• Wed. Jan 26th, 2022

『ザ・ノンフィクション』やる気を見せても、すぐに「逃げ出す」人たち「スマホとホームレス ~無料Wi-Fiに集う若者たち~」

日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。12月12日の放送は「スマホとホームレス ~無料Wi-Fiに集う若者たち~」。

あらすじ

 都内で生活困窮者の支援を行う佐々木大志郎。困窮者のSOSはスマホから届くという。しかし携帯会社に通信費を払えないほど困窮しているため、端末を街の無料Wi-Fiにつなげている。

 炊き出しの場所、日雇いの仕事探しなど、今の生活困窮者にとってスマホは必需品であり、佐々木もウェブでの情報提供に力を入れ、炊き出しなどの日は自前でモバイルWi-Fiルーターや充電器を持参する。そうした支援活動を続ける佐々木のもとに、SOSを出した3人のホームレス青年を見つめる。

 28歳の山本は料理人だったが新型コロナで店が苦境に陥り、解雇され寮から追い出されてしまう。日雇いの仕事が見つからない日は、何も考えたくないとただひたすら街を歩き回っているという。夜は金があればネットカフェを宿にするが、公園で夜を過ごすこともある。

 生活は一層困窮し、一昨日から何も食べられない状況になり佐々木にSOSを出す。生活保護を申請し、家を決め、新たにスマホ修理の仕事を得る。当初は仕事にやる気を見せていた山本だったが、仕事への愚痴を番組スタッフにこぼすようになり、仕事を辞め、佐々木への連絡も途絶えてしまう。

 37歳の中村は日雇いの仕事をしていたが、携帯料金が支払えなくなり、日雇いのバイトも採用されない状況だという。母とは疎遠で、生活保護の申請を佐々木に促されるも、結局、その後連絡は途絶えてしまい、申請は行われなかった。

 佐々木は生活保護をためらう人が多い理由について、生活保護に良いイメージがないことと、申請に際し親族に照会連絡が行くことへの抵抗があると話していた。

 その後、中村と再度連絡がつながり、今度こそ申請を、となるが、またも約束の日に中村はすっぽかす。生活保護の受給は見送り、実家のある九州で頑張ってみると中村から連絡があった。

 31歳の佐藤は飲食業をしていたが失業。パニック障害とうつの治療を行いながら家族と同居していたが、家族仲がこじれ、出て行ってほしいと母親から言われ、佐々木のもとを頼る。新居を見つけ、フードデリバリーの仕事をしつつ、正社員を目指し就職活動も行っていた。

 なお、3人の青年ともに顔にボカシが入っていたが、持ち物や服装といった見た目にはいわゆるステレオタイプ的な「ホームレス」感はなく、こざっぱりとした印象だった。これはネットカフェや個室ビデオ店など、シャワーサービスを併設した、安く泊まれる場所が増加したことも影響しているという。

 路上生活者は減ったが、ホームレスが減っているわけではなく、見えにくくなっているだけと番組では伝えられており、都内の公園で行われた生活困窮者に向けた弁当の配布には長蛇の列ができ、スマホを手にした若者と思しき男女の姿も散見された。

 3人の生活困窮者が番組では紹介されていたが、今後について前向きな様子が映像で確認できたのは佐藤だけだった。山本は、新しい家も就職先も見つけたものの長く続かず、連絡を絶ってしまう。

 山本は番組スタッフとの受け答えなどちゃんとしている青年だったので、突然の放り投げるような行動との落差に驚いてしまった。

 しかし『ザ・ノンフィクション』では、生活困窮者とそれを支援する人たちを取り上げた回が過去に何度もあり、思い返してみると、 残念ながら今回のような「支援される人の雲隠れ」は「あるある」ですらある。

 さらに、そういった人たちは「確かにやりかねない」と危うさを感じさせる人は少なく、山本のように、むしろ「ちゃんとしてそう」な人が多い。そんな人が、いきなり投げやりな態度になっていき、投げ出し、関係者はびっくりしてしまうーーそんなケースは、過去に番組で何度も見ていた。

 「助けてくださいと手を伸ばし、支援者のバックアップで生活は再建された。めでたしめでたし」となることのほうが、今までの番組を見る限りは少ないのだ。

「逃げる」選択肢を選ぶのがとにかく早い

 今まで『ザ・ノンフィクション』で見てきた「逃げ出す人たち」は、最初はやる気を見せる。その気持ちに嘘はないと思うのだが、そこから逃げ出すまでが驚くくらい早い。つらいこと、困難なことに適応、対応する力が弱く、「逃げる」という選択肢を選ぶのが早すぎるのだ。

 つらいことや困難なことは誰だってイヤだと思うが、そこで「ふんばってみる」「愚痴をこぼしつつ乗り切る」「相談する」「転職する」など、ほかの選択肢もあるのに、いきなり「逃げる」を選んでいる印象だ。

 「逃げる」は重要な選択肢だと思うが、「逃げ癖」がつくのはまずいし、放り出すような逃げ方では信頼を失ってしまう。

 佐々木は連絡のつかない山本を案じていた。逃げ出してしまうのはあるあるすぎていちいち怒ったり失望したりしていられないのだと思うが、それでも手を差し伸べ続ける支援者の方たちの日々の活動を尊敬する。そして同時に、「逃げ癖」がついてしまうことの怖さを改めて感じた

 次週は「この町で人生を変えたくて ~結婚とお金と生きがいと~」。急速な発展を続ける中国・深圳。1700万人に膨れ上がった人口の平均年齢は33歳。活気あふれるその街でバーを営む「ゆき」のもとを訪ね、深圳で暮らす日本人たちの姿を見つめる。