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覚醒剤で懲役通算12年の元女囚と、矯正施設ライブ504回“受刑者のアイドル”が見た「刑務所の実態」

 サイゾーウーマンで好評連載中「知られざる女子刑務所ライフ」の元女囚・中野瑠美さんと、20年以上刑務所や少年院などでのコンサートを続け、その回数504回を数える“受刑者のアイドル”Paix²(ペペ)の2人の座談会が実現。3人が見てきた刑務所内の実態を語ります。

和歌山刑務所でPaix²のライブを体験した中野さん

――Paix²のお2人は、2000年に鳥取刑務所で『第1回Prison コンサート』を開催されてから、全国の少年院など刑事収容施設で504回もライブ演奏を続けてこられました。中野さんは、服役中に獄中でライブを体験されているそうですね。

中野瑠美(以下、瑠美) はい、和歌山刑務所でしたね。あの頃、お2人はもうムショで有名人で、とても楽しみやったのを覚えています。でも、今日の座談会のほうがぜんぜん楽しみでした。あの頃は舞台の「下」からお2人を見上げてたのに、今日は同じ目線ですから。お2人から座談会のオファーをいただいた時は、めっちゃうれしかったです。

Manami ありがとうございます。私たちも瑠美さんのファンなので、前からお会いしたいと思っていました。

瑠美 照れますねー。なんかすごく不思議な気持ちと、うれしい気持ちでいっぱいです。うちのお店(大阪府堺市・ラウンジ祭)のカラオケでも、Paix²の代表曲の「元気だせよ」とかは盛り上がります。私も歌っていますよ。
https://www.youtube.com/watch?v=un3Ieou9CqU&t=1s 

Megumi ありがとうございます。感想をお手紙でいただくことは多いのですが、直接お聞きする機会は少ないので、とてもうれしいです。

瑠美 たしかに懲役(受刑者)は、慰問に来られる人とは話せませんね。

Manami そうなんです。でも、感想文でもうれしいですね。以前に「Paix²は俺たちのことをわかってくれている」というお手紙をいただいたことがあり、わかり合うっていいなあと思いました。

――一般のライブと違って、プリズン・コンサートは制約がありますね。

Manami はい。基本的には、膝に手を置いて静かに聴くのが規則です。立ち上がるのはもちろん、腕を上げるのもダメで、終わった時の拍手だけが許されているんです。初めてプリズン・コンサートを開催した時は、その規則を知らなかったので、「受け入れてもらえなかったのかな?」と落ち込んでしまいました。

 でも、あとでいただいた感想文を読んだら、実はとても好評で、「演奏中は騒いではいけない規則」だったことも知りました。今では演奏中に手をたたいたり、拳を突き上げたりして盛り上がってもらうこともあります。

瑠美 あんまり盛り上がるとアカンみたいやけど、「Paix²なら大丈夫」みたいなところはあるんでしょうね。

――信頼関係があるんですね。女子刑務所と男子刑務所の違いなどもあるのですか?

Megumi ありますね。最初の頃は、男性よりも女性の刑務所に気を使って、「服装は派手にしたらいけないかな?」とか思っていたんです。でも、実際には女子刑務所のほうが規制は厳しくないんですよ。たとえば女子刑務所では演奏中にステージから下りることもできますが、男子刑務所は無理です。

瑠美 危ないですもんね。所長さんにもよると思いますが、男子刑務所ではステージから下りたり握手をしたりはムリですね。

――なるほど。たしかに女性のほうが大騒ぎはしないイメージがありますね。静かに見ていても、慰問は楽しみですよね。

瑠美 はい、慰問は楽しみでした。誰ともしゃべらずに音楽や講話を聴いていればいいのでラクやったし。Paix²は、みんなが楽しみにしてましたよ。今日の座談会のこともムショ仲間に自慢して、うらやましがられてきました。

Paix² ありがとうございます(笑)。

――慰問はお菓子も出る一大イベントだそうですね。

瑠美 そうです。ムショでは、どんなにお金を持っていても食べ物は買えなくて、出されたものだけを食べるんです。お菓子を食べられるのは、慰問や運動会などのイベントの時だけなので、とても楽しみなんです。

――ほかに、心に残る慰問はありましたか?

