アメリカの国民的トーク番組『ザ・ヴュー』(ABC)で2007年から共同司会者を務めている女優ウーピー・ゴールドバーグ(66)が、ナチスのユダヤ人大虐殺(ホロコースト)について「人種問題ではない」と発言して大炎上。その後出演した深夜トーク番組でも、「白人(アーリア人)が白人(ユダヤ人)とケンカしているのは人種問題じゃない」と火に油を注ぐ発言をし、放送局から2週間の出演停止処分を受けた。
白人男性優位の米エンタメ業界において、アカデミー賞、エミー賞、グラミー賞、トニー賞の米4大エンタメアワードすべてを獲得したウーピー。『ザ・ヴュー』での歯に衣着せぬ発言は好評で、差別問題に鋭くメスを入れたり、マイノリティの権利を求めたり、プライベートでも熱心にチャリティに取り組み、人格者として支持されてきた。
そんなウーピーが、現地時間1月31日に放送された同番組で、テネシー州の教育委員会がホロコーストに関する小説をカリキュラムから外したことは人種問題だと懸念されていることについて、「ホロコーストは人種的なものではない」と発言。
ほかの出演者から、ナチスが「世界を制覇すべき人種」は「金髪で青い瞳で背が高いアーリア人」で、ユダヤ人は「有害な人種」だという思想を持っていたということを指摘されても、「ナチスもユダヤ人も白人でしょ」と反論。アメリカのユダヤ人団体やホロコースト記念博物館から批判される事態へと発展した。
同日夜、ウーピーはCBSの人気深夜トーク番組『ザ・レイト・ショー』に出演。「たくさんの人を怒らせてしまった。そんな気はまったくなかったのに。人種(問題)について討論していたから、黒人ならではの意見を述べただけよ」「黒人である私にとって、人種とは目に見えるもの。あなたを見ればあなたの人種がわかる、そういうものなの。だから(ホロコーストは)人種問題ではなく、非人道的な問題だと感じるのよ」と、人種=肌の色という持論をもとに釈明した。
その上で、批判されていることについて、「理解できる。そういう意見も尊重する」「うわべだけの謝罪はしたくない。私は自分の発言が誤解されたことに動揺しているの。反ユダヤ主義だとか、ホロコースト自体を否定しているとか言われて……」と落胆した表情を見せた。
司会者が、「植民地主義が人種主義を拡大・定着させたという背景があるから、アメリカでは人種を皮膚の色だと考える人が多い」とフォローすると、ウーピーは、「その通りなのよ!」と声を大にし、「だから私は(ホロコースト)を人種問題だとは思わない、(ホロコースト自体は)極悪だと思っているの。肌の色でユダヤ人が摘発されたわけじゃないのだから」と持論を展開。
「もし、私がユダヤ人の友達と2人でいるところに(白人至上主義で反ユダヤ主義団体)KKKが来たら、私はダッシュで逃げる。黒人はKKKにリンチされるとわかっているから。でもユダヤ人の友達は逃げなくても大丈夫。見た目でユダヤ人だとはわからないから」としつつ、「でも、みんながそう思っているわけじゃないのね。今回の発言で自分を傷つけたし、たくさんの人を傷つけた。私は反ユダヤ主義者ではない。そう言われてズタズタな気持ちになっている」と疲れた顔で語った。
ウーピーは最後までナチスのユダヤ人虐殺について、「人種ではなく民族の問題。白人が白人とケンカしているのは人種問題じゃない」「『子どもたちに(ホロコーストは)人種問題だって教える? 違うでしょ』って意味で発言した」と主張。カメラに向かって「みんな、もうバッシングはしなくていいから。あなたたちの言葉はしっかりと受け止めたから」と言い、この日は謝罪をしなかった。
「人種とは肌の色に基づき人間を分けることにほかならない」と主張し続けるウーピーに、ネットはますます炎上。「歴史的に見ると、人種的な偏見に根ざしているとんでもない発言だ」「人種は肌の色以上のもの。そんな単純なものじゃない」「ユダヤ人ならではの身体的特徴があるし、ある程度見分けはつく。キッパー(ユダヤ人の民族衣装)をかぶっている人だっている」「正統派ユダヤ教徒は、見るからにユダヤ人だとわかるじゃないか」「多民族国家のアメリカで、よくこんな無知な発言したな」「BLMだけが人種差別じゃないんだぞ」などと、大バッシングが噴出した。
ウーピーは翌日『ザ・ヴュー』と自身のSNSでも謝罪したが、すぐに謝らなかったとして炎上は収まらず。事態を重く受け止めたABCは1日、ウーピーを2週間の出演禁止にすると発表した。
米紙「ニューヨーク・ポスト」は、ウーピーがこの処分に激怒し、局に対して番組降板をちらつかせていると報道。キャンセルカルチャーにうんざりしている一部の人たちからは、「無知が招いた発言ではあるが、彼女は間違いを認めたし、今後気をつければいい」とウーピーをかばう意見も上がっており、当分、この騒動は終息しなそうだ。