今や日常生活において、かかせないツールとなっているコミュニケーションアプリ「LINE」。かつては子どもの送迎時に、ママたちが立ち話をしているような光景が見かけられたが、時間に追われ忙しく過ごす共働き世帯が増えた今、ママたちのコミュニケーションの場は、LINEのグループチャットになっているという。そんな、ママたちの「グループチャット」から浮き彫りになった、彼女たちの悩みや、苦悩、気になる話題を覗いてみる。
かつて、日本PTA全国協議会は、会員の保護者とその小学5年生、中学2年生の児童を対象に「テレビ番組に関する小中学生と親の意識調査」というアンケートを実施し、結果を公表。「子どもに見せたくない番組」の項目では、『めちゃ×2イケてるッ!』(フジテレビ系)や、『ロンドンハーツ』(テレビ朝日系)といった、お笑い芸人が体当たりで罰ゲームを行ったり、“下ネタ”を連想させるような言葉が飛び交うバラエティ番組がランクインしていた。
なお、学研教育総合研究所による調査によると、小学生の1日のテレビの視聴時間は、1989年の125分から、2019年は75分と大幅に減少している。“テレビ離れ”が進む現代でも、保護者が子どもに「見せたくない番組」は存在するのだろうか。今回は、子どものYouTube視聴に悩むママのエピソードを紹介する。
「スマホは子どもに見せてはダメ」スマホ育児に先輩ママからのキツい一言
薫さん(仮名・38歳)は、都下のベッドタウンで8歳になる男児を育児中だ。薫さんの息子は、保護者による絵本の読み聞かせなど情操教育に力を入れた幼稚園に通っていた。
「息子は、地元でも人気のある幼稚園に通わせていました。1学年2クラスありましたが、持ち上がり制なので3年間同じクラスだったママとは、小学校に進学した今でも連絡を取り合ったり、仲が良いんです。でも中には、育児に対して持論を押し付けてくる人もいて困っています」
薫さんの息子と同級生の息子を持つOさん(仮名・42歳)は、幼稚園時代にも、バザーなどの係を率先して行う、リーダー的な存在だった。
「息子同士が仲良しで、同じ小学校に通っています。Oさんには中学1年生の子どももいるので、小学校生活でわからないことがあると、最初のうちはOさんに聞いていました。ママ友のグループチャットで、お遊戯で使うシンプルなTシャツを売っている場所を共有してくれたこともあります。ただ、自分の育児方針を押し付けてくるところがあるのが、少し面倒なんです」
薫さんはOさんから、子どもにYouTube動画を見せていることを注意されたという。しかし、薫さんの周囲では、いまや幼児から小学生まで「見ていない子どもはいないのではと思うほど、YouTube利用率は高い」そうだ。
「子育て中のママの間では、子どもにスマホを渡して動画を見せている状況を“スマホ育児”と言ったりしますが、中にはスマホ育児を批判してくる人もいて、Oさんもそのうちの1人。彼女は、YouTube自体ほとんど見たことがなく、一方的に『そういうのを見せると子どもが乱暴になる』、『動画を見るのは遅ければ遅いほうが良い』と言ってきます」
とはいえ薫さんによると、電車などで子どもが泣き止まなかった時、スマホで動画を見せることで収まったこともあったという。
「夫の仕事が忙しいので、子どもの食事を作ったり、部屋の片づけをしたりといつもワンオペ状態。子どもがぐずって困った時、YouTubeで子どもがおもちゃで遊ぶ動画や、オリジナルのキャラクターが動く動画などを見れば泣き止んでくれたんです」
YouTubeというと、中には過激なコンテンツや不正確な情報を拡散しているチャンネルもあるため、ネガティブな印象を持つ保護者も多いかもしれないが、薫さんは「クリエイターによっては子どもに見せても安心」だと語る。
「定番ですが、ヒカキンさんの動画は人を傷つけたりするわけではないので、ママたちの間でも『見せて安心』と言われています。一方で、あるママに教えてもらったYouTuberは、“小学生あるある”をテーマにした動画の中で、サンタクロースはいるかいないかについて取り上げていました。ママ友の息子はその動画を見て『サンタはいないの?』と聞いてきたそうで、困ったと話していましたね。冬休みの時期は、仲が良いママたちだけのグループチャットで『休み中、子どもがずっと動画を見て困る』という悩みや、どのYouTuber、どの動画は安全かという情報を共有し合っていました」
年末年始のテレビ番組は、子どもたちに不評!?
コロナ禍により、冬休み中も遠出やレジャーなどを見送った家庭は多いだろう。薫さんいわく、子どもたちは暇なおうち時間でもテレビにはあまり興味を示さず、「子どもが見たがったのは、大みそかに放送された『THE鬼タイジ 大晦日決戦in鬼ヶ島』(TBS系)という鬼ごっこの番組だけでした」と語った。
「テレビをつけていても、アニメ以外は興味がないのかあまり見ないんですよね。去年は『鬼滅の刃』が流行っていたので、ママたちとも『映画見た?』と話題になりました。『鬼滅の刃』は、残虐なシーンもあるため、ママ友間でも『アニメを見せるか迷っている』という声があり、Oさんは上の子には見せるけど、下の子には見せないと言っていました。学校で流行っているものを見せないと、話題にもついていけないし、ちょっとかわいそうだなと思いましたね」
子どもたちのテレビ離れにより、保護者にとって、かつての「見せたくない番組」はテレビからYouTubeに移行しているようだ。
「テレビはまだ放送時間帯が遅ければ子どもは見ることができませんが、YouTubeはいつでも見られる。大人が注意しないと、どういう内容を見てしまうかわからないんです」
そんな薫さんがYouTubeで子どもに見せたくないのは、大金を使って買ったおもちゃの開封やガチャガチャなどを無限に引く動画だという。
「ある有名YouTuberグループが、1回1万円のガチャガチャをメンバーで順々に引いていました。1万円なんて大金なのに、まるで小銭のようにじゃんじゃんお金を使うので、ママ友もLINEで『子どもが「やりたい」と言い出して困る』と言っていましたね。また、特定のYouTuberに限ったことではありませんが、若い子たちの間で“イケてない人物”という意味でも使われている『童貞』という言葉を耳にした子どもが、『どういう意味? 』と聞いてくることがあり、返答に悩んでしまいます」
YouTubeはテレビと違って、見たい動画を好きなタイミングで視聴できるため、保護者たちは子どもが不適切な動画を見ていないか目を行き届かせることに苦労しているようだ。
「YouTubeは視聴履歴がブラウザに残るせいで、子どもって気に入った動画は何度でも見返すので、Oさんみたいに『YouTubeは見せない』というのは極端ですが、子どもが見られる動画と見られない動画を親が細かく選べるようになればいいなと思います。ブラウザやYouTube側の設定で年齢制限を設け、視聴できる動画を制限することもできますが、それでも動画によっては不十分に感じることもありますから」
インターネット環境があれば手軽に視聴できるYouTubeだけに、勉強などに役立つ動画視聴なら、子どもの頃から取り入れてもいいだろう。ただ過激さだけが際立つ動画には、保護者側も十分に注意を払うべきといえそうだ。