就寝時や運動時、突然起こるふくらはぎへの激痛……これを「こむら返り」と呼びます。「急に足がつって歩けなくなる」「こむら返りが原因で寝不足になった」といった悩みを抱えている方もいるのではないでしょうか?
しかし、原因がわからないと対策のしようがありませんよね。そこで今回は、薬剤師の篠原明宏氏が「こむら返り」の具体的な症状と原因、さらに対策についても詳しく解説していきます。
1.「こむら返り」の症状と原因をチェック
こむら返りの原因として挙げられるのは、マグネシウムやカルシウム、カリウムなどのミネラルバランスの乱れによる筋肉の異常な収縮です。通常、筋肉は神経の命令によって収縮します。しかし、運動のしすぎやストレスにより筋肉が疲労した場合、ミネラルバランスの乱れが生じてしまい、突然筋肉が収縮してしまうのです。
特に、神経や筋肉の伝達に関与するマグネシウムが不足することにより、こむら返りが起こりやすくなるといわれています。また、妊娠中の方はミネラル不足になりやすい傾向があり、こむら返りが起こりやすいため注意してください。
2.こむら返りの対処法
こむら返りは、就寝中や運動中に起こりやすいとされています。いざ起こってしまったとき、どのように対処したらいいのでしょうか?
すぐにできる応急処置は、患部を伸ばすこと。足の指を持ち、アキレス腱をグッと伸ばしましょう。また、痙攣しているふくらはぎは、くれぐれも優しく扱うことが重要です。このときに無理やり行うと、肉離れを起こしてしまう可能性もあります。自宅にいるときであれば、ふくらはぎをほぐすようにマッサージを行う、蒸しタオルやお湯で温めるなども有効です。
次に、こむら返りを繰り返さないための予防法を4つご紹介します。
3-1.ミネラルや水分をしっかり補給する
こむら返りの一番の原因は、マグネシウムやカリウムなど、体のバランスを整えるミネラル不足や水分不足。そのため、ミネラルや水分を日頃からしっかり補給することが大切です。特に、マグネシウムを含む食品を意識的に摂ることで、こむら返りの予防に役立ちます。
<マグネシウムを含む食品>
アーモンドなどの種実類、魚介類、藻類、野菜類、豆類など
3-2.体を冷やさない
体が冷えると筋肉が収縮し硬くなるため、こむら返りが起こりやすくなります。そのため、普段の生活から意識して、体を温めることが重要。朝起きたら1杯の白湯を飲む、レッグウォーマーを身につけるなど、簡単なことから始めるのも有効です。また、お風呂もシャワーで済ませず、しっかりと湯船につかるようにしましょう。
3-3.ストレッチの習慣を取り入れる
足がつらないようにするには、体をよくほぐすことも大切です。ストレッチなどでふくらはぎの筋肉をほぐしてあげると、筋肉が柔らかくなり、こむら返りが起こりにくくなります。寝る前に下半身を軽く伸ばすだけでもかまいません。毎日の継続が大切なので、簡単なものから取り入れてみてはいかがでしょうか?
3-4.こむら返りには漢方薬も有効
こむら返りの予防には、整形外科の治療でも使われている漢方薬もおすすめ。漢方では、こむら返りが起こるときは、一時的に「血(けつ)」が不足している状態になっていると考えます。これは血液のことを指し、全身に栄養分を届ける役割を持つため、不足すると栄養バランスが低下し、こむら返りが起こりやすくなるのです。
漢方薬は、痙攣そのものや痙攣で起こる痛みを抑えるなどのアプローチによって、こむら返りを改善します。こむら返りに悩む方におすすめしたい漢方薬は「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」です。これは血を補う漢方薬で、筋肉の急な痙攣を鎮めるもの。運動前に服用しておくなど一時的な予防に使われることが多い漢方薬で、急性期の症状に対しても非常に即効性があります。
また、冷えが原因となってこむら返りを起こしやすくなっている方には、「八味地黄丸(はちみじおうがん)」や、「牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)」などの漢方薬もおすすめです。下肢の冷えや腰痛がある方に対し、予防効果が認められています。
・芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう):こむら返りがよく起こる方に
・八味地黄丸(はちみじおうがん):体力がなく寒がりの方のこむら返り予防に
・牛車腎気丸(ごしゃじんきがん):腰から下の冷えがある方のこむら返り予防に
ただし、漢方薬はご自分の状態や体質にうまく合っていないと、効果を感じられないだけでなく、場合によっては副作用が生じることもあります。そのため、ご使用の際は漢方に詳しい医師や薬剤師などに相談すると安心です。
しかし、たくさんの漢方薬から、ご自分にあった漢方薬を見つけるのは大変ですよね。そんなときは、「あんしん漢方」などのオンライン漢方サービスに一度相談してみるのもいいでしょう。漢方に精通した薬剤師とAIが、あなたに効く漢方薬を見極めて、お手頃価格で自宅に郵送してくれます。
4.こむら返りを解消し、すっきりした毎日を送ろう!
こむら返りの症状や原因、改善方法についてご紹介しました。こむら返りを繰り返さないためには、普段の生活スタイルを改善することも重要です。体を冷やさないようにする、ストレッチを取り入れるなど、簡単なところから始めてみましょう。
また、バランスのいい食事と適度な水分補給も大切。漢方薬もおすすめなので、気になる方はぜひ漢方に詳しい専門家に相談してみてくださいね。
薬剤師・篠原明宏
薬剤師。東京薬科大学卒業。大学院にて子宮内膜症の研究に携わり修士課程を取得。その後、中国の上海中医薬大学に留学し本場の中医学を肌で学ぶ。帰国後は保険調剤薬局にて管理職、役員を経験。最新医療の知識と伝統的な東洋医学の多方面から患者様の現状にあった健康サポート提案を得意とする。