もDHAを多く含むブリを摂取できます。ブリほどではありませんが、アジもDHAの供給源として役立つので「鯵の姿造り」(659円)もいいですね。
「帆立刺し」(769円)や「つぶ貝刺し」(659円)、「白蛤の酒蒸し」(989円)、「浜焼きセット」(2,187円)も低脂質でタウリンなどを含む貝やイカ、エビを摂れるので健康にいいメニューだといえます。
――最後に「庄や」のおすすめ魚メニューを教えてください。
猪坂 「まぐろぶつ」や「かつお塩叩き」(いずれも750円)、「あじ刺身・叩き」(680円)、「海鮮サラダ」(650円)など、生でお魚を食べられるメニューが多く、DHAの摂取に役立つのでぜひ選んでほしいところ。 また、タウリンを豊富に含む「生カキ」(250円/1個)が食べられるのもうれしいです。
「鮪とアボカドのわさび醤油」(500円)は、魚の栄養だけでなく、強い抗酸化作用を持つビタミンEが豊富なアボカドも一緒に摂れるメニュー。ビタミンEには血行促進作用もあるので、手先や足先の冷えが気になる人にもおすすめです。また、肝臓の機能のサポートや、飲酒による疲労を抑える効果が期待されているオルニチンを多く含む「しじみ汁」(200円)も見逃せないですね。
――3店舗の中で一番おすすめしたいメニューと、栄養面から見た「最もおすすめできる店」を教えてください!
猪坂 やはり、生でお魚を食べられるメニューがいいので、一番おすすめしたいのは、どこのお店でも「お刺身」。その中でも、いろいろな種類の魚が食べられる「盛り合わせ」を頼むといいでしょう。
どのお店もメニューのバリエーションが豊富なので難しいですが、強いて1店舗を選ぶとするなら、生魚の食べ方として「刺身」「叩き」「サラダ」とさまざまなバリエーションが楽しめる点や、タウリン豊富なカキのメニューがあること、オルニチン豊富なシジミの汁物があることから、「庄や」がいいと思います。
とはいえ、魚の種類や栄養素が豊富なように、どの店舗も個性豊かなので、お好みの店で普段不足しがちな魚介類を味わってほしいですね。
(文:佐藤真琴)
猪坂みなみ(いのさか・みなみ)
管理栄養士。大学卒業後、大手食品メーカーにて商品企画や研究開発などに従事。ダイエットアドバイザー、料理研究家助手、医療ヘルスケアベンチャー企業の商品企画職等を経て、現在はLINEで気軽に取り組めるパーソナルダイエットプログラム「ダイエットナビ」の運営や、ヘルスケア領域の新規事業開発アドバイザリー、法人向けの健康経営サポート等を行う。
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