昨年10月に眞子さんが皇籍離脱するなど、現在進行形で“皇族の減少”が進んでいる皇室。政府は、安定的な皇位継承策などを議論する有識者会議を再開し、昨年12月22日に岸田文雄首相が最終的な報告書を受け取ったが、その内容については世間から疑問の声も多い。
現在、天皇陛下と皇族方は合わせて17人、そのうち未婚の女性皇族は5人。加えて、先月1日に愛子さまが成年皇族となられたことで、未成年の皇族は悠仁さま、お一人に……。近い将来、さらなる皇族減少が懸念される危機的状況で、今回の報告書の案は得策なのだろうか。皇室ウォッチャーX氏に聞いた。
17年前の議論を繰り返しているだけ
――有識者会議では、皇族数の確保策として「(1)女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持する」「(2)皇族の養子縁組を可能とすることで、皇統に属する男系男子が皇族となることを可能とする」の2案を提起。この案を聞いて、どのような印象を抱きましたか?
皇室ウォッチャーX氏(以下、X) 結局、皇位継承の議論は結論が出ないまま、皇室は先細りしていくのだろうと思いました。皇族数の確保については2004年の小泉純一郎内閣の時に本格的な議論が始まりましたが、06年9月6日に悠仁さまがご誕生されてストップ。この時に女性宮家の議論を進めなかったのは、政府の根強い男系男子の伝統支持派がいたからですが、今回も当時議論した内容を繰り返しているだけです。
小泉内閣の時に議論が進展せず制度や法律が変わらなかったことを踏まえると、新しい案が出なかった今回も議論内容を国会に報告して終了し、最終的に現在の皇位継承の制度は変わらないでしょう。皇室の存続危機は一向になくならないと思います。
――この2案のメリットとデメリットはなんですか?
X どちらの案もメリットとしては、公務や宮中祭祀を行う「皇族数を確保できること」が挙げられます。特に後者の案だと、皇位を継承できる男系男子が増えるというメリットもあります。
しかし、どちらもそれぞれデメリットがあります。前者の案はいわゆる女性宮家と同義ですが、それと同時に、いずれ悠仁さま以外に皇位を継承できる方がいなくなった場合、皇室をなんとかして維持するために「女性皇族しかいないから、女性皇族に即位してもらおう」という世論になり得ます。それは「女性天皇」であり、その子どもが皇位を継げば「女系天皇」となる。これまでの伝統が断ち切れるわけです。
後者の案は、男系男子で皇位を継げるので保守派の論は維持できますが、これまで民間で生活していた人のことを「明日から皇族なので敬う」という国民はほとんどいないでしょう。本人にとっても国民にとっても、かなりハードルが高い案だと思います。
――ネット上では、「男系維持のための出来レースのような会議」「国民に投票させてほしい」といった有識者会議への批判も見られます。
X 出来レースというか、そもそも今回の有識者会議で「本気で皇室を変えよう」という気概は感じられません。先ほど言った通り、これまで議論されていたことを繰り返しているだけで、なんら新しい意見もなく、政府はやる気がないなぁと思います。
自分たちが議論したことで「女系天皇」「女性天皇」などを誕生させ、2000年とも言われる皇室の伝統を“崩した”という責任を負うことが嫌なのでしょう。今までもそうですが、国民のために皇室が存在するのに、国民の意見を取り入れる機会のない現在の有識者会議に対しては、残念な思いもあります。
――女性天皇、女系天皇の具体的な検討は行わないようですが、共同通信社が行った20年3~4月の世論調査で、女性天皇を認めることに「賛成」「どちらかといえば賛成」のいずれかを選んだのは合計で85%。今回の案はそんな世論を無視するような内容にも思えます。
X 世論調査で「女性天皇」に賛成する国民の声は多いことは確かですが、その中のどれほどの割合の方々が女性天皇の本質を理解できているのか、ということを有識者会議のメンバーは考えていると思います。
女性天皇が誕生した場合、その子どもは女系となります。その皇族が即位すると、歴史上かつて存在しなかった「女系天皇」が生まれてしまうのです。これは、「男系で続いてきた天皇の歴史を、我々の世代で変えていいのか?」という重い問題。「世論を無視しているような案」ではありますが、「国民の意見を聞いていられない」事情もあるとは思います。
――今回の案を受けて、女性天皇賛成派から、秋篠宮家への批判の声が高まっている印象もあります。必要不可欠な会議とはいえ、15歳という多感なお年頃である悠仁さまの心情を思うといたたまれません……。
X 今回の案をダシにして、秋篠宮家を批判したい国民は一定数いるでしょうね。眞子さんの結婚問題以降、何かにつけて秋篠宮ご一家を批判したいネット民は増えた印象です。最近は、天皇家を褒め称えることで“秋篠宮家の評価を落とす”という手法すら垣間見えます。会議がどんな内容になろうと、今の秋篠宮家は批判にさらされる状況なのだと思います。
悠仁さまは来年4月に高校生となる年齢ですから、今の秋篠宮家が世間から批判されていることはご自身も理解されていると思います。お年頃ですし、今時は携帯電話やパソコンを使ってインターネットでご家族に関する記事を目にされていることでしょう。
しかも、その内容には「悠仁さまよりも愛子さまに即位してほしい」といった意見が存在していることもご存じでしょうし、それは我々が想像できないほどの困惑とストレスをお感じになっているかと思います。今は皇室の制度や、将来即位されることを意識せずに、迫っている高校受験の勉強に集中していただきたいです。