今や日常生活において、かかせないツールとなっているコミュニケーションアプリ「LINE」。かつては子どもの送迎時に、ママたちが立ち話をしているような光景が見かけられたが、時間に追われ忙しく過ごす共働き世帯が増えた今、ママたちのコミュニケーションの場は、LINEのグループチャットになっているという。そんな、ママたちの「グループチャット」から浮き彫りになった、彼女たちの悩みや、苦悩、気になる話題を覗いてみる。
年末年始ともなると、“義実家への帰省”について頭を悩ませるママたちが多いようだ。昨年は、新型コロナウイルスの感染拡大により、政府は県をまたぐ移動を控えるよう呼び掛けていた。しかし、今年は10月に首都圏をはじめとする19都道府県に発令されていた緊急事態宣言が解除され、新規感染者数も減少していることから、帰省を計画している人も多いだろう。今回は、義実家への帰省に悩むママのエピソードを紹介する。
コロナ禍で2年間、実家への帰省はなし
明子さん(36歳・仮名)は、都内で5歳になる娘を育児している。愛媛の実家には、ここ2年ほど帰省していないそうだ。
「大学進学で上京をしてから、ずっと東京に住んでいます。気づけば、地元に住んでいた期間と、こっちに来てからの期間が同じくらいになっていました。子どもが赤ちゃんの頃は何度か帰省をしたのですが、コロナ禍以降、実家には帰っていません」
対して明子さんの夫の実家は千葉県にあるため、コロナ禍でも2カ月に1度は帰省しているという。
「我が家から夫の実家までは、車や電車で片道1時間ちょっと。子連れで帰るのは大変ですが、新幹線に乗るほどの距離ではなく、義母から『今週、こっちに遊びに来ない』という電話がよくかかってくるため、断りきれないんです」
義両親は近くに住んでいるため娘の誕生日や保育園の行事などに参加できているものの、明子さんの両親は遠方に住んでいるため、娘と会う機会すら少なく、「不満に感じている」という。
「うちの両親はもう高齢だし、地元を出たこともほとんどないので、東京に気軽に来られないのは仕方ないと思っています。でも、娘の誕生日に夫の実家に帰ったり、保育園の行事に義両親が来たりすると、なんだか娘を取られた気分になってしまって……」
そんな明子さんは、仲が良いママ友との間で、今年の年末年始は実家に帰省するか否か、話題になったという。
「まだコロナ感染への不安が続いているので、ママ友の中には帰省をどうするか悩んでいる人も多いですね。今は感染者数が減っているので、仕事の休みを前倒しにして、ピーク時を避けて人が少ない時に帰省をするというママもいました。私のように、実家には帰省しにくいのに、義実家には帰らなければいけないという人はほかにもいたので、『なんだか不平等だよね』とLINEでメッセージを送り合っています」
なお、明子さん自身も、実家への帰省を迷っているという。
「私も今年は帰省したかったんですが、地元の感染者数がゼロということもあって、親もあまり歓迎していないんです。何日か実家に滞在したいと考えていたのですが、母親は喘息気味ですし、知らぬ間にコロナをうつしてしまったらと思うと、帰るのをためらいますね」
明子さんいわく、コロナの影響で、周りのママ友たちも、距離が近いほうの実家との付き合いが濃厚になっているという。
「娘と仲が良い男の子のママによると、コロナ禍ということもあり、七五三のお参りは、近所の神社を訪れて参拝したそうなのですが、関東に住む夫の両親は来られたけれど、地方に住む自分の両親には来られず、写真を送るだけになったらしいんです。そんな話を聞くと、うちも2年後の七五三はどうなるのかと今から不安ですね。『このまま、私の親だけ祝い事に参加できないのかな』って思うと、なんだか義実家に行く気が失せてしまって……」
明子さんは、義実家への帰省中も、「コロナの感染予防対策で外出を避け、家の中で過ごすことも多くなりがち」と語る。
「義母は外食を嫌うので、お寿司をよくテイクアウトしています。買い出しなどに行く際も、義実家の車に乗って移動するので、義父母とずっと一緒。さらに一度義実家に行くと、長い時間滞在してほしいみたいで、『泊まっていきなさいよ』と毎回引き留められるんです。義母は『またいつ感染者数が増えるかわからないから、今のうちにゆっくりしていってほしい』と言うのですが、気軽に行き来していた頃と比べて、滞在時間が延びていることが苦痛です」
そんな明子さんは、ママ友数人とランチをした際に、どちらの実家にもこの2年間帰省していないというママから、「今、長距離移動するのは良くない」と言われたそうだ。
「ママ友の中には、コロナが流行してから、近所のドラッグストアやスーパーにしか出かけていないという人もいるんです。仲が良いママ友からは、『地方の実家に帰ろうか悩んでいるって話は、あまりしないほうがいいかもね』とLINEが来て以来、同じ境遇の人にしか話さないよう気を付けています」
ママ友間では、「旅行に行く」という話題も出しづらいという。そのため、遠方の実家への帰省は隠さざるを得ない状況で、子どもにも「実家に帰る」という話は友達にしないよう、言い聞かせなければならないようだ。
「子どもを介して長距離移動を反対しているママに帰省することがバレたりしたら反感を買いそうですし、バレないように気を使わなければならず、面倒ですね。それに、電車や車で1~2時間の場所に実家があるママ友は、気軽に子どもと一緒に帰省できる一方、私は飛行機や新幹線に乗らないとなかなか実家には帰られないので、うらやましく感じることは多い。私の親も、『会っていない間にどんどん孫が大きくなっちゃう』と寂しがっていますね。同じように義実家への帰省をしなくても良いならいいのですが、義実家には年末に顔を出さねばならず、モヤモヤしてしまいます」
そんな明子さんは、同じような悩みを抱えるママ友とLINEを送り合っているという。
「ドラマの話や『M-1グランプリ』といったお笑い番組など、帰省には関係ない話題でお互いに気を紛らわせています。今までみたいに自由に出かけられるのであれば、『年末の義実家への帰省はめんどうだね』という話で済んだのですが、コロナ禍で自分の実家には帰られなかったり、『旅行に出かける』とは言いにくい状況もあって、余計にストレスが溜まりますね」
明子さんは、同じ境遇のママ友と悩みを共有することで、「自分だけではないのだと安心できる」そうだ。コロナ収束までの間は特に、周りのママ友と交流を持ち互いの愚痴を吐き出しながら、なるべくストレスを溜めずに生活していきたいものだ。