複数の女性からセクハラを告発され、8月にニューヨーク州知事を辞任したアンドリュー・クオモ(64)。彼の弟で人気ジャーナリストのクリス・クオモ(51)が、冠番組を持つ米CNNから解雇された。クリスは公平な立場でなければならないジャーナリストなのに兄の擁護を試みたと見られ、CNNはこの件について調査をしてきた過程の中で「直ちに契約を破棄すべき新事実」が判明したために解雇したと発表。家族の絆が強いイタリア系の“華麗なるクオモ一族”の崩壊だと、ネット上で話題になっている。
昨年のコロナ禍において抜群のリーダーシップを発揮し、英雄だとたたえられるようになったアンドリュー。彼の好感度が上がった要因のひとつは、弁護士で、2013年からCNNでアンカーを務めるクリスとのウィットに富んだ絶妙なやりとりだった。
CNNは、ジャーナリストであるクリスが、政治介入をしていると見られるのを警戒。11年から州知事を務めていたアンドリューについて、クリスが報じることを禁じていたが、コロナ禍においてはいろいろな意味でプラスになるだろうと解禁。どちらが母親の一番のお気に入りかで口論するなど、コロナ禍のピリピリした状況の中で交わされる実の兄弟ならではのユーモラスなやりとりに全米が注目するようになり、視聴率も上がった。
アンドリューが定例会見で新型コロナウイルスに感染したクリスを気遣う発言をしたかと思えば、クリスが番組でアンドリューのことを「アメリカで最高の政治家」だとたたえる。公私混同だと眉をひそめる人もいたが、毎日定例記者会見を開き、真摯に州民と向き合うアンドリューの姿に感動し、「#CuomoForPresident(クオモを大統領に!)」というハッシュタグがTwitterでトレンド入りするほど、アンドリューは多くの人から支持を得ていたため、好意的に見る人も多かった。
しかし今年に入り、アンドリューにセクハラ行為をされた女性が次々と告発。高齢者施設内での新型コロナ死者数の過少報告や、自分がコロナ禍においていかにリーダーシップを発揮したかについての本『America in Crisis』の執筆を“ボランティア”スタッフに命じ、本を書き上げる前金と売り上げを合わせて500万ドル(約5億円)を受け取る予定だったなど、権力の乱用が明るみになった。
8月になり、告発を受けて捜査を行っていたニューヨーク州のジェームズ司法長官が、「クオモ州知事はセクハラをし、連邦・州法に違反した」と発表。捜査報告書には弟のクリスが知事や側近にアドバイスしていたとも記載されており、公平な立場でなければならないジャーナリストが公私混同し、政治介入をしたとネットは大炎上。
アンドリューのスキャンダルをあまり報道しなかったCNNは、報道を規制しているのではないかとバッシングされるようになり、ワシントンポスト紙などの大手メディアが「CNNはクリス・クオモを調査すべきだ」とかみついた。
その流れを受け、CNNは外部の法律事務所に調査を依頼。11月29日にクリスがアンドリューの側近と交わしたメッセージなどが公開された翌日、「報道機関の理論、公平・公正に反することをした」としてクリスを職務停止にした。
12月4日、「直ちに契約を破棄すべき新事実」が発覚したとしてクリスの解雇を発表。クリスは、「CNNでの日々がこのような形で終わるのは本意ではない」という声明をTwitterで出した。職務停止処分を受けた翌日には自身のラジオ番組で「実に恥ずかしいが、自分の言動がどう思われているのか、理解できる。過去には謝罪もしたが、それは心からの謝罪だ」と発言しており、復帰を望んでいた矢先だった。
クリス自身も、CNNの前にアンカーをしていたABC局で上司だった女性に対し、「もうあなたは上司じゃないから、僕はこんなこともできるよ」とお尻をわしづかみにしたと告発されており、セクハラ兄弟だと大バッシングされている。
CNNは、同局のコメンテーターで「Zoom会議中に自慰行為をした」として昨年10月に米誌ザ・ニューヨーカーを解雇されたジェフリー・トゥービンを、今年6月に復帰させている。そのため、高視聴率を稼ぐクリスについても解雇して一定期間謹慎させた後、しれっと復帰させるのだろうと見る人が多い。クリスが何をしたのかは明かされていないが、CNNに即解雇を決意させるかなり悪質なことをしでかしたのは間違いなさそうだと、続報に注目が集まっている。