瑠美 あるコンサートで、曲の歌詞カードが配られたことがありました。コンサートの後にゆっくり歌詞を読むことができて、その歌をもっと好きになりましたね。

 あとは八代亜紀さん! きれいな上に、めちゃくちゃいい匂いがしました。みんなで「なんの香水やろ?」と話していました。ムショは香水もつけられないので、「早く社会復帰して、やり直そう」「香水や化粧品を買えるようにがんばろう」と思えました。

Paix² 参考になりますね。

――最近は、「刑務所に入りたい」とか「死刑になりたい」と考えて事件を起こす例が目立ちますが、どう思われますか?

Megumi 刑務所に入りたくなる前に、誰かひとりでも愛を感じられる人と出会えればいいのでしょうが……。こればかりは自分で見つけないと、とも思いますね。

瑠美 刑務所に行きたくて事件を起こした人は、収監されて、めっちゃ後悔してるのとちがいますかね。

 女子刑務所はまさに「女の世界」ですから、いじめはめちゃくちゃしんどかったです。所長は男性が多いですが、あとはほぼ女性ですからね。本にも書きましたけど、懲役同士のいじめは陰湿です。歯ブラシを便器に入れられたり、化粧水のボトルにおしっこを入れられたりと、それはもうひどいもんです。

 男子刑務所は、もっと直接の暴力もありますから、しんどいと思いますよ。

――ひどいですね。

瑠美 と思います。でも、懲役の問題は、むしろ出所後ですよ。無期懲役や死刑判決はともかく、有期刑の人は、出所後はますます居場所はないですよ。前科者を雇ってくれる職場は、まだ少ないですからね。

 それに、獄中(なか)で刑務作業をすることでもらえる「作業賞与金」はもともと少ないから、すぐに使ってしまいます。シャバでは、お金がないとどうにもならないでしょう。

瑠美 あと、保護司さんとの相性もあります。仮釈放されたら保護司さんの指導を受けなくてはならないのですが、保護司さんは元教師とか元議員さんとかのエリートばっかりで、不良になる人の気持ちなんかわからない。それでも定期的に会って話を聞かされるのはイヤでしたね。

 そういうのがわかっている私が、保護司になりたいと思っています。Paix²のお2人は、保護司もされていてうらやましいです。

Megumi はい、2014年に2人で法務省から保護司に任命されました。

――瑠美さんのような経験のある方が保護司になったら、保護観察処分を受けている方も安心できるでしょうね。

瑠美 そうだといいですね。
(後編に続く)

【プロフィール】
中野瑠美(なかの・るみ)
懲役通算12年(すべて覚醒剤事件)の体験を綴ったサイゾーウーマンの連載が好評。現在はラウンジ経営者やユーチューバーとしても活躍する。連載記事を2018年に『女子刑務所ライフ!』(イースト・プレス)として刊行。
オフィシャルブログ:https://profile.ameba.jp/ameba/rumi1209n/
YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCBAPOeHNGhG5zznedulARog

Paix²(ぺぺ)
鳥取県出身のManami(北尾真奈美)とMegumi(井勝めぐみ)による女性デュオ。「Paix」(発音は「ペ」)はフランス語で「平和」の意味。2人なので二乗して「Paix²」に。アルバムに『しあわせ』(2015年、日本コロムビア)、著書に『塀の中のジャンヌ・ダルク Paix²プリズン・コンサート五〇〇回への軌跡』(20年、鹿砦社)。14年9月に法務省より保護司任命、15年4月に同省矯正支援官を委嘱されるなど矯正支援でも活躍中。
オフィシャルサイト:https://paix2.com/