2021年、日本の男性アイドル市場では「オーディション番組」ブームが巻き起こり、『PRODUCE 101 JAPAN』シーズン2(GYAO!、TBS系)からは11人組ボーイズグループ・INIが誕生。さらに、AAA・日高光啓が「SKY-HI」名義で行ったボーイズグループ発掘オーディション『THE FIRST』(日本テレビ系)からも、7人組ボーイズグループ・BE:FIRSTが結成され、業界を盛り上げている。
このブームの先駆けになったのが、19年12月に『PRODUCE 101 JAPAN』シーズン1から誕生した11人組ボーイズグループ・JO1。21年は彼らの“ライバル”が続々と生まれた1年でもあったが、JO1のファン「JAM」たちは何を感じたのだろうか。
そこで、アラサー世代のJAM3人に集まってもらい、座談会を開催。後編では、21年に開催されたオーディション番組の感想や、“先駆者”としてのJO1に期待することなどを語り合ってもらった。
<座談会参加者>
Aさん:アイドルにどっぷりハマったのはJO1が初めて。『PRODUCE 101 JAPAN』(以下、『日プ』)シーズン1からの白岩瑠姫推し。
Bさん:ジャニーズ、K-POPも同時に推している。JO1デビュー後からの鶴房汐恩推し。
Cさん:元ジャニオタ。JO1結成時からの與那城奨推し。
『日プ』シーズン2は“陽キャ”の集まり、『THE FIRST』は興味が薄れた!?
――3人は『日プ』シーズン2、『THE FIRST』は見ていましたか?
B 『日プ』2は見てたけど、『THE FIRST』は見てない。
A 私も『日プ』2は全部見た。『THE FIRST』は半分ぐらいまで見て、最後は流し見になっちゃった。
C 私はどっちも見てない!
A Cさんは潔くていいね(笑)。『日プ』シーズン2は普通に楽しかったよ。本当に素人ばっかりだったシーズン1に比べて、全体的に“セミプロ”みたいな人が多かったからかな。正直、シーズン1を見てオーディション受けてる子たちだから、「いろいろ学習してるな〜」と思ったよ。でも、スキルはみんな高かったよね。
B JO1のデビューからまもなくINIができたから、差別化できないんじゃないかと思ったけど、終わってみれば全然違う2グループができたと思う。JO1は何してもかわいい、シーズン2やINIはゴリゴリでかっこいい系って感じ。
A JO1のメンバーはどちらかというと内側に向いた性格だけど、シーズン2やINIの子は“陽キャ”の集まりだったよね。あと、シーズン1は割とピリピリしてた。「俺が絶対デビューするぞ!」みたいな感じで、切磋琢磨してた印象がある。一方、シーズン2は「一緒に頑張ろう、チームだから」みたいな印象で、そもそも、オーディションの雰囲気からして違ったよね。
B わかる、その感じ。だから、シーズン2は11人に選ばれなかったメンバーのことも結構気になってるんだよね。みんな誠実にやってたな〜って思う。
C 『日プ』は視聴者の投票でメンバーが決まる方式だけど、『THE FIRST』は違うんだよね? どうやってメンバーが選ばれるの?
A 『THE FIRST』は、SKY-HIがプロデューサーっていう立ち位置で、彼が審査してメンバーを決めてた。だから、『日プ』みたいに“自分も参加してる感”はなかったよ。もともとSKY-HIの作りたいグループ像があるから、そこに合う子が選ばれていくって形かな。だから、最後のほうは興味が薄れちゃったんだよね。
C そうなってくると、SKY-HIの作りたいグループ像に共鳴できない限り、そのオーディション番組自体を見ても……って感じだね。
A まさにそれ。だから後半に行くにつれて「……」になっちゃった(笑)。てか、私が『THE FIRST』見始めたのは、『日プ』シーズン1の練習生が出てたからなのよ。シーズン1がなければ『THE FIRST』も見てない。そう考えると、今のオーディションブームは、やっぱりシーズン1あってのことなんだよね。
B それは間違いない。私だってシーズン1見てなかったらシーズン2見てないもん(笑)。ちなみに、それぞれのオーディションから生まれたINIとBE:FIRSTは追いかけてる? 私はINIの情報だけはなんとなく入ってくるから、それで満足してる。
A 私も完全なる“お茶の間”って感じだなあ。CDは買ってないけど、YouTubeは見る程度の熱量。周りにINIを追ってる友達がいるから、CDは買わなくてももらえるし(笑)。あと、同時にたくさんの推しを作れるオタクじゃなかったと気づいた、自分が。
