オンナの花形職業として羨望を集める存在ゆえか、何かと穿った見方をされがちな女子アナ。そんな彼女たちをウォッチし続けるライター・仁科友里が、2021年に話題を集めた女子アナについて考察を繰り広げます。
毎年12月初旬に発表される、オリコン社主催の「好きな女性アナウンサー」ランキング。ここ数年、盛り上がりに欠けるように感じるのは、私だけだろうか。
「若者のテレビ離れ」が叫ばれ、女性誌の休刊も相次ぐなど、女子アナをスター化させるメディアのシステムそのものにほころびが出ていることも、このランキングが年々盛り上がらなくなっている原因かもしれない。
しかし、メディアにとって、女子アナの知名度というのは魅力的なはずで、特に彼女たちの持つ「知的なイメージ」というのは、ほかのタレントと一線を画す大きな武器といえるだろう。では、「知的なイメージ」を保ちつつ、女子アナがさらなる飛躍を遂げるにはどうしたらいいのか。2人の女子アナを例にして、頼まれもしないのに考えてみたい。
宇垣美里アナウンサー(元TBS):「傷つきやすいキャラ」を生かす
宇垣美里アナといえば「コーヒーぶちまけ事件」を覚えているだろうか。
2018年3月発売の「週刊現代」(講談社)が報じたところによると、当時、レギュラー出演していたTBSの情報番組『あさチャン!』のプロデューサーから降板を告げられた宇垣アナが、激怒してコーヒーカップを壁に投げつけた……という“事件”のことだ。
しかし、のちに『ダウンタウンなう』(フジテレビ系)で宇垣アナ本人がこの件に言及。このプロデューサーは降板を1~2週間前に告げたそうで、宇垣アナは「もっと先に言うべきだし、失礼」と憤慨。その際、プロデューサーはコーヒーを渡そうとしたが、宇垣アナは「あなたからもらったコーヒーは飲めません」と、その場で流しに捨てただけだと主張し、「コーヒーを“投げつけた”」という週刊誌報道を否定していた。
さらに、「私とプロデューサーしか知らない話が、どうして外に出るの? TBSの民度が知れる」と古巣を批判。この話を聞いた同番組司会のダウンタウン・浜田雅功も「おまえ、すげーな」と驚いていたが、ここまではっきりと組織を批判する人は少ないと思う。
おそらく、宇垣アナは自分に後ろめたいところがないからこの話をしたのだろうが、TBS側が聞いたらどう思うのか。決していい気分はしないだろうし、内部での話し合いをバラされるリスクがあるとして、今後、仕事を頼まないと判断される可能性もないとはいえない。
一方、今年30歳を迎えた宇垣アナは、メンタル面の変化を明かしていた。
12月26日に配信された「Yahoo!ニュース Voice」の記事では、評論家・荻上チキ氏のインタビューに答える形で、「今まで正論をぶつけることで『言ってやった!』と思っていました。しかし、30歳になって、相手を言い負かして恨みだけが残ってしまっては誰も幸せにならないということに気づきました」と語っている。
会社員のように組織に属している場合、所属する組織の上司に評価されることは重要だが、フリーランスのように雇用と収入が不安定な立場で安定して仕事をしたいと思ったら、“取引先”と“味方”は多いに越したことはない。仕事だから時には“取引先”との間にトラブルが発生することもあるだろうが、遺恨を残すような言い方をすると、仕事が減ってしまう可能性もないとは言い切れず、自分が損である。
なので、「自分が正しいからといって、相手をやりこめない」という決意は、フリーランサーとして基本的にはプラスの変化だろう。しかし、ひろゆき氏の“論破”がウケていることでもわかる通り、世間には「相手をやりこめる姿を見たい」人も多くいるわけだ。テレビで堂々と古巣を批判できる宇垣アナの“オンナひろゆき”的な個性は、ほかの誰にも持ち得ない、貴重なものといえるのではないだろうか。
そんな宇垣アナが急に論破をやめてしまったら、明石家さんまがよく言う「個性死んじゃう」ことになってしまわないか。
それでは今後の宇垣アナは、どんな個性を出していけばいいのだろうか。同インタビューでこんな発言もしていた。
「『あのとき聞き流しちゃったけど、あの言葉に対しては怒ってよかったんじゃない?』と、そのとき怒らずにニコッとしてやり過ごした自分がすごく不甲斐ないと思ってウジウジしたり、一方で(中略)『あの言い方はなかった。もっと丁寧で優しくて人を傷つけない言い方があった』と反省したりするんです」
この発言から考えると、宇垣アナは「傷つけられること」と「傷つけること」を恐れているのではないだろうか。そしてこの「傷つく」ことに敏感なセンスというのは、ものすごい金脈だと思うのだ。一般の女性から見れば、宇垣アナのように恵まれた人でも傷つくんだ、傷ついていいんだと励まされたような気持ちになり、特に同性のファン層の拡大が期待できる。
実際に仕事で接する人や組織に対しては「相手を言い負かさない、恨みを買うようなことをしない」ことを信条としながら、オモテでは「傷ついた自分」をどんどん出していく。
12月9日配信のウェブ版「フラッシュ」(光文社)で「本当に性格のいい局アナ」ランキングを発表していたが、ウラオモテをうまく使い分け、周りのスタッフに「テレビではあんなことを言っているけど、すごくいい人だよ」と思われると、さらなる飛躍が期待できるのではないだろうか。
テレビを見ない人が増え、女子アナの“アイドル化ブーム”が終焉に向かうとするのなら、より存在感を発揮するのは「NHKの女子アナ」ではないだろうか。
NHKは公共放送であることから、災害時や選挙の際はNHKのニュースを見る人も多いだろうし、ドラマの低視聴率化が叫ばれても、NHKの連続テレビ小説、通称“朝ドラ”は高い視聴率を誇っている。一方、朝の情報番組『あさイチ』で“朝ドラ受け”をした同局の鈴木菜穂子アナウンサーが、衝撃の展開に涙を見せたことがネット上で話題となり、好意的な反応を得ていた。このように、NHKの女子アナが“軟化”する傾向は、今後も続くと思う。
そんな中、「世界のオザワ」こと指揮者・小澤征爾の息子にして、俳優・小澤征悦と同局の人気者・桑子真帆アナウンサーが結婚を発表した。『徹子の部屋』(テレビ朝日系)に出演した征悦によると、もともとは両親が桑子アナのファンだったそう。『突然ですが、占ってもいいですか?』(フジテレビ系)に出演した際にも、「初めて目が合った時に、彼女の目の奥にすーっと吸い込まれていく感覚があったんですよ。話す前ですよ」と、家族総出でベタ惚れなことを明かしていた。
桑子アナにとっても、小澤家の一員になることはプロフィール上の強みとなりそうだし、それこそ「知的なイメージ」が強固になるだろう。だからこそ、気を付けなくてはならないこともある。それは、オトコの影だ。
写真週刊誌「フラッシュ」(光文社)は今年1月、「セフレ9年 男性が自嘲告白」として、過去に桑子アナと関係があった男性の告白を掲載した。実際に読んでみるとなんてことはない、学生時代の話であり、セフレだった確たる証拠があるわけでもないので、単なる寝言のようなものだと私は感じたが、桑子アナに限らず、こういう報道は出ないに越したことはないだろう。
また、桑子アナといえば、「言い間違い」が多いことでも知られる。18年の平昌冬季五輪では、「開会式」と「閉会式」と言い間違い、その後、テレビでしばらく姿を見なくなったことから、ネット上では「言い間違いに対する、ペナルティではないか」という臆測が広がった。
そんな中、プライベートで親交のある俳優・和田正人が「ここにいますよ」と、桑子アナの画像をツイート。桑子アナは遅めの冬休みを取り、休暇を満喫していたというのが真相のようだったが、2人の親密そうな姿から「どんな関係なのか」と疑う声も出た。
人は誰しもバイアスをかけて物を見てしまう。「言い間違い」だけでもアナウンサーとしてはよろしくないが、ここに「異性の友人と親しくしている写真」が加わると、「仕事でミスをしても気にしないでオトコと遊んでいる」とか「2人は不倫関係なのではないか?」と疑う人も出てくるだろう。
異性の友人と親しくするなという意味ではなく、ウラで親しくてもいいから、画像などの証拠をオモテに出さないほうがよい、ということだ。桑子アナは判断力が甘めかつ緩めで、そこが人気の秘訣かもしれない。しかし、既婚者となったわけだから、やはり守らなくてはいけない一線もあるはずだ。
NHK出身、世界のオザワ家という知的ブランドを持つことは、フリー転身の際も大きな武器となりえるだろう。しかし、そういう人の異性問題というのは、必要以上に叩かれやすい可能性もあるので、リスクにもなりうる。気をつけすぎるくらい、気を付けるくらいでちょうどいいのかもしれない。
【まとめ】
「あの人は裏表がある」という言い方をすることがある。表向きの態度と内面が違うことを非難する意味も含めた表現だが、人前に出る商売の人に「ウラオモテ」がなかったら、やっていけないのではないだろうか。SNSが身近にある現代、はっきりと「ウラオモテ」を作ることが、女子アナのメンタルを守ることにつながるような気もする。女子アナのみなさんにおかれましては、健康に気を付けて、ますますのご活躍をお祈りしたいものだ。