1987~95年にアメリカで放送された国民的コメディ『フルハウス』。ドラマの中で、妻に先立たれるも義弟や友人たちと共に幼い三姉妹の子育てに大奮闘するダニー役を演じたボブ・サゲットが、現地時間1月9日、滞在していたフロリダ州の「ザ・リッツ・カールトン オーランド」で亡くなった。まだ65歳だった。あまりにも突然すぎる死は世界中に衝撃を与え、Twitter上には悲しみの声があふれている。
米エンタメサイト「TMZ」によると、9日の午後4時頃、ホテルのセキュリティから「呼びかけてもボブが無反応だ」という通報を受けて駆けつけた救急隊員により、その場で死亡が確認されたとのこと。オレンジカウンティ保安官事務所は、薬物使用や事件性の可能性を示す不審な形跡はなかったと発表。今後、行われる検死で死因を特定するとした。
もともと際どいジョークを得意とするスタンドアップコメディアンだったボブだが、同じくコメディアンのポール・ライザーがスケジュールの都合で断った『フルハウス』のダニー役に抜てきされ、人生が大きく変わった。“長身で甘いマスクの優しいパパ”という役柄のイメージは番組が放送された世界中で定着。理想のパパとして愛されるようになった。
ボブ本人はスタンドアップをとても大事にしており、コロナ禍で精神的に落ち込んだり、大切な人を失ってダメージを受けたりした人たちの気休めと励ましになればと、21年9月~今年5月の予定でツアーを行っていた。亡くなる前日にも公演を2時間行っており、息を引き取る数時間前に来てくれた観客、前座を務めたコメディアンのティム・ウィルキンスに感謝するツイートを投稿していた。
あまりにも突然すぎるボブの死に、ファンだけでなくセレブ友達、『フルハウス』共演者は大きなショックを受けており、次々と追悼メッセージを発表。ジェシーおじさん役のジョン・ステイモスとジョーイ役のデイブ・クーリエは「打ちひしがれている」、長女DJ役のキャンディス・キャメロン・ブレーは「言葉も出ない」、次女ステファニー役のジョディ・スウィーティンは長文でボブへの愛を語った。
スピンオフ作品には出演せず、キャストとの交流はあまりないのではとささやかれていた三女ミッシェル役を演じた双子のオルセン姉妹もすぐに「深い悲しみを覚える」と追悼の意を表した。のちに全員連名での追悼メッセージも発表。
「ボブは男性にとっては兄弟、女性にとっては父親であり、全員にとって友人でした。ボブ、私たちはあなたを心から愛しています」とつづり、改めて実の家族のような関係だったと明かした。
34、32、29歳のボブの子どもたちも、急な死にショックを受け、悲しみに暮れているとの声明を発表。ボブには、命を脅かすような病を患っていたり、自ら命を絶つほど精神的に追い詰められたりした様子もなかったそうで、家族も事実を受け止められずにいるようであった。
一方で、ボブは21年12月半ばに新型コロナウイルス・ワクチンのブースターショットを受けたことを明かしており、陰謀論者たちは「ワクチンに殺された!」とネット上で大騒ぎしている。また、ゲストとして出演したポッドキャスト番組『トム&ダン』(1月5日配信)で、ボブは最近新型コロナウイルスに感染したことを告白。具体的な時期は明かしていないが、「最悪だった」「デルタなのか、(デルタとオミクロンの)コンボなのか、どの株に感染したのかまではわかってないけど」と発言していたことから、新型コロナウイルスが遠因なのかもしれないと推察する人も。
ボブは同番組の中で、パンデミックの最中のツアーでもみんなが来てくれると明かしており、「きっと生のボブを見られるチャンスなんだから来るんだろうな。『ボブ、コロナで死んじゃうかもしれないから、いま見に行かなきゃ』ってね」とジョークを飛ばしていた。新型コロナが原因かは不明だが、冗談が現実になったことに全米が衝撃を受けている。
ボブの葬儀やお別れの会などについては未定。しかし、国民的コメディアン/俳優だったこともあり、多くのファンは『フルハウス』の仲間による追悼番組の制作を期待している。