C それ、私もすごいわかる。なんでシーズン2と『THE FIRST』を見なかったかって、まだJO1がデビュー2年目だからだよ。これが5年目ぐらいに開催されたら、自分のJO1熱もちょっと落ち着いて、ほかのコンテンツを見てみる気になったかもしれないけど、今やられても全然興味がそっちに向かなかった、という。
A シーズン2が告知されたときは、JAMからかなり反発があったし、新しいグループに降りるファンも多いんじゃないかといわれてたけど、結果的にはそこまで流れなかった気がする。そういう意味でも、シーズン2のタイミングは早すぎたかもね。
B シーズン2を見て、シーズン1が気になって見たらJO1にハマったって人も結構見かけたな。シーズン2配信中にシーズン1の再放送があったから、気軽に見られたもんね。私ももう一度シーズン1を見たいから、ずっと配信しておいてほしいんですけど(笑)。
A 本当、お金払うから配信してほしい(笑)。
――INIとBE:FIRSTは、21年11月3日に同時デビューを果たしたことで大きな話題になりましたね。
C 私のジャニオタ的記憶では、今まで非ジャニーズボーイズグループのデビューがこんなに盛り上がったことってあったっけ? ってぐらい、珍しい出来事だったと思う。
A 確かになかったかもね、異例中の異例だよ。リリース日が発表されてからというもの、「CD売り上げはどちらが勝つか!?」みたいな勢いをずっと感じてた。両方のグループとファンから。
B 長期的な目で見ると、今回の同時デビューってすごく大事なことだったと思う。ジャニーズじゃないのになぜここまで盛り上がったかって、やっぱり「オーディション番組出身のボーイズグループ」が「2組同時に」デビューしたからじゃん? こうやって話題を作れば、ジャニーズじゃなくても注目されることがわかったから、今後、同じような展開が増えてくるかも。
C ファン的にはピリピリした期間だったと思うけど、非ジャニーズのボーイズグループを盛り上げていくための、一つの転機みたいな出来事だったね。そして、その流れを作ったのは間違いなくJO1ってことも言っておきたいし、JO1メンバーには胸を張ってほしい。彼らがいなかったら、今回の同時デビューもなかったし、日本のボーイズグループ市場に新しい風は吹かなかったんだから。
――JO1は来年3月でデビュー3年目に入ります。約2年間グループを見てきて、彼らの強みはなんだと思いますか?
A やっぱり「パフォーマンス」かな。ダンスももちろんだけど、ライブに行って全員歌がうまいと思ったから、たくさんの人に聞いてほしい。3年目は、大きな音楽フェスに出てもらいたいな〜。生のパフォーマンスほど、JO1の魅力を実感してもらえるものはないはず。揃っているのにメンバーの個性が際立つダンスができるグループも、なかなかないと思うし。
B 私は「いろんなことができる」だと思ってる。パフォーマンスだったり、一つのことを極めていきたかったのかもしれないけど、音楽面でいえばK-POPっぽいのもJ-POPっぽいのも歌えるのは、すごい長所だよね。ビジュアル面も、「11人誰かに刺さるでしょ!?」というバラバラな系統だし。これは国民投票で生まれたグループならではの強みじゃないかな。
C あんなにバラバラなのに、11人集まるとまとまって見えるから不思議だよね。私が思う強みは「上品さ」。ハイブランドを着ても変じゃないというか、安っぽくならないのはすごい。それこそ、『FNS歌謡祭』(フジテレビ系)での大御所コラボも、彼らの上品さあっての成功でしょう。若手グループなのに浮ついた感じに見えないし、今、日本にいるボーイズグループにはない雰囲気をまとってる気がする。
A あとは自分で言うのもなんだけど、「ファンの熱量」がすごいよね(笑)。音楽番組に出た時なんか、毎回10万ツイート以上記録するし、必ずトレンド入りするし。3年目は、この熱量をうまいこと使ってほしい。
C ハッシュタグでSNSを盛り上げる文化、私は『日プ』シーズン1の時に初めて知った。20年、21年ともにTwitterの「国内でもっとも使われたハッシュタグ」ミュージック編で「#JO1」が第1位だったから、JO1は「拡散力No.1グループ」とか言われてるよね。ファンもそれを誇りに思ってる部分があるし、すでに3年連続第1位を狙ってるよ、私は!
B ファンの熱量でいうと、応援広告の文化もすごいと思う。これもシーズン1から本格的に始まって、投票を呼びかける広告が駅とかに出てた。JO1が結成されてからは、メンバーの誕生日に駅や街中のビジョンに広告が出ることも多いよね。K-POP界隈では結構見る光景だけど、日本でこれをメジャーにしたのは、シーズン1の国民プロデューサー(視聴者)であり、JO1ファンのJAMじゃないかな。
A 12月6日からは、「#FIND_THE_JO1」という広告企画があったね。突然、JO1の公式Twitterに謎の画像が投稿されたかと思えば、15日発売のニューシングル「WANDERING」の広告が全国に掲示されるという、驚きのオチ。Twitter上では各地のJAMが地元で見つけた広告を載せて、大盛り上がりだったよね。
C しかも、その広告には隠し文字があって、47都道府県の広告を集めて組み合わせると「ぼくたちは、いつでもひとつ。」というメッセージが浮かび上がる、粋な演出までされていた。ファンが始めた応援広告を、JO1の運営がしっかり見てくれたんだって感じたし、JAMの拡散力を信頼した企画ってところもうれしかったなあ。
A 内輪だけの盛り上がりで留めるにはもったいないグループだから、こうやっていろんな人の目に付く企画はどんどんやってほしいね。拡散は私たちJAMに任せてもらって、3年目は日本国内のみならず、世界にも発信していってほしい!
――3年目のJO1には、ほかにどんなことを期待してますか?
B 3年目って、一番悩む時期じゃない? 社会人でも3年目って大事だけど、それはアイドルも同じだと思う。やっぱりもう、“新人”とは見られなくなるもんね。誰かがドラマに出てブレークするとか、そういう出来事があってほしいかな。
C これは前から思ってたんだけど、崔信化(チェ・シンファ)社長(※)がもっと顔を出してきてほしい。
(※JO1、INIが所属する事務所・LAPONEエンタテインメントの社長。たまにJO1のYouTubeコンテンツに登場するなど、ファンにはおなじみの存在)
A え、どういうこと!?(笑)
C NiziUにはJ.Y. Park、BE:FIRSTにはSKY-HI、そしてジャニーズ事務所にはジャニー喜多川社長って感じで、JO1にも“敏腕プロデューサー”的立ち位置の人が必要だと思うのよ。プロデューサーの知名度とキャラクターから、グループに興味を持つ可能性ってゼロじゃない気がするから、そろそろチェ社長が出てくるべきじゃない?
B そう言われてみると、すごい納得。出しゃばりすぎなければ、プロデューサーの存在が注目されるのは悪いことじゃないと思う。ちょっと3年目は、チェ社長に期待しよう(笑)。
A なんかそうやって考えていくと、メンバーに「もっと頑張ってほしい」って気持ち、基本的にはそんなにないんだよね。だって、いつも全力で頑張ってるし、それを結果で出してくれてるし、何も心配してないのよ。むしろ、「今年はこれをやるぞ」っていうのをしっかり事務所に考えてもらって、実行してほしいかな。私もその目標に向かって一緒に頑張りたいよ。
B つい先日、LAPONEが練習生を募集するって発表したけど、正直今はタレントを増やすよりも、スタッフを増やしたほうがいいよね。ファンから見ててもスタッフ足りてなさそうな雰囲気、わかっちゃうぐらいなんだもん。
C 「日経エンタテインメント!」 2022年1月号(日経BP)のインタビューでは、奨くんがはっきり「人手が足りない」から「今はできることから少しずつやっていくしかない」って言ってたもんね。もちろんコロナ禍という事情もあるけど、まずは所属タレントたちが会社の事情を気にしなくてもいい環境づくりをしてほしい。「これをやりたいけど、人が足りないからできないかも」って諦めるようなこと、絶対にあってほしくないよ。
B JO1の成長スピードに追いついてないんだよね、事務所が。正直言うと、この子たちがジャニーズにいたら、もっとすぐ売れるんだろうな〜って思っちゃう。悲しい現実だけど。
A JAMもCD買ったり、トレンド入れたり熱く応援してるから、あとは事務所が頑張りを見せる3年目にしてほしいね。後輩や練習生をたくさん抱えるのはいいけど、ちゃんとマネジメントしてよってことで、結果、3年目はLAPONEの成長に期待(笑)。
C 期間が決まってない『PRODUCE 101』出身のグループって異例だから、今まで「3年目の目標」が語られることはなかったってことを、今ふと思った。JO1は3年目に突入して、5年目、10年目を目指していけるんだよね。 そうなってくると、これからは完全にJO1独自の形を作っていくことになるわけだ。
A でも、それが「トップになる」ってことじゃないかな。日本に再びオーディションブームを巻き起こして、新しいジャンルを作って、開拓していってる途中なんだよね、JO1は。ほかと比べることなく、自分たちが信じた道を進んでいってほしいよ。
B この11人が活躍して、いろんな結果を残したからこそ、新しいオーディションやグループできたってことは、これからも声高に言っていきたいね。JO1の成功を見て、みんなマネしてるんだからさ。
C 「自分たちは先駆者である」という誇りやプライドを持って、3年目もその先も突っ走ってほしい。それがJO1に期待することかな。