寒い季節になると、朝、布団から出るのがつらいものです。なんだか心が重く感じることも少なくないのでは? 寝過ぎてしまう、やる気が出ない、疲れが取れないなどの症状が長く続く場合は、「冬季うつ」かもしれません。
「冬季うつ」は季節性のもので、日照時間と関係しているといわれています。今回は、そんな「冬季うつ」とはどのようなものなのか、また、対処法についても薬剤師がご紹介します。
1.寒い季節の「過眠」は、冬季うつが原因かも?
「冬季うつ」とは、季節性うつ病、もしくは季節性感情障害という病気からくる症状で、太陽の光や日照時間と関係しているともいわれています。日照時間が短くなる秋から冬にかけて症状がみられることが多く、10~11月頃に症状が出始め、3月頃に回復するケースがほとんど。毎年、このサイクルを繰り返す傾向にあります。
冬季うつは、特に女性がなりやすく、「過眠」「気力低下」「疲れが取れない」といった症状が特徴です。
1-1.一般的な「うつ」との違い
季節性うつは、「夏」と「冬」が代表的。「夏季うつ」は食欲が低下し、不眠に悩まされることが多い一方、「冬季うつ」は食欲が増進し、過眠傾向になる特徴があります。どちらも「うつ」の一種ですので、気分の落ち込みやイライラ、集中力の低下などが起こることもありますが、普通のうつ病と違うのは、周期的に症状が出ることや、過食や過眠の症状があることです。
この時期はもともと気温が低いため、朝になっても体温が上がらず、起きるのが遅くなったり、睡眠時間が長くなったりしがち。多少の睡眠時間の変動は問題ありませんが、過度に寝過ぎてしまったり、日中の眠気がひどく、日常生活に支障が出るような場合は、冬季うつの可能性があります。
冬は太陽が出ている時間が短くなるため、日光を浴びると分泌される「セロトニン」というホルモンの量が減ります。セロトニンが不足すると、気持ちの落ち込みや、気分の不安定さが生じると考えられているのです。
また、「メラトニン」というホルモンの分泌も日光と深く関わっています。メラトニンは日光を浴びてもすぐには分泌されず、約14~16時間後に分泌され、睡眠のリズムを整える作用があるのです。そのため、日中に浴びる日光の量が少ないと、メラトニンがうまく分泌されず、睡眠のリズムが乱れてしまいがち。
これらのことから、冬季うつは、日光を浴びることが一番の解消法なのです。そこで、日光浴のポイントを以下に3つご紹介します。
2-1.朝はできるだけ日光を浴びる
日中に太陽の光を浴びると、セロトニンの分泌を促進する効果アリ。また、セロトニンは、睡眠リズムに関係しているメラトニンの原料にもなります。これらのホルモンを分泌させるために、朝起きたらすぐにカーテンを開け、できるだけ日光を浴びましょう。そうすることで、体内リズムも整ってきますよ。
2-2.部屋の照明を明るくする
日常生活でも、薄暗い照明などは避けましょう。室内の照明も、間接照明など弱い光のものではなく明るいものを選び、電球を光の強い蛍光灯に変えるのもおすすめです。さらに、波長の短い、青色の光も効果的だといわれています。
2-3.くもりでも日光浴が大切! 室内でもOK
日光を浴びるタイミングは、前述の通り、朝起きたときがおすすめ。たとえくもり空でも、日光を浴びることが大切です。くもっていても、一般的な照明よりはるかに強い光を浴びることができますし、無理に外に出なくても、室内の窓際でひなたぼっこをするだけで効果がありますよ。
冬季うつの改善には、日光浴以外にも、栄養バランスのよい食事や適度な運動が効果的。冬季うつを改善するための生活のポイントを3つご紹介します。
3-1.栄養バランスのよい食事をする
普段から、バランスの良い食事は大切。しかし、冬季うつの場合、過食傾向になることがあるため、炭水化物を過剰摂取してしまう場合も多く、栄養のバランスが崩れがち。冬季うつのときには、栄養バランスをより意識した食生活を心がけましょう。
また、セロトニンの生成に関わる「トリプトファン」というアミノ酸を意識して摂るのもおすすめ。トリプトファンを効率よく摂取できる食材は、肉や魚です。そして、そのトリプトファンを効率的に吸収し、利用するためには、緑黄色野菜やフルーツに含まれるビタミンやミネラルが欠かせません。
これらの食材をうまく摂取できるよう、日頃から食事内容に気を配り、メニューを工夫することが大切です。
3-2.適度な運動をする
ウォーキングやジョギングなどの軽い運動をするのもおすすめ。冬は気力の低下などから、運動不足になりがちですが、爽快感を感じられる程度の軽い運動をすることは、心と体のリフレッシュにもなります。
また、屋外で少しでも日光を浴びることができれば、セロトニン不足の解消にもつながります。さらに、適度な運動は過食による肥満の予防効果も期待できるでしょう。
3-3.漢方薬で内側からケア
冬季うつには、漢方薬を服用するのもおすすめです。ストレスによる気持ちの乱れや気力不足を改善する漢方薬に加え、冷えや胃腸機能の改善などに対しても、二次的に取り入れてみてはいかがでしょうか。
・加味逍遥散(かみしょうようさん)
冬季うつの症状の中でも、「下半身は冷えるけれど上半身はのぼせる」「イライラする」という方には、加味逍遥散がおすすめ。乱れた気のバランスや血(けつ)の巡りを良くして、体にこもった過剰な熱を抑え、精神の興奮を和らげます。
・八味地黄丸(はちみじおうがん)
腰の痛みや下半身の冷え、頻尿がある場合におすすめです。体を温めて腎を補うことで、腎の衰えや冷えを改善することが期待できます。
・補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
元気がなく、過眠傾向の方におすすめ。胃腸の働きを整えて気を補い、体の抵抗力を高めて疲れを改善します。
漢方薬は、症状に合わせて選ぶだけでなく、その人の体質も考慮する必要があります。即効性は低いかもしれませんが、適したものを使用すると、体質改善にもつながるのです。しかし、ご自分の状態や体質にうまく合っていないと、効果を感じられないだけでなく、場合によっては副作用が生じることも。とはいえ、たくさんの漢方薬の中から、ご自分に合ったものを見つけるのは大変ですよね。
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4.日常生活の改善で、冬季うつを予防しよう!
冬季うつには、日照時間が大きく関係しています。そのため、できる限り日光浴をするように心がけましょう。時間に余裕があれば、晴れている日には、30分程度の散歩やウォーキングをするのもおすすめ。適度な運動をすることで爽快感が得られ、ストレスの解消にもなります。
また、冬季うつを発症しやすい時期は、年末年始とも重なり、お付き合いや行事が多くなる忙しい時期でもあるため、体が疲れすぎないように配慮することも大切です。
薬剤師・相田 彩
薬剤師。昭和薬科大学薬学科卒業後、総合リハビリテーション病院、精神科専門病院、調剤薬局に勤務。様々な経験をするなかで、漢方薬が使用される症例の多さと、体質や症状に適した漢方を使用することの重要性を実感する。漢方薬の力をより多くの方に広めるために、漢方のプロがAIを活用して自分に適した漢方薬を選び、お手頃価格で自宅に郵送してくれる「あんしん漢方」で情報発信をしている。