「皇族はスーパースター」と語る歴史エッセイストの堀江宏樹さんに、歴史に眠る破天荒な「皇族」エピソードを教えてもらいます!
堀江宏樹氏(以下、堀江) 今回からは、毎日新聞社の記者・江森敬治さんのご著書、その名も『秋篠宮さま』(毎日新聞社)をみなさんと読んでいきたいと思います。前回までは、週刊誌の記事をベースに昭和末期~平成期の秋篠宮家のあゆみを振り返ってきましたが、今回からご紹介する『秋篠宮さま』は、その内容に宮さまが真正面から“大反論”という実に画期的な書物です。
イギリスの王室もそうなのですけれど、基本的に王族・皇族は、批判的な記事にこそ「ノーコメント」を貫く立場です。ひとつのルールですが、秋篠宮さまは江森さんの著書の中で、“掟破り”の反論をなさっているんですよね。何に対する反論かは、おいお話していくとして、これがまず興味深かったです。
そして、この本の表紙。ご覧になってください。
――ティアドロップ型のいかつい黒サングラスの秋篠宮さまが、なにかにまたがっておられますね?
堀江 そうなんです。「こういう生活を、あなたもやってごらんなさいと言われたら、10人中10人が窮屈だと思うでしょう。私も同じ人間ですから…」という秋篠宮さまのコメントが印字された帯で隠されているわけですが、この帯をどけてみると……。
――な、なんですか、これ!?
堀江 ね、怪しいでしょう。公園のアスレチック遊具か、タイとのご縁が深い宮さまとして秋篠宮さまは有名ですから、ゾウの頭? と思いきや、これ、なんとコモドドラゴン(コモドオオトカゲ)ですね(笑)。
――3メートルもある大トカゲに馬乗りですか(笑)。
堀江 実は子どもの頃から、巨大なトカゲには親しんでおられたそうですよ。
宮さまが幼稚園の頃のお話というからには、まだ昭和天皇がご存命の頃だと思います。父宮(現・上皇さま)と母宮(現・上皇后さま)が「おみやげ」に持ち帰ったのが、「ウォーター・モニター」という「コモドドラゴンに次いで大きくなるトカゲ」だったそうで、御所に持ち帰られた当時すでに「1.5メートル」。それを「家族で飼っていた」とか……。
――庶民の家庭にはありえないスケール! なかなか衝撃的な逸話ですね。
堀江 このトカゲは死んでしまった後に剥製になっています。少年時代の宮さまは御所の「魚類研究室」の一室で、研究者に監修されながらも自らの手で、剥製を制作しました。その後につながる生物全般への強い興味を持ったきっかけの一つだとか……。
堀江 秋篠宮さまの少年~青年時代、御所ではさまざまな生き物が飼育され、タヌキも飼われていたとのこと。当時、宮さまは8歳でした。おとなしいタヌキだったので、お父上(現・上皇さま)が中庭に離して、お子さまがたに観察させようとしたとたん、いきなりタヌキが(秋篠)宮さまに飛びついて、足や手に噛み付いたのでした。当時、宮さまは8歳でした。
ほかにも高校時代のある年の元旦、神奈川県三浦の「京急油壺マリンパーク」を訪れていた宮さまは、イルカと握手しようとしたところ、このイルカからも噛みつかれました。歯が鋭かったそうです。その傷跡は今でも宮さまの右手首にあるとか……。
――江森さんの『秋篠宮さま』、皇室本にはあるまじき流血ネタだらけのような(苦笑)。
堀江 いや、ほんとそのとおりなんですよ。なかなか攻めた本ですよね。この事故も、昔の笑い話(?)になっているから良いものの……。ほかにも宮さまに噛み付いた生き物として、ヘビのアオダイショウの話も紹介されていますね。
ちなみに秋篠宮さまは本書内で、自由奔放な次男坊というイメージをマスコミに作られてしまったが、本当の自分は少年時代からインドア系だったよ、と。兄宮、妹宮とは異なり、宮さまだけが木登りができないのだとか。
――妹宮といえば、サーヤこと紀宮さまですよね(現・黒田清子さん)?
堀江 そう! 少女時代のサーヤ、とってもアクティブでいらしたのですね。
ちなみに秋篠宮さまは少年時代から、学校から帰ってきたら部屋の中で本など読んでおり、「引っ張り出されないと、外でなにかをするということはなかった」とか。実は私はシャイなインドア系なんだ、というアピールをさかんになさっているのが実に意外なんですね。ちなみに外で遊ぶ時も「大体、ひとり」。「もしくは妹と一緒に虫を捕ったりヘビを捕まえたり」……。
――えっ? 今、またヘビって言いました?
堀江 はい(笑)。皇居の中心で、虫はともかく、ヘビを捕まえる兄妹ってなかなかにシュールですよね……。
しかし、秋篠宮さまと虫捕りするのは紀宮さまにとっては「恐怖」で、もし失敗すると、怒った秋篠宮さまに叩かれたらしいのです。まぁ、これは秋篠宮さまご自身が冗談めかして、本書内で語っておられることですが。
紀宮さまにわざとイジワルして、兄宮(現・天皇陛下)と秋篠宮さまが泣かせたこともあったそうです。お二人が「ごめん」と謝ると、幼い紀宮さまは「よろしいのよ」とお答えになる……。それがかわいらしいので、またイジワルしてしまうのでした(笑)。微笑ましいのか、ちょっと残酷なのか。それは置いておくとしても、本当に普通の兄妹みたいな感じで、宮さま方はご成長になったのですね。
――「よろしいのよ」(笑)。お姫様って感じですね! 秋篠宮さまと紀宮さまは4つ違いですが、たしかに幼少時の4歳違いは大きな差かもしれませんね。そして秋篠宮さまのイメージが「チャラの宮」から「ムツゴロウさん」に変わってきました。
堀江 成人後の宮さまがコモドドラゴンを研究なさっている時、襲われたら、蹴りとばして言うことを聞かせろ、と教えられたそうな(笑)。
――蹴ったら、おとなしくなるもんなんですか!?
堀江 その研究施設のコモドドラゴンは、ダメなことをしたら蹴られて、それでわきまえるように躾(しつけ)がされていたそうです。躾ができる動物なんだ……って思ってしまいましたが。
ちなみに大人になった後も宮さまは、「家が大好き」。学生時代から寝るのは夜3時くらいになることが多く、お酒片手に深夜の静かな時間を愛する、典型的な夜ふかし族。ほかにも社交を必要とされる皇族でありながら、見知らぬ人との会話も長い時間するのが苦手。飲み会も嫌い。大学時代からコンパは好きではなかった、と。
――あれ? それとは真逆の生活が週刊誌に報じられていましたよね?
堀江 前にご紹介した週刊誌記事に、目白の住宅街のスナックで見知らぬ人にも「一緒に飲みませんか?」と声をかける宮さまの姿が描かれた文章がありましたが、あれに対する反論かな、と思って読んでいました。
――ここで反論なんですね。たしかに、インドア派のほうがイメージしやすいです。
堀江 ほかにも宮さまは興味はあるが、ご自分では料理やDIYはしないそうです。しかし、「掃除」の家事協力はすると公言なさっています。
――お掃除! すごく意外です。
堀江 掃除といえば……宮家にもゴキブリが出現することがあるらしく、たとえばご自宅にゴキブリが出た時は、宮さまがゴキブリを「つまんで捨てることもある」そうです。人一倍、動物からひどい目に遭わされた宮さまですが、動物への慈愛が失われるようなことはなかったのでした。
さて次回は、宮さまが激怒して反論なさっているタイでの女性関係などについてお話しようと思います。