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『かまいガチ』『ガキ使』…バラエティにドキュメンタリーが宿る瞬間がある ぼちぼちテレビ日記

ByAdmin

Jan 26, 2022

1月15日
 『土曜☆ブレイク「30日後に深みが増すお笑い」』(TBS)は、芸人が30日でどれだけ変われるのかというテーマの実験的な番組。最初に登場したジョイマンのパートにちょっと感動してしまった。

 ジョイマンのラップを担当している高木が30日間、プロのラッパーに教えてもらうというもので、まずは講師のラッパー・ACEによる座学を受けた後、即興ラップ大会に参加する。その場で、いつもは「なんだこいつー」とつっこみをしている相方の池谷もラップに挑戦してみると、意外にも決勝トーナメントに進出して、まさかの優勝をしてしまったのだ。

 後日、ふたりはACEのスタジオにおもむき、それぞれが入れ替わりで10分のラップをする。その後、コンビで即興でバトルをしたときに、本音をぶつけあい、お互いを認め合う姿がよかった。

 そしてタイトルの通り、30日間を経てネタを見せるのだが、これまでにやってきた高木が主導のネタに、池谷の新たなラップの才能を組みあわせたスタイルは、まったく新しく「深み」のあるものになっていた。

1月19日
 『F4 Thailand』をU-NEXTで。見ているとタイの映画『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』を思い出した。あの映画も、タイの決してお金持ちとは言えない女の子がお金持ちの高校に行っている。原作漫画『花より男子』(集英社)のストーリーはそのままに、今の感覚になっているところも多い。私が特にいいなと思ったのは、道明寺=タームの、暴力性とか、男性性の中の有害なところを顧みる話でもあるんだなと思ったところ。冒頭でタームは「自分は偉大だと思ってたけど」「痛みや悲しみを覚えた」と自分を振り返るところにそれが表れている。

1月20日
 『新聞記者』(Netflix)。映画にはなかった横浜流星の役は、映画『タクシー運転手』のソン・ガンホみたいに、最初は自分が生きることに精一杯で、周囲のこと、政治のことにまで関心を持てないでいけど、巻き込まれて変わらざるを得ない、考えざるを得ない役になっていた。実際には、自分の身の回りのことだけを考えていたのでは、自分を守れない世の中になっているってことなんだとは思う。あきらめずに疲弊せずに粘り強く続けていくことしかないし、そうしないと日本はどうなっていくのか……という結末は、現時点でそうとしか描けないとは思った。

 深夜の『かまいガチ』(テレビ朝日)。かまいたちの濱家が、『anan』(マガジンハウス)の「自分史上、最高のカラダ」のグラビアに出るということで、数カ月の間、カラダを鍛えて挑むという企画の舞台裏を追っていた。結局、実は濱家に隠れて山内も鍛えていて、ふたりでのグラビアになっていたというバラエティらしいサプライズもあった。実際に『anan』のグラビアを見たら、2人の関係性も見えるようでけっこう良いグラビアだと思った。

 しかし、驚いたというか、気づきがあったのは、濱家さんが、グラビアを撮るときに、ぜんぜん照れがなく、しっかり表情を作っているところ。もちろんテレビ的に、山内さんが面白いポーズをさせようとするのだが、それに答えつつも、けっこうガチでかっこいいグラビアをやろうとしていた。

 かつての芸人なら、「かっこいい」「グラビア」などというものは、面白くないものとして避けられていたのではないかと思うと、なんとなくそういうこだわりがなくなってるようで興味深かった。

1月23日
 お昼の『ザ・ノンフィクション ~結婚したい彼女の場合 ~コロナ禍の婚活漂流記~ 後編』(フジテレビ)が大変話題になっていた。私も思うところはあるが、婚活をしているミナミさんや交際をはじめた長谷川さん(共に仮名)という人たちの生きざまに対して、なかなか発言するのは難しい。それにしても、ドラマがありすぎる。ただ、ドキュメンタリーはそのドラマを「おいしい」と思って作ってはいけないとも思う。

 インドの映画『グレート・インディアン・キッチン』の、最初は素敵な暮らしが始まったかに見えて、次第に家事労働者として搾取されるという物語を先日見たばかりなので、この番組を見ていて、思い出してしまった。

 結婚相談所に多くの女性が訪れる背景には、コロナと、先行きの不安があるのだという。婚活をしているミナミさんの月収も13万円と聞いて、これはミナミさんだけの物語ではないなと思ってしまった。

 『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで』(日本テレビ)はおいでやす小田の24時間インタビュー。半分を過ぎた頃から「(ずっとインタビューを受けているので)おしっこしか楽しみないやん!」とか「人間か?これ」などと、小田さんがどんどん追い込まれる。その後も、小田さんと相性最悪のインタビュアーが、わざといらつく物言いで追い詰めるような質問を続けるため、「拷問やでこんなもん」と言ったのを聞いて、人に話を聞くことの暴力性について考える。これについては、『文學界』(文藝春秋)の濱口竜介監督との対談でも言及したことがあり。ただ、インタビュー自体に暴力性があるのではなく、それをどのようにするかに暴力性が宿るのだと思う。

 話は変わるが、コントや漫才で、変なインタビュアーや編集者のネタというものがあるが、自分がそんなインタビューしていたらどうしようとハラハラすることがけっこうある。

 今週、気になった番組は、バラエティではあってもドキュメンタリー的な見方のできるものが多いなと思った。

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『韓国映画・ドラマ――わたしたちの おしゃべりの記録 2014~2020』(駒草出版)