忙しさや疲れ、気温差などで、体調管理をしているつもりでも、うっかり風邪をひいてしまうことは誰にでもありますよね。風邪は、ウイルスなどが体に侵入したことで起こる熱や咳、喉の痛みなど、さまざまな症状をまとめたものを指します。
風邪のウイルスは約200種類以上あるといわれており、今のところ薬はありません。つまり、風邪を早く治すためには、薬に頼るよりも自分自身の体の持つ働きを高めることが大切といえます。そこで今回は、風邪をひいたときのNG行動や素早く治す対処法、おすすめの漢方薬を薬剤師がご紹介します。
1.本当はNG! 風邪をひいたときに「やってはいけないこと」
まずは、風邪をひいたときにやってはいけないことを3つご紹介します。
1-1.悪化するまで休まない
風邪をひいても、仕事などがあるとついつい頑張りすぎてしまう人は多いはず。しかし、「風邪が悪化したら休もう」という考えは危険です。悪化する前にしっかり休んだほうが、結果として治りは早くなります。
風邪をひいたときには無理をせず休み、特に睡眠時間をしっかり確保しましょう。質のよい十分な睡眠をとることで体の持つ働きも高まり 、風邪のウイルスを早く撃退できます。寒気を感じるときは、布団をしっかりかけて、ゆっくり休みましょう。
1-2.薬ですぐに熱を下げる
風邪の症状がつらいと、すぐにでも改善したいと思いますよね。しかし、風邪をひいてしまったときに薬などで無理やり症状を抑え込むと、かえって風邪をこじらせてしまうことがあります。
風邪をひいたときに熱がグッと上がるのは、私たちの免疫機能が風邪のウイルスや病原体の増殖を防ぐための防御反応でもあります。そのため、解熱剤を使ってあまりにも早く熱を下げてしまうのは、かえってよくない場合があるのです。
1-3.サウナで汗をかく
風邪のときに「サウナで汗をかくと早く治るのでは」と考える方もいますが、あまりよい対処法とはいえません。サウナで汗をたくさんかいても、風邪の症状が和らぐことはなく、かえって体温調節機能を混乱させたり、体力を消耗させたりしてしまうことも。無理はせず、休養を大切にしたほうが風邪を早く治せます。
風邪をひいてしまったときは、初期の対応が肝心。まずは安静にして、しっかりと水分補給をしましょう。その上で行ってほしい、正しい対処法をご紹介します。
2-1.体を温める
風邪のひきはじめや、熱が上がってくるときは、体がゾクゾクして寒くなることがあります。このような状態のときは、まずは体温を逃がさないために体を温めましょう。上着を1枚多く着る、室内を温める、保温性の高いパジャマを着る、布団を重ねてかけるなどして、体を温めるように努めてください。
2-2.水分補給で不足したミネラルや電解質(イオン)を補う
風邪をひくと熱が出たり、汗をかいたりして脱水状態になりがちです。脱水を防ぐために、水分補給にも気を付けましょう。ただ、たくさん水を飲めばいいわけではなく、失われたミネラルや電解質(イオン)も上手に補う必要があります。そのため、水分補給には経口補水液やスポーツドリンクなどがおすすめです。
2-3.胃腸に優しい食べ物で栄養補給をする
胃腸の働きが弱くなりやすいので、消化器官に負担をかけないように、油ものや刺激物は控えましょう。しかし、食事を減らすと栄養素が不足してしまうため、様子を見ながらおかゆやうどんなどを少し食べて、ビタミンやミネラル、たんぱく質も補うように心がけてください。
発熱、鼻水、のどの痛みなど、風邪のひきはじめには漢方薬も有効です。漢方薬は風邪のウイルスを退治するのではなく、体の熱をコントロールすることなので、結果として状態が改善していきます。また、漢方薬を飲むことで、風邪のウイルスに負けない体をつくっていけるのです。
風邪のひきはじめに症状に合った漢方薬を使用することで、その後の治り方が変わってきます。漢方では、寒気がする「寒い風邪」と、喉の痛みや炎症が起こる「熱い風邪」の2つに分けて考えますが、それぞれの風邪タイプに適した漢方薬をご紹介していきます。
3-1.寒い風邪には「葛根湯」(かっこんとう)や「麻黄湯」(まおうとう)
ゾクゾクと寒気がする「寒い風邪」には、「葛根湯」(かっこんとう)がおすすめ。葛根湯(かっこんとう)は、体の表面を温めて発汗を促す効果があるため、寒い風邪の症状を改善するのに特に効果的です。なお、さらに強く発汗を促す効果がある漢方薬には「麻黄湯」(まおうとう)もあります。
これらの漢方薬の特徴は、汗をかかせて体を温めること。寒い風邪かどうかを見分けるには、汗をかいているかどうかチェックしましょう。
3-2.熱い風邪には「銀翹散」(ぎんぎょうさん)
体が冷えて寒気がする寒い風邪とは異なり、「熱い風邪」は喉の痛みや炎症が起こり、顔が赤くなり、体がほてった状態を指します。このような「熱い風邪」のひきはじめには、ほてった体の表面を冷やし、炎症を抑えることが大切です。
熱い風邪の症状に効果的な漢方薬として は、「銀翹散」(ぎんぎょうさん)がおすすめ。体の表面を冷やして炎症を抑える効果があるので、熱や喉の痛み、口が乾く、咳が出るなどの症状が特徴の「熱い風邪」に適しています。
漢方薬は、風邪のひきはじめに用いると効果的ですが、症状が進んで重症化した場合には適しません。また、自己判断で選べないからといって、複数の漢方を同時に服用するのもNG。漢方薬にも相互作用や副作用があり、症状に適した配合で、用法・用量を守って服用することが大切です。
漢方薬は、ご自分の状態や体質にうまく合っていないと、効果を感じられないだけでなく、場合によっては副作用が生じることもあります。しかし、たくさんの漢方薬から、ご自分にあった漢方薬を見つけるのは大変ですよね。
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日頃から体の免疫機能がしっかり働いていれば、風邪のウイルスが体内に入っても、症状が出ずに済むこともあります。もしも風邪の症状が出てしまったときは、無理をせず、ゆっくりと養生しながら冷静に対応しましょう。
薬剤師・相田 彩
薬剤師。昭和薬科大学薬学科卒業。総合リハビリテーション病院、精神科専門病院、調剤薬局に勤務するなかで、漢方薬が使用される症例の多さと、体質や症状に適した漢方を使用することの重要性を実感する。漢方薬の力をより多くの方に広めるために、漢方のプロがAIを活用して自分に適した漢方薬を選び、お手頃価格で自宅に郵送してくれる「あんしん漢方」で情報発信をしている。