覚醒剤の使用や密売などで逮捕起訴され、通算12年を塀の中で過ごした後、その経験を基にさまざまな活動を続ける中野瑠美さんが、女子刑務所の実態を語る「知られざる女子刑務所ライフ」シリーズ。
連載を読んでいただき、ありがとうございます
あっという間に2021年も終わってしまいますね。皆さんにとって、今年はいかがでしたか?
瑠美は連載を読んでいただけたことや、Paix²(ぺぺ)のお2人と座談会をさせていただいたことは、とてもうれしかったです。この場を借りて御礼申し上げます。
コロナのせいでお店がオープンできないのはつらかったですが、いろんな方に励ましていただき、これも感謝です。協力金はいただけても、お客さんやお店の女の子は離れてしまうと、元に戻るのに時間がかかってしまいますから、早く収束してほしいですね。
他人事ではない「母親の薬物中毒」
思えば2021年も、いろんな事件がありました。
人気のある芸能人など、いわゆる大物のクスリ(違法薬物)がらみの逮捕はなかったですが、学校の先生や消防士、区議会議員など、世間的に「ちゃんとしてる人」が目立ちました。
瑠美もなんですけど、好奇心とか「自分だけは中毒者にならない」という根拠のない自信とかから、クスリに手を出して抜けられなくなる人は多いです。特に「ちゃんとしてる人」の場合は、子どもたちに「悪いことをするな」と言えなくなりますから、相当まずいです。
子どもたちといえば、大津市で8月に18歳の少年が6歳の妹を暴行して死なせて傷害致死容疑で逮捕された事件は、お母さんの薬物中毒とネグレクト(育児放棄)が問題になりました。この事件は他人事やないと思いました。
私がパクられた(逮捕された)時は、私の親とパートナーがしっかり子どもたちを守ってくれていたので大丈夫でしたが、お母さんの逮捕は小さな子どもには悲劇でしかないです。この少年は9月に少年院送致されたそうで、お母さんは12月に入って麻薬取締法違反(使用)で起訴されましたね。実刑ですかねえ。
刑務所には、瑠美を含め、逮捕されて子どもと離れて暮らさざるを得なくなった女性がたくさんいてました。本はと言えば自分が悪いんですが、やっぱり子どものことを思うとムショでも涙が出てきましたね。少年院に行った息子が「おかんに会いたい」と言ってくれたのを後から聞いたことも、クスリをやめる理由のひとつになりました。
刑務所も相変わらず看守にどつかれたり、看守をどついたりの事件が多かったですね。こうゆうのは男子刑務所で、女子刑務所のいじめは暴力やなく、もっと陰湿なんですが、めくれて(発覚して)ないだけで、ホンマはもっとあるんでしょうね。
「へえ」と思ったのは、元モー娘。のゴマキこと後藤真希さんの弟くんのインタビューです。服役していた川越少年刑務所で凄惨ないじめを受けたそうですが、
普通はムショでは有名人は「芸能人」と呼ばれて独居なんですよ。なんでいじめられたんかなと思ったら、自分から「1人でいるのがダメな人間なので『独居だと精神的にキツいので、雑居に移してください』と刑務官にお願いして許可して」もらったそうです。独居のほうがラクやのに……。案の定、真冬に水を2リットルくらい飲まされるとかのイジメを受けたそうです。
ほかにも「トイレ用のブラシで歯を磨けとか、施設内の除草作業で見つけたカブトムシの幼虫を食べろとか、部屋長の精液を掛けたご飯を食べろとか」もあったそうですが、弟くんはそういういじめは受けてないようです。
このニュースはもっと大々的に取り上げてほしかったですね。「刑務所に入りたい」といって事件を起こす人には、ぜひ知ってほしいです。ムショに行きたいからと誰かを犠牲にするなんて、「ダメ。ゼッタイ。」です。
そして、もうひとつのニュースは、「懲役」の制度が変わるかも、の件です。
知りませんでしたが、ムショで「(刑罰としての)刑務作業」だけでなく、社会復帰や再犯防止のプログラムも受けられるように、法律の改正が進んでいるそうです。
刑務作業のある「懲役刑」と、刑務作業のない「禁錮刑」を一緒にして、認知症が進んでいるお年寄りとか体力が有り余っている若い人とか、それぞれに合った刑務作業や再犯防止の教育などの時間を割り振るようです。たしかに刑務作業しかしていないと、出所後が大変です。
しょうもない刑務官も多かったですが(笑)、「新しい被害者を出さないためにも懲役に寄り添って、社会復帰を支援したい」ちゅう刑務官もちゃんといてますから、社会復帰はがんばってほしいです。
今年もいろんな事件がありましたが、ムショも少しずついい方向へ行っていると思いたいですね。
来年もよろしくお願い申し上げます。よいお年をお迎えください。