• 日. 12月 22nd, 2024

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『ザ・ノンフィクション』娘の育児が他人事の母親をどう説得する?「山奥ニートの結婚 ~一緒に赤ちゃん育てませんか~」

 

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。2月20日の放送は「山奥ニートの結婚 ~一緒に赤ちゃん育てませんか~」。

あらすじ

 和歌山県田辺市、コンビニも病院もない山奥に、シェアハウス「共生舎」がある。暮らしているのは主に20~30代の人たちで、月に2万円の食費、光熱費を払えば家賃はタダ。気になる買い物の面は、アマゾンに注文すれば翌日には届くので、これといった不便もなく、13ある個室は満室だ。

 過疎集落なので、アユの放流など若い人手を必要とする仕事があったり、交通整理のバイトなどで働きつつ生活している人もいる。

 30代のももこは、もともと法律事務の仕事をしていたが、仕事柄人間関係のトラブルを多く目の当たりにすることで人間不信に陥り、自分はひっそりどこか遠くで暮らしたいという思いから、共生舎に移り込み、貯金を切り崩しつつ生活している。

 しかし、共生舎の住人であるアツシと結婚し妊娠。なお、この限界集落において「赤ちゃんが生まれる」は40年ぶりの出来事だという。

 夫のアツシは子どもが生まれるにあたり、病院からの距離や、学校のことも考えて共生舎からの卒業を考えていたが、ももこは共生舎での子育てを希望しており、「子育てが大変だから面倒を見切れない分は、ほかの住人にも見てもらえるかなって」とも話す。

 共生舎の近くで暮らす80代女性、中岡さんは共生舎の住民たちの面倒を見てくれる、頼れるご近所さんだ。実家の親とは折り合いが悪いももこは中岡さんを信頼しており、生まれた娘の名前も、中岡さんの名前から取り「カヨ」にする。

 一方、ももこは家事、育児に対しどこか他人事な態度を取ってばかりで、赤ちゃんの様子を見に訪ねてきた中岡さんにまで沐浴をしてくれるようお願いする。中岡さんは帰り道、番組スタッフを前に親子を案じて涙する。

 番組の最後、中岡さんはももこたち親子を自宅に呼んだ。ももこに対し、もうちょっと育児に対し積極的になってほしいと説得を試みる。ももこは「私が赤ちゃん産むって決めたから、育てるって決めたから、そこは責任取らなきゃいけないなって思います」と話した。

1週間かけて培われた「説得」の力

 中岡さんの「説得」が印象的な回だった。共生舎のそばで一人暮らしをしている中岡さんは、育児に対し他人事、人任せな言動がみられる母親・ももこのことが気が気でなく、番組の最後で態度を改めるよう諭した。

 「他人の行動を変える」というのは、人間の行う行為の中で最も難しいことの一つといってもいいだろう。これが楽にできれば、世の中の上司も親も教師も苦労しない。正論は言った側が気持ちいいだけで、言われた側の反発を招くだけだろう。説教なんてもってのほかだ。

 中岡さんの説得の何が良かったのか考えてみた。もちろん、説得の言葉自体も、「育児に主体的になってほしい」という耳の痛い話を、繊細なももこに気を使って配慮に配慮を重ねた素晴らしい言葉だった。しかし何より、ももこが娘に「カヨ」と名付けたくらい、中岡さんのことを信頼しているという、言葉以前の、関係性が培われているのが、良い説得につながっていたように思った。

 結局、信頼していない相手がいくら口でうまいことを言っても、それは相手には響かない。中岡さんは、ももこたち親子を1週間自宅に寝泊りさせていた。そういった背景も含めての「説得」なのだ。

 中岡さんの説得は完璧なものに見えたが、一方、説得は受け取る側の力も求められる。

 ももこは、出産前に「子育てが大変だから、面倒を見切れない分はほかの住人にも見てもらえるかなって」といった発言をしていた。自分本位すぎて反発を招くから、「言わないでおこう」と普通は考えそうなのに、ももこは開き直ってとかではなく、まったく悪気なさそうに言っていた。

 中岡さんの説得後、番組の最後には、「私が赤ちゃん産むって決めたから、育てるって決めたから、そこは責任取らなきゃいけないなって思います」と殊勝なことを言っていたが、どうにも「子育てが大変だから、面倒を見切れない分はほかの住人にも見てもらえるかなって」のインパクトを受けたあとに聞くと、本当かな? と思ってしまう。

 「責任を取らなきゃ」は、どんな行動を取るべきか見えてこないフワフワしている言葉だが、「ほかの住民にも面倒を見てほしい」は、取るべき行動が明確で、とても実感がこもった言葉に聞こえる。

 ももこの心に、中岡さんの言葉は果たして届いたのだろうか。

 次回の『ザ・ノンフィクション』は『ボクらの丁稚物語2022 ~涙の迷い道と別れ道~ 前編』。スマホも恋愛も酒も禁止、男女問わず丸刈りという、令和とは思えぬ労働条件のもと5年修行をする「秋山木工」の若者たちを追う。